(毎週ショートショートnote参加作品)フシギドライバー
タクシーの運転手には七不思議がある。
カーナビを使わない。
常にラジオを聞いている。
車が止まった時に何か書いている。
目的地に着いた瞬間、メーターが上がる。
演歌好き。
そして、お喋りが多いのも七不思議の一つだ。
運転手は私が乗ってからずっと話していた。
「とまあ、目が覚めたら病院でね。あの時には自分が死んだと思いましたよ」
(やばい、消え時を逃した...)
七不思議の最後の一つ。それは、タクシーならではの怪談が多いということだ。
その怪談を形にしようとしていた私は運転手の話が気になりすぎて、消える予定だった墓地をいつの間にか通り過ぎてしまっていた。
そっとため息をつき、私は諦めることにした。
引き際を大事にするのは幽霊界の七不思議である。
信号で止まった時、私は言った。
「すいません。降ります」
しかし、声を掛けたが返答がない。
運転席を覗き込むとそこには誰もおらず、運転席はびっしょりと濡れていた。
先を越されたことに、私は恨めしく思った。
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(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
企画の説明内に、ナナフシギドライバーへのお誘いがあったので、同乗させていただきました。
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