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顎関節症という歯科医療被害 3-14 画像診断について(6)  腫瘍・腫瘍類似疾患について(1)

(50P) 

次は「腫瘍および腫瘍類似疾患について[図15-19]」の説明文である。

「顎関節において
   最も頻度の高い腫瘍類似疾患は、
        滑膜性骨軟骨腫症である。
 以下、手術の適応される症例で、
    石灰化物のある例と無い例を示す。」

 この項では何の前置きも無く「腫瘍類似疾患」とあるのだが、そもそも類似しているという「腫瘍」とは何なのだろうか。終始にわたり脈絡も無く彼らが挙げる病には何の説明も無いのだが、観察日記を示すだけで碌な解説もしない顎関節症専門医はひとつでも病の発生原理を理解しているのだろうかと甚だ疑問である。

 身体本来のつくりには無い異物が何らかの理由により体内に発生した際、吸収も分解も排出も出来ない場合にそれを「腫瘍」という1つの塊にして隔離し、身体に溶け入れない状態で体内に留めておく身体の防御反応というのが腫瘍発生の大まかな理由である。腫瘍は生体を維持する為に防御機構が働いた結果であって気まぐれに起こるような不具合ではなく、明確な目的と意味のある現象なのだ。
 しかし、その「類似疾患」となると一体何を示しているのだろうか。目糞鼻糞をみても彼らならば腫瘍類似疾患と呼びそうなものである。何故、何処から患者の顎関節に腫瘍類似疾患の産物である石灰化物が生じたのか、その原因状況を解き明かす事が出来たときに初めて患者がお金を支払う価値のある専門医ならではの画像診断だといえるのではないか。

[図15]a典型像 滑膜性骨軟骨腫症の
パノラマエックス線像(顎関節部)

下顎頭の前方部分で顎関節包に沿うようにして
石灰化物と思しきぼやけた像が映っている
[図15]b非典型像 滑膜性骨軟骨腫症の
パノラマエックス線像(顎関節部)

このぼやけた像から何も分かることは無いが
実際に何も石灰化物など生じてはいないのだろう。
だが、無から病を捏造して外科ごっこに興じるのが
日本顎関節学会所属の顎関節症専門医達である。

「滑膜性骨軟骨腫症のパノラマエックス線像(顎関節部)[図15]」では、

・石灰化物を認める患者(59歳女性)を
 「典型例」として[図15 ]aに、
・石灰化物を検出できない患者(32歳女性)  
 を「非典型例」として[図15 ]bに、
それぞれのMR像を提示して同じ滑膜性骨軟骨腫症という病であるとして次のように説明文で記している。

「五十嵐ら²によれば、
  パノラマエックス線像では
   滑膜性骨軟骨腫症の
     50%が石灰化物を検出できず、
        滑膜性骨軟骨腫症を
          疑うことは出来ない。」

 五十嵐氏はこのインチキデタラメな歯科医学書の共著者のひとりであるが、「誰それが言っていたよ。」では顎関節症専門医として何の説明にもなっていない。論拠を得る上で五十嵐という人物が信頼たる人間か否かは会った事も無ければ読み手に分かるはずも無く、医学を学ぼうとしてこの歯学書を読む人間にとっては道理の通った説明以外はどうでもよい事である。誰かのデタラメを都合よく妄信して無責任な自分の手で外科処置を施し、患者に被害が及んだ当然の結果を誰かのデタラメに責任転嫁するのは、他力本願で自分勝手なエリート達の常套手段である。
 「50%が石灰化物を検出できず、滑膜性骨軟骨腫症を疑うことは出来ない。」というならば、確定された滑膜性骨軟骨腫症にはパノラマエックス線では検出されなくとも、後でその他の画像診断によって患者の顎関節に石灰化物が検出されたという事が50%の母数として絶対であり、そうでなければ50%という数字は前提があやふやでとんでもなくデタラメな数字である。いつものことだがエリート達は無意味な数字や不要な横文字を並べれば説明を誤魔化せるものだと読み手に対して高を括っている感がどうしても否めない。
 これまで私が解説してきた専門医によるMR画像診断の誤診の数々から察するに、画像診断をしても何が何だか分からないままの状況でイタズラに顎関節を切り開いているとして、自分の目がX線でもないのに肉眼で観察して患者が滑膜性骨軟骨腫症だったと判別できるものではないはずだ。外科処置で切除した「腫瘍類似組織」とするものが何なのか、生化学検査に依頼してからでなければ分からないというのであれば、専門医達は何が何だか分からないものを患者の身体から勘で切り取っていることになる。

