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丹那盆地に行きたいと思って熱海駅で降りたの。だけど夕方にしかバスが来なくて仕方がないから歩いて行ったら伊豆はおろか日本の観光の将来までも悲観してしまい困惑した件

 

 丹那盆地に行きたいと思って熱海駅前に着いても、バスがあるのは夕方の2本のみ。駿豆線大場駅行きで、逆に大場駅からでは朝の通勤通学時間帯の2本だけなのでどうにも利用しがたい。自分は車の運転は出来ないし、タクシーを頼むのも高価である。輪行できる自転車も持ってないし、峠に向けて延々と自転車をこぎ続けるのも困難だから、結局歩いて行くしかない。

来宮駅のホームから


 熱海駅に10時頃着くとたまたま伊東線の電車が出るので来宮駅まで乗った。駅前には県道11号熱海函南線が通るのでこれを真っ直ぐ(!)行けば丹那に出られる。しかしこの道ときたら13%こう配が延々と続く対面交通路で相の原入口を過ぎると狭い歩道も無くなるのですこぶる難儀であった。登りつめると笹尻の交差点に出る。左に入ると熱函道路新道で最近まで有料道路であった。直進しても熱函道路旧道であるから丹那に出られる。しかしこの道は熱海峠付近を経るためにまだまだ登りこう配が続く。そうして伊豆スカイラインの橋を潜る地点になると下り坂である。峠越えの道を降りるのは楽かといえばそうでもない。
 そして旧道の方は見晴しが期待できないばかりか迂遠。

興味深いのはこれくらい…動物避けの感電線が前に
軽井沢の町並


 伊豆軽井沢の集落を経て丹那乳業の工場前に着いた。経営主体はJAで工場に隣接して酪農王国オラッチェというテーマパークがある。しかし子供連れでないと入りにくい。盆地の平たい部分を歩いて丹那断層公園に着いたが園域は狭く訪れる人がそれなりにいるため落ちつける場所ではない。見切りを付けて新しい熱函道路新道に向かった。程良い見晴しが得られるが熱海へ出るためには1㎞を越える長さの鷹の巣山トンネルを抜けなければならない。トンネルを抜けると右手に団地が見えるが抜けられない。仕方がないので続いて短い相の原トンネルを抜けて笹尻交差点に出る。そして延々と続く急こう配の下り坂を経て来宮駅に戻った。

熱函道路から見た丹那盆地

 地図を見ると相の原団地を経て山道があり丹那へ抜けられるのではと察知した。これは相の原入口で県道11号線から分かれる道で同様に急こう配である。果たして団地の奥にある登山道の入り口を見つけた。相の原トンネル入口に出られそうな扉のある隣りで、扉の方は鍵が掛って通れない。もし通れるのならば笹尻交差点経由より短絡ルートが出来る。

相の原団地…なぜか軍艦島を連想してしまった
にゃ~ん(悲嘆)
横たわる大蛇のような松の木の下は石畳
石段あり

 この登山道は東京電力の送電線の管理通路でもあるようだが滅多に人が歩かないらしく廃道より若干まし、という感じであった。それでも小石で舗装してあったので荒廃させるのは勿体ない。ちゃんと整備されていれば和田山からの玄岳登山ルートより楽かもしれない。ところが高圧鉄塔直前にして全くの藪となり掻き分けて進むことになった。不思議な事に藪はきれいに揃っている。そして10mほどと短い。そうして伊豆スカイラインに出た。

出口

 ところが丹那に出る道は見つからないし、またあったとしても鷹の巣山トンネルより離れた位置に出るようだから結局伊豆スカイラインを歩く羽目となる。
 しかし伊豆スカイラインは歩行者の通行を禁止している筈。だが相の原団地からの石畳道を経て伊豆スカイラインに出るとそれを明示する看板は一切なかった。
 車の通行は少ない。予測していたというか、していなかったというか。予測していたというのは、自家用車の需要が低下しているだけでなく観光需要も落ち込んでいるから観光目的で整備された道路を走る車は少ないだろうと仮定したため。していなかったというのは、連休中だからそれなりに観光客はいるだろうと思っていたため。車の通行が少ないならまあ道路の側を歩いても問題にはならないだろうと考えた。もし巡視が来て見とがめられたとしても言い訳は容易。虎穴に入らずんば虎児を得ず。
 果たして玄岳インター北側にある登山者用?のアンダーパスまで路側を歩いてみたものの、たしかに見晴しは良い。前に登った徳倉山から大平山にかけての静浦山地の全容がわかりそしてその奥に広がる駿河湾や富士山も拝める。ただ個人的には丹那盆地を見下ろすならば新熱函の橋から見た方がいいかも。流石に歩く人にとっては普通の登山道を歩くよりははるかに楽だが、しかし単調だ。また乗用車よりもモーターバイクの走行が多く概して飛ばし気味であるようだ。

