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【短編小説】ツインレイ

「もう、あの人と再会することはないのかしら。」

過去の出来事を思い浮かべながらため息をつく日々。

あの頃のわたしたちはあまりにも若すぎたよね。
未熟そのものだったよね。

あの人とすごした瞬間は、あまりにも充実しすぎていた。あまりにも適合しすぎる相性だった。

彼の存在は、わたしの心の中にぽっかりと空いた大きな穴をぴったりと埋め込んでくれた。趣味や考え方は違ったけど、彼の存在は、わたしにとってあまりにもどんぴしゃすぎた。大好きだった。

もともと男性の放つニオイを生理的に受け付けることができなかったんだけど、彼のニオイだけはわたしを夢中にさせてくれた。彼の脱ぎ捨てたシャツに顔をうずめたこともあったっけ。彼のニオイはどこかしら懐かしい感じを覚えた。

わたし、なんであんなこと言ったんだろう。今でも後悔を繰り返している。

「ごめんなさい。あなたと一緒になることはできないの。あなたのことは大好きだけど、あなたと人生を共にする気持ちにはとてもなれない。ごめんなさい。わたしじゃない誰かほかの女神を探してね。」

〈女神〉という単語ワードを用いてわたしを愛してくれた彼。とっても大事にしてくれてありがとう。

でも、安定した結婚生活を望んでいたわたしにとって、夢追い人である彼との生活は、確実に破綻すると思うから。彼のことが大好きだからこそわたしの方から切り出した別れ。彼の人生を支える伴侶は、わたしじゃないような気がした。彼の幸せを心から願っていた。

その後に出会ったダンナさんはとってもいい人。わたしにはもったいないくらい。色々な事情で離婚しちゃったんだけど、とっても幸せだった。でも、ダンナさんのニオイは、わたしの心の空白を埋めることができなかった。

あぁ、彼のニオイが欲しい!
もし、この世に神様がいるのならもう一度だけ彼に会わせてください!
もう一度だけわたしのカラダをギュッと抱きしめて欲しいのです!

そんな気持ちにもだえていた頃、わたしはある本に出会うことができたのです。

それはあまりにも偶然でした。テレビで見たドラマの原作が読みたくて本屋さんに出向いたのですが、ふと声をかけられたような気がして振り返ったのです。

そこに一冊の本が。とあるスピリチュアル系の本だったのですが、その本から一筋の光がさしこんできたのです。

気がついた時には、家でその本を読んでいました。その本によると、どうやらこの世にはツインレイと呼ばれる存在がいるそうなのです。なんでも、もともと一つだった魂が、二つに分化し、別々の身体に宿った状態を指すのだそうです。

スピリチュアル系の本を読んだのは、それがはじめてだったんで、詳しいことはわかりませんが、たぶん、彼のことだと思います。彼こそがツインレイ、そう信じています。

すべては宇宙が決めた運命。一度出会ったツインレイとは、どんな困難な状況でも必ず再会するとのこと。だったら彼とも再会できるよね。きっと。

その時が来るまで、わたしは誰とも恋愛はしません。だって運命のイタズラで魂が分化した二人だもの。必ず彼とは一緒になる日が来るはず。嫌な出来事はたくさんあるんだけど、大丈夫、きっと耐えぬいてみせます。

だって、あの人に抱きしめてもらえるから。

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