[図16]
典型的所見を呈した滑膜性骨軟骨腫症のCT像

[図15]aと同一症例である。

 「典型的所見を呈した滑膜性骨軟骨腫症のCT像[図16]」では、典型例とする[図15 ]aの症例が矢状断・前頭断・軸位断のCT画像で提示してある。いつもどおり画像を見たまま言葉にしただけの稚拙な観察日記が専門医のありがたい説明文として次のようにある。

「(前略)外側部では、
      下顎窩・関節隆起に沿って
            石灰化物が散在しており、
                        また下顎頭の内側部の
                              修正矢状断像下方まで
                                    石灰化物が及んでいる。
  (話の中身が無いので中略)
      内下方への病変の進展が明らかである。
       (中略)下顎頭外側、内側部ともに
   前方への病変の進展が明らかである。」

 この長ったらしい説明文の内容は何かといえば、彼らがCT像を見て顎関節周辺にある石灰化物であろう灰色の影の散在する位置を分かりにくく文字で示しているだけである。そんなものが画像診断の解説と言えるのか、大学病院で記されたであろう幼稚なこの観察日記からは何一つとして学ぶことがない。

 [図16 a ,b, c]それぞれの画像断面では通常では確認できない石灰化物と思しき灰色の影が顎関節包の周囲に散在している。その点では彼らの観察記録に相違ない。しかし、[図16]で本当に注目すべき点は、とりとめなく散在している様に見える中でも「影の無い場所」が明瞭に存在している事である。

[図16]C 軸位断CT像
石灰化物の像を白い矢印で指し示してはいるが、
どうして患者の顎関節に石灰化物が生じたのか
ここでもまた肝心な病理について何も解説が無い。

 [図16 c]は軸位断のCT像で身体を真下から観察した様な断面である。その像では顎関節周囲にある灰色の影が、ある直線的な範囲で見えなくなっている。灰色の影にも留まることの出来ない場所があるということだ。そして、解剖学的構造と顎運動を考えればその場所が一体何なのか、灰色の影が何に由来するものなのか、何故その範囲には留まれないのかが分かる。 [図16 c]では下顎頭の位置と関節突起を引き寄せる外側板の位置をはっきりと確認することができる。関節突起を引き寄せる外側翼突筋と円板軟骨を引き寄せる外側翼突筋は付着位置が別であるが、ここでは2つの外側翼突筋の作用方向が概ね一致していると考えても差し支えないだろう。下顎頭と外側板の2か所を結べば開口動作で重要な円板軟骨を引き寄せる外側翼突筋が図の中でどの辺りにあるのかもおおよそは把握できる。 この歯学書には著者が複数いるのでこの項と同じ著者が記したものかは分からないが、第Ⅰ章「局所解剖の要点」では次のように記されていた。

「(前略)顎関節内側の
        関節包は薄く柔軟である。
 関節の前方部では
  外側翼突筋の上頭の腱組織の一部が
   関節円板に移行することから
               明瞭な関節包構造とはならないが…」

 自分自身で理解しているのかはさておき、担当著者も記しているように顎関節内にある関節円板を関節の外側から外側翼突筋(上頭)によって引っ張る都合で関節円板が前方に可動する必要性があることから、顎関節包は1つの袋として前方部分が完全に密閉されている造りではないのだ。
 私が考えるに機械仕掛けの都合から顎関節包前壁の構造は次のような理由で形作られている。

顎関節包の側方部分と同じように
前方までもしっかり固めて塞いでしまっては
関節円板が前へ動く妨げとなってしまうのですだれの様に軟弱な繊維を重ねて
隙間の大きい膜状構造にしてあり
顎関節包の前壁はあえて
緩く塞がれる構造になっている。

 顎関節包の前方が完全に開けっ広げな構造ではいけない理由は何かと言えば、関節面の摩擦抵抗を低減する滑液や栄養供給の関節液を関節包内に滞留させて関節機能を維持するためである。
 しかし、関節円板が前方転位している状態であれば、その軟弱な前壁は後ろに戻ることの出来ない関節円板に圧迫され続けてしまい、関節包前方を塞ぐ本来の役割を維持出来ずに関節液が顎関節包外へ染み出すという状況も場合によっては考えられるだろう。
 顎関節包の前方で関節を閉鎖する力が不足していると仮定する。もし、そのような状態であれば、開口動作に伴い外側翼突筋(上頭)が収縮して関節円板が前方に引き寄せられる度、顎関節包内では内から外へと関節液の流れが生じていることになる。
 そして、閉鎖が弱まった顎関節包の前方からは関節包内の関節液や老廃物が関節包の周囲に浸み出していくことも考えられるし、その中には損傷で削れた関節面の骨の残骸や傷口を修復するために添加された骨の成分も少なからず溶け込んでいる事だろう。それらが骨として定着できなければ体内を漂ううちに石灰化物として結晶化し、体内に残留・蓄積していく事になる。 
 また前壁から関節液が滲み出さないとしても、円板軟骨の通り道となる範囲では開口動作の度に外側翼突筋が収縮することで関節液の流れが生じるので、同じ額関節包内でも骨の成分が滞留しないという事も考えられる。

