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顎関節症という歯科医療被害 3-8 変形性顎関節症MR像の誤診について

(47P)
 先の解説でこの著者が復位性・非復位性顎関節円板転位であるとする症例のMR像[図7,8,9]では円板軟骨など何処にも映っていなかったのだが、変形性顎関節症として提示されている次の症例のMR像[図10]では円板軟骨が映っている。ただし、いつものことながらこの著者は暗く映る関節腔内の関節液を矢印で指し示し、それを円板軟骨であると間違えて誤診している。

[図10]変形性顎関節症
aが下顎頭内側部、
bが下顎頭中央部、
cが下顎頭外側部を通る
いずれも顎を閉じた状態の
修正矢状断MR像である。

 [図10]の症例は18歳女性であるが、年齢から考えておそらくこの患者は過去に左側顎関節で円板軟骨が抜けたまま歯列矯正を受けていたのだろう。
 下顎窩と下顎頭の間から円板軟骨が抜けて顎関節動作の軸がずれても何らかの理由で歯が動けず沈み込めない場合、開口動作の度に下顎頭が側頭骨関節面に叩きつけられてしまい、損傷が酷くなると下顎頭の前方部分が潰れて変形することになる。 [図10]bのMR像では下顎頭前方部分が窪んで変形しているのはその為であるが、実は下顎頭のくぼみに合わせて白く映る像こそがかつて前方転位したであろう円板軟骨である。

[私図]歯科治療で下顎頭前方部分が変形する原理
歯科治療で上顎歯列を連結固定すると
円板軟骨が抜けて関節動作の軸がずれても
歯が動けないので顎関節が浮いた状態となり、
開口動作を繰り返す度に下顎頭の前方部分が
側頭骨関節面に打ち付けられることになる。
歯が動けない歯科原因を取り除かない限り顎関節が浮いたままになるので下顎頭の変形は治まらない。ちなみに歯が動けない原因となるのは
ブリッジやインプラント、歯列矯正装置などで
歯を連結固定した場合である。

 前方転位していない正常な本来の骨格であれば円板軟骨は下顎窩と下顎頭の間に挟まる形で顎関節動作に介在し、顎関節骨格は靭帯によって押さえつけられているので上下に隙間が生じることはない。筋肉のように収縮はしなくても靭帯それ自体の張力が働くので、一度でも前方転位で円板軟骨が抜けると下顎窩と下顎頭の隙間が直ぐに詰まってしまい、円板軟骨は後方の下顎窩と下顎頭の間へ簡単には戻れなくなってしまう。 
 だが、歯科原因で歯と顎の機械仕掛けに不具合が生じて顎関節骨格を損傷することで関節面が押し潰れたり擦り減って変形すると、顎関節骨格は元々の状態よりも全体が上下に短くなってしまう。反対に骨格が短く変形しても顎関節を上下から押さえつけて支える諸々の靭帯の長さは変化しない。そのため咀嚼筋が働かない状態では自重によって下顎全体が下がり、下顎頭は下顎窩から離れることになる。すると靭帯の張力が弱まったまま顎関節が上下に開くことになり、円板軟骨が下顎頭と下顎窩の間に戻れるだけの空間的余裕が生じる。 仰向けで眠るような姿勢では外側翼突筋が働かないまま下顎が開いた状態になり、円板軟骨も自重で垂れ下がることで後方へ動くことになる。そして、前方転位していた円板軟骨が下顎頭と下顎窩の間に戻るという現象が起こるのである。

[私図]下顎頭の変形で円板軟骨が後方へ戻る原理
通常であれば前方転位で円板軟骨が抜けると
顎関節を支える靭帯の張力で隙間が詰まるので
円板軟骨は後方へ戻れなくなるが、
歯科原因による機械仕掛けの不具合によって
下顎頭が削れて短く変形すると靭帯の張力が低下し
下顎の自重によって顎関節の間が開くことになり、
転位した円板軟骨が後方へ戻る場合がある。

 ただ、円板軟骨が後方に戻ったとしても変形した骨格の形状は元に戻らないのでギザギザに変形した下顎頭が関節動作の度に円板軟骨を傷つけることになる。下顎頭と下顎窩の間に戻った円板軟骨が永続的に機能するとは考えにくいし、変形した骨格との隙間が大きければ噛む力を上手く伝えることも緩衝することも出来ないだろう。実際に不調を感じているからこそこの患者は顎関節症の専門外来を受診しているのである。
 本来であれば顎関節症専門医に限らず歯科医療従事者は顎関節の機械仕掛けを当たり前のこととして理解して歯科医療に臨み、患者の骨格が変形する前に異常原因を取り除かねばならない。