丹那盆地と静浦山地と内浦……見えた見えたよ~熊笹越しに♪

 この道路は曲折と起伏が多く市街地を通るために速達性を期待できない沿岸ルートを避けて生活物資を運ぶ施設にもなるが、意外と4t車を含む大型トラックを見なかった。首都圏から伊豆にかけてのターンパイクは民間企業による営利施設として建設、運営されてきたがこの道は初めから静岡県道路公社によるものである。道路公社が建設したのにはおそらく「箱根山戦争」の余波を受けてそれ以上の混乱を避ける意図があったと思われる。
 しかし現状では乗用車やある大きさ以上のモーターバイクでないと通行できず今日また将来の日本経済の状況を鑑みると力の論理による公共施設のモノポリーと言えなくもない…
 さらにこの推移が進化するとこの道路を利用できるのは富裕層ないし物流業者だけになってしまうので、もし利用料徴収システムを堅持したとしても赤字運営になるだろう。ここら辺で運用姿勢を考え直す必要がある。

がら空き?

 不思議なのは日本で唯一の施設と言える競輪選手養成学校とサイクルスポーツセンターが大仁の伊豆山中にあるのに自転車の通行がダメということ。この辺の発想が良く判らない。とはいえ来宮駅から県道11号線を一本調子の13%登りこう配を5㎞近く走らないと入線できないが。また今昔マップを見ると元々は尾根伝いの登山道があったはずだが、それはどこへ行ってしまったのか? 静岡県や熱海市が観光を重視するのならば一寸手抜きもいいところ。

伊豆東浦を見ゆ

 途中に滝知山園地がある。前もって調べた所道路東側にしか休憩スペースがないと思ったが西側の電波塔がある高台には広い駐車場があってこちらの方が見晴しがよい。ただベンチなどの施設は古いので人を選ぶ空間でもある。欠点として公衆便所がなく、ここより下約1.5kmの地点には新熱函が有料道路だった頃の料金所であったようこそ函南というパークスペースにはあるが両者を結ぶ通路(地形上登山道になるが)がないのは残念である。

パラグライダー広場…空ってやっぱり気持ちいい…心のモヤモヤが一気に晴れ渡る感じ!

 滝知山園地より南へ行くと小高い山があって電波塔が並んでいる。しかし景観が優れるところは限られている(丹那盆地側)のと自動車の進入ができないので入って来る人は少ない。そして緑いろの屋根の大きな鉄筋コンクリートの建物が見えてきた。玄岳ドライブウェーだった廃墟でさらに遡ると熱海高原ロープウェーの着駅でもあった。ドライブウェー廃止後一時は環境保護団体の資料館があったが直に閉館となった。とある新興宗教団体の集会が開かれたとの噂もある。おそらく取り壊すべきだろう…と考えるが昨今のダークサイドトリップブームで人気のある施設らしい。

Google-earthにも上げてありますこの画像

 そして玄岳インターチェンジに着くがその手前にはアンダーパスがあり、降りて見るとやや荒廃した印象であった。登山道であるらしく西へ行けば氷ヶ池がある。周囲で人の声がするがスカイラインにいるドライバーらしく池には人が居なかった。池を巡る道があるが途中に架かる木橋が腐食して痩せて渡るのに躊躇する感じであった。動いてこの足! 幸い壊れなかったがそれも時間の問題だろう。

え?ウソ…これボクが渡るの?渡らなきゃダメ?


 池巡りの道を行くと分岐があって丹那に向かうか玄岳に向かうかとまどったが玄岳に向かう。しかしこの道はかなりの急こう配でロープを伝わないと辛い。そしてまたスカイラインに出るが歩行者通行禁止の看板に戸惑う。
 しかし禁止表示の中には例えば原子力施設のような法的に厳重処罰の対象となるものと、露天駐車場のように所有者の責務回避のためになされるものとがあり、登山道として整備されている以上横断は問題なしと判断した。
 さて玄岳に登ったが曇りがちの天気で景観はいまいちだし、頂上看板も腐朽しているので残念だ。もっともこれは序の口で、ここから熱海の市街地和田山に降りる登山道の酷さときたらなかった。こう配が急なのはよしとして、大雨の時には滝筋になるのか靴裏大の遊離石がごろごろしていて複数回、足をくじくのは受け合い。途中に登山マナーを喚起する詩じみた看板があるのに何合目かは解からないのでさらに一層歩いていて不安になった。アンダーパスから玄岳登山口に至るまで人に会ったのは一人だけで、もしかしたら時間と天候の問題なのかもしれないが、折角の休日なのにこれではね、と伊豆の観光の将来に懸念を感じざるを得なかった。
 そしてね、相の原団地経由で丹那盆地には行かれなかったのさ。
 あの鍵のかかった扉、開けて欲しいなあ。


そうね…





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