[図15]aの構図を私が解説したもの
側頭骨関節面の形状は不明瞭ではあるが、
下顎頭前方部分が平坦に潰れている様子から
左側顎関節で下顎窩と下顎頭の間から
円板軟骨が抜けた状態で暮らし続けて
顎関節骨格が削れて変形しているのは間違いない。
石灰化物は削れた顎関節面の骨が顎関節包内で
滞留して結晶化したものと考えるのが妥当である。

 [図16]は典型像として提示された[図15 ]aと同一患者のものであるが、パノラマエックス線像と[図16 ]Cの軸位断CT像から、左側顎関節円板が転位していることは明らかである。CT像では左側下顎頭後面と下顎窩後壁の空隙が反対側よりも明らかに広く、両側下顎頭の傾きから下顎が右へ偏位している状況がうかがえる。また、下顎が右に偏位しているという事は、その反対側である左側の下顎頭が常態的に前方へ位置することになる。そして、その左側では顎関節円板が転位しており、関節の動作で摩擦が大きい状態である事が推察できる。要は左側下顎頭を損傷して骨格が変形している状況なのである。
 症例の患者は59歳女性であり、顎関節の骨格も通常に増して損傷が繰り返されて長きにわたって修復作用も働いていたはずである。修復の為に骨の成分が供給されても、顎関節骨格の関節面はその間も顎運動により損傷を受け続け、骨格に定着できなかった骨の成分が顎関節内を漂うことになる。

[図15]Cの構図に私が解説を加えたもの
円板軟骨が下顎窩と下顎頭の間から抜けた後でも
大開口動作や咀嚼動作の度に顎関節内で
円板軟骨は内側前方へ動いている。
円板軟骨の通り道では関節液がかき混ぜられて
大きく流れが生じるので結晶化が進みにくく、
顎関節包の中央前方部分では石灰化物が生じない。
顎関節包の側方部分では円板軟骨が通らないので
関節液の流れが小さくて滞りやすく、
関節液中に溶けた骨の成分は毛細管現象によって
靭帯に滲み込んで局所的に濃度が高まり、
顎関節包靭帯に沿う形で側方部分で結晶化し、
石灰化物としてこのCT像のように映る。

 そして、開口動作の度に関節円板が外側翼突筋(上頭)に引っ張られて、顎関節包内に関節液の流れが生じ、関節内に漂っていた骨の成分が顎関節包前方から外部へと浸み出してしまう。顎関節包の外側では関節液の流れる力の影響が弱まり、骨の成分が結晶化し「石灰化物」となるのだろう。だから、[図16 c]のMR像では外側翼突筋(上頭)が付着する翼状突起外側板から下顎頭にかけては、開口動作に伴って関節液の流れが生じるので石灰化物が無いのである。

[私図]中学理科で学ぶ結晶を作る実験
食塩やミョウバンを溶かした水溶液から
大きな結晶を作るには中に紐を垂らし、
かき混ぜるのを止めて流れを小さくし、
温度が低くなるのを待つ。
すると流れが小さく毛細管現象で水溶液の濃度が
局所的に高まる紐の周りから溶媒の結晶化が進む。
紐は繊維の寄り集まったものであるが
関節包も靭帯の寄り集まったものであり、
靭帯もまた紐と同じように膠原繊維が
寄り集まったものである。
関節液中に削れた骨が解けて濃度が高まるほど
関節包靱帯に染み込んだ骨の成分が結晶化し、
顎関節内に石灰化物が生じるのである。
ごく単純なこの物理現象の何処に
「腫瘍類似性疾患」などともったいぶって
不思議がるような要素があるだろうか。

 流れを失えば溶液は沈殿して飽和濃度を超えれば液中に結晶が生じるという現象は中学理科の義務教育で皆一緒にお勉強する常識的な物理現象である。[図16]の説明は次の言葉で締めくくられている。

「画像の3断面を確認することは、
    病変の範囲と形状を
       把握するために必須である。」

 病状に不安を抱える患者を前にして医師にとって診断とは何だろうか。状況の意味を考え、病変が生じた原因を把握もせずに顎関節症専門医は何を診断だというのか。 患者が自分の状況を知ることが出来れば和らぐ不安もあるだろうし、自身の身体と付き合う方法を考える事が出来る。医師が知ったかぶりをしてデタラメにあしらいたらい回しにされるから、もうどうにもならないのかと患者は余計な不安に陥ってしまうのだ。





















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