わきがの治った未来に待っている事

わきがの人は治った先に未来を抱いている。
これでやっと普通になれる。
普通の人として生活していけると。

しかし、落とし穴もある。

この考えに至って良いのは今を生きている人なのだ。

何かというといじめ、批判、暴言、陰口、悪口、嫌味、嫌がらせに耐えれず社会のレールを歩むのを一旦休んでいる者。
特に年齢を重ねてから今の様な状況に陥った人達はその先、わきがが治った先に待っている未来とは普通なのだ。


わきが体質が治りやった、ついにこの苦みが終わった、わきがが治ればこっちのものだ、みんな自分の苦労をわかってくれておお、辛かったな、これから頑張れよと応援してくれ、仕事もよい結果が出て、周りの反応も変わり、全てがうまく行く明るい未来を思い描いている人も少なくないだろう。
しかし、待っているのは普通の人。
別に良い匂いになるわけじゃない。急に仕事ができる様になるわけでも頭が良くなるわけでもない。急に人に好かれる様な人格に変わったりするわけでもない。
それに普通の人だって匂いは気にするし制汗剤を使ったりする。

もちろん気になる度合いが今まで日常の7、8割を割いていたところが1、2割に減ったら色々変わってよくはなるだろう。

社会から転がり落ちてしまった者はどんな理由があれ、世間から見たらただ単に仕事を辞めて家に引きこもり社会との接点がない人に見える。

ようやくスタートする。普通の人の人生。

そこで争うのはワキガを治そうとしてきた努力の歴史でも無く、そこに欠けてきた金額、今までのひどい体験を乗り越えてきた体験談でも無く、社会での経験、学歴なのだ。

途中で学校を辞めて、会社を辞めた者に待っているのはただその現実のみ。

急に会社でランクが上がったり、学歴がついて来たりはしない。

そこからのやり直しは出来るが、悲しい事に資金力と現実的な年齢制限はある。

自分のこれまでの体験談を正直に語りこれから頑張っていきます、とてもやる気に満ちていますと言う話に心を打たれる人もいるだろう。
よくネットの記事でなぜこの会社に入ったのという経緯紹介で自分の半生を赤裸々に語る場面を見る。
配信者や顔を出す事に抵抗がない人、それにその時点で完治している者であれば、昔はわきがでしたなんて語れるだろうが、そもそも治ってるかどうか分