[図10b]を私が拡大したもの
(ab)を前方肥厚部、(iz)を中央狭窄部、
(pb)を後方肥厚部として矢印で指し示し、
関節隆起下の暗い像を円板軟骨であるとしている。
だが、実際には暗い像は円板軟骨などではなく
関節腔内の関節液であり、この著者の誤診である。

 MR像[図10]bの構図を私が解析すると下のようになる。下顎頭の前方部分が陥没して開いた隙間に円板軟骨が被さっている状況である。ただし、円板軟骨は完全に下顎頭の真上に戻りきっているわけではなく下顎頭の前方にずれているので、円板軟骨は正面方向ではなく内側を向いた状態であると考えられる。

[図10]bの構図を私が解説したもの
骨よりも水分量が多く靭帯よりも密な組織なので
MRでは軟骨組織は白っぽく明るい像として映る。
下顎頭の前上方にみえる明るい像こそが
円板軟骨の断面である。

 次は同一症例のMR像[図10]cについてであるが、外側部の観察断面であるこのMR像では下顎頭後方部分が丸く陥没するように変形していることから、この患者は顎関節脱臼を生じていたことが伺える。円板軟骨が前方転位していなければ円板軟骨が脱臼防止の歯止めとして機能する。そのため脱臼の痕跡があることからも、この患者の顎関節では以前に円板軟骨が前方転位していた可能性がとても高いのだ。

[図10]cを私が拡大したもの
下顎頭後方部分が陥没するように変形しており、
顎関節脱臼に際して下顎頭後方部分が
関節隆起に押し付けられたことが推察される。
下顎窩と下顎頭の間に円板軟骨が収まっていれば
脱臼防止の機構として機能するので
脱臼を生じた痕跡があるということは
以前に円板軟骨が抜けていたということである。

 MR像[図10]cの構図を私が解析すると下のようになる。円板軟骨が白く明るく映っている様子が分かる。また、このMR像は先ほどよりも外側にずれて傾けられた修正矢状断なので顎関節後方をみると耳道を囲む耳介軟骨の断面が確認できる。耳介軟骨も円板軟骨と同じように白っぽく明るく映るのである。水分量の多い軟骨がMRでは高信号で白く明るく映るというのは画像診断の常識であるが、どういうわけだかこの著者に限らず顎関節症専門医達は画像診断の常識を無視して円板軟骨を黒く映るものだと信じて止まないのである。

[図10]cの構図を私が解説したもの
耳道を囲む耳介軟骨の断面が白く映っており、
MRでは軟骨が白く明るい像として映ることが
このMR像をみればよく分かるのだが、
顎関節症専門医であるこの著者は
関節液で満たされただけの関節腔である黒い像を
矢印で指し示して円板軟骨であると主張している。
本当の円板軟骨は私が点線で示した
下顎頭前方の白く明るい像である。

 ここまで変形性顎関節症として提示されたMR像[図10]b、cについて解説してきたが、顎関節症専門医はインチキデタラメにMR画像診断を行っており、画像診断は何も治療に活かされていない悲惨な状況である。この症例は18歳女性患者であり、年齢からも歯列矯正をきっかけとして顎関節骨格を損傷したというのが考えられる状況として妥当である。外科矯正でもなければ歯列矯正の治療期間はせいぜい2〜3年程度であろう。専門医の画像診断は誤診だらけで当てにならないことは知れているのだが、若くてもその僅かな期間のうちに著しく顎関節骨格が変形してしまっている恐ろしい現実が[図10]のMR像から分かるのだ。この先に受けることとなる患者の苦痛はとても計り知れない。[図10]の説明文には次のように記されている。

「(前略)今後も顎関節部では
  骨変化が継続するため、この時期に
    手術や咬合治療の適応はされない。」

 上の説明文からも分かるように、患者が早期に歯と顎に異変を感じて専門外来を訪れ精密検査のつもりで顎関節症専門医によるMR画像診断を受けたとしても、馬鹿の目にも明らかなほど著しく骨格の変形が進むまで患者は放置され、治療の機会を奪われてしまうのである。顎関節に不調をきたすのは歯科補綴治療や円板軟骨の転位が原因であり、異常原因を早期に取り除けば骨格の変形を未然に防ぐことは十分に可能である。
 だが、顎関節ばかりを覗く顎関節症専門医には歯科補綴治療の能が全くと言っていいほど無い。歯と顎の機械仕掛けを理解していれば、画像診断でも明らかなほど酷く変形した骨をそれ以上に放置していても変形が治まることなどあり得ないと分かるはずだが、専門医は無意味な保存療法で鎮痛剤を処方して骨が変形していく重要な痛みというサインを誤魔化し続けるのだ。そして、変形が進んだ後では外科ごっこの遊び相手とされ無意味な外科処置で傷つけられ、顎関節症専門医に身体を弄ばれることになる。







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