[ショートショート]朝は逆転する
朝日が差し込む部屋に、あの人の死体が転がっていた。
まさかこんな事になるとは。
コップ1杯の水の冷たさと、地面に転がる包丁の鮮やかな赤色が私に現実であることを伝える。
私がやったのだろうか。昨日のことはあまり覚えていない。
私はあの人に叱責され、怒鳴られたような気がする。いや、私が泣き叫んだのか、怒鳴ったのか。部屋の真ん中の机の上には、山盛りになった灰皿と2つのタンブラーが置かれている。
あの人のインスタグラムには、美しくも憎らしい妻と笑顔で娘と手を繋ぐあの人の姿がアップされていた。
昨日のことがさっきのことのように思える。
今日暇だろ?という電話が昨日の朝に突然かかって来たが、私は断ることなどできず、はい、と答えていた。
日曜だというのにあの人に呼び出された私は、1日中引きずりまわされた。
昨夜、場所をこの部屋に移した私たちは酒を飲んでいたはずだ。
だめだ。飲みすぎて頭が痛い。
まさかこんな事になるとは。
朝日は人を憂鬱にさせる。
(410字)
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最初から読み始めても、最後から読み始めてもストーリーになっている作品を書いてみました。
今週もたらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。いつもありがとうございます。
今週のお題は「朝」と「逆転」でした。
「朝」をテーマに「逆転」しても読める小説です。
なるほど、と思ってもらえたら幸いです。
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