顎関節症という歯科医療被害 3-16 画像診断について(8) 腫瘍・腫瘍類似疾患について(3)
(51P)
「非典型的所見を呈した滑膜性骨軟骨腫症のMR像[図17]」の説明文の続きである。
「修正前頭断プロトン密度強調像では、
関節隆起付近で内外側的拡張が
明らかである。
下顎頭部では下顎頭(C)に対する
内外側的関係が分かる。」
前頭断とは身体を正面から観察した断面であり、彼らの行う修正とは観察する下顎頭の軸に合わせて撮影画像を傾ける事である。「プロトン」とはMRIで撮影情報を得る為に基準とした物質のことであり、一般的に医療で利用されるのは「水素原子(H)」である。水分が多い身体の性質を利用して水分子(H₂O)の基となる水素原子に焦点を当てる事によりって像に変換する為の信号を得ているのだ。「密度強調」とはプロトンである水素原子から返ってくる反応を強調して、像のコントラストを強くする事である。密度強調によって水分量が多い(水素原子が多い)箇所ではより高信号に反映される訳だ。
難しそうに見えるが「修正前頭断プロトン密度強調像」とはそういう意味であり、単純に自分の都合で観察断面を傾けて像の明暗を強くしたというだけのことなのだ。この不親切な医学書では何の説明も無いのだが、放射線技師でなくても概要を説明する程度なら、少し調べれば直ぐに分かることである。主語、述語、目的語が無く曖昧な先ほどの説明文を( )内に私がツッコミを入れて示すと次のようになる。
「修正前頭断プロトン(何の断りもない以上プロトンは水素原子で普通のMR撮影と同じですよね?)密度強調像では、(仮に顎関節周辺に石灰化物があるとして、水素原子の信号を強調する理由は何?石灰化物など無くても顎関節腔に関節液が溜まっているだけでも同じように映るのでは?)関節隆起付近で内外側的拡張が明らかである(比較対象がないのに何がどうして拡張していると判断出来るのか?)。下顎頭部では下顎頭に対する内外側的関係が分かる。(下顎頭と何の内外側的関係が分かるの?)」
画像内の矢印と説明文から判断して「内外側的拡張が明らか」なのは顎関節腔なのかあるいは石灰化物とするものどちらかであろう。しかし、断面形態から顎関節腔が関節液で広がっているように見えるからといって、滑膜性骨軟骨腫症の絶対条件である石灰化物が確認された訳ではないし、明確に石灰化物であると示しているわけでもない。肝心な主語が省かれていては説明文として全く意味不明である。
「下顎頭に対する内外側的関係」が何を意味しているのか、私には全く分からない。顎関節腔は顎関節内に生じる隙間であり、「顎関節腔」という解剖組織がある訳では決してない。
上関節腔も下関節腔も顎関節骨格の間に生じる顎関節腔は動作や姿勢、関節骨格の状況次第でいかようにも変化する。明確な形ある物として存在しないものに位置関係もへったくれも無いはずである。国語力の不足したエリートな彼らが示したいのは「下顎頭部を通る断面像では、顎関節包が横方向に膨らんでいるよ。」という事なのだろうか?そうだとしても、顎関節包が膨らんでいるからといって、石灰化物の存在を示している事にはならない。
また、プロトン密度強調によって明暗が強調されすぎたことで本来は比較的明るく映るはずの顎関節包靭帯でさえかなり暗く映っているし、仮に矢印の範囲が石灰化物を示しているのだとしても石灰化物は骨と同じように水分量が少ないので強調像では靭帯よりも真っ暗に映るはずである。
私が[図17]cとdの構図を詳しく解説したものをそれぞれ上に示しておくが、先の矢状断MR像a、bに加えて前頭断MR像cとdの構図を解析しても石灰化物と思しき像は何処にも確認できない。この著者がMR像c内に白黒矢印で指し示している箇所は石灰化物などではなくただの関節腔とそれを満たす関節液である。
また、無駄に明暗を強調しているせいで無信号な空気との境にある頬の部分では耳下腺や頬脂肪体の箇所が白ボケしてしまい、身体の内側では体内の構造に関係なく像が暗く映っている。そのため同じ顎関節腔内の関節液でも外側が妙に明るくなり、反対に内側では薄暗く映り込んでいる。わざわざプロトン密度強調などしない方がよほどMR像は明瞭だったことだろう。
ちなみに内側で関節包靱帯(水色部分)が弛んでいるのは下顎を横へ動かす側方運動時に下顎頭が内側を通るので靭帯に遊びが必要なためである。そのため下顎をずらさない通常の閉口状態では靭帯が引っ張られず弛んでいる状態なので内側の関節腔が広がって見えるわけだ。なんの変哲もない通常の解剖構造を前にしてこの著者はそれが異常であると騒ぎ立てて上関節腔が拡張しているなどと説明文に記している訳だが、それは患者を滑膜性骨軟骨腫症に仕立て上げる為の妄想であり、大嘘もいいところなのだ。
[図17]に提示された4枚のMR像の構図を詳しく解析しても石灰化物など何処にも見当たらず、顎関節症専門医は日本語が不自由すぎるのか、あるいはあえて曖昧な言葉で濁しているのか、滑膜性骨軟骨腫症の必要条件である石灰化物の位置すら明確に記してもいないのである。そして、51Pを締めくくる最後の説明文が次のようにある。
「このように、MRIではほとんどの
滑膜性骨軟骨腫症が検出できる。」
先ほどと同じく()内に私の突っ込みを入れると・・・
「このように(どのように?)、MRIではほとんどの滑膜性骨軟骨腫症(MR像では石灰化物が見当たりませんが、典型例と非典型例の違いで示していた石灰化物の検出は滑膜性骨軟骨腫症の必要条件ではないのですか?)が検出できる(「滑膜性骨軟骨腫症」でもれなく検出されるはずの石灰化物は[図17]MR像の何処?)。」
ここでは知ったかぶりのエリートなりにあえて主語、述語、目的語を明確に示さないことで状況を曖昧にして含みを持たせているのかもしれないが、毎度のことながら彼らの説明には道理が無い。専門医という肩書に誤魔化されなければ何の説明にもなっていないと素人でも気付きそうなほどに不可解でぎこちない日本語である。道理の無い主張やカタカナ言葉にまみれた信用ならないろくでなしを正直で義理堅い日本人は欧米かぶれの屁理屈野郎と罵るのである。
医師になれるほど優秀でもなかったくせに選民思想でうぬぼれた中途半端な学歴エリートの口腔外科医師達は専門用語を並べて知ったかぶりするうち、自身の顔貌と現実を混同してMR像やCT像の中に無理やり心霊写真を見つけ出して「お化け」を信じ込むようになり、胡散臭がる他人を専門医や学会という肩書で煙に巻くことでしょうもない自身のプライドを守ろうとしているだけなのだ。
「お化け」を信じるのは信仰の自由かも知れない。だが、医療学術の場で不正を働いて患者にそれを信じ込ませ私腹の肥やしに利用しているならばその存在は社会悪でしかない。心霊現象専門家を名乗る人間が、怪奇現象や心霊写真をでっち上げてそれをネタに胡散臭い商売をするように、日本顎関節学会は「顎関節症」という不可思議で理不尽なお化けの話をでっち上げることによって患者の恐怖心を煽り、外科ごっこの相手を招き入れて砂上の楼閣に暮らしているのである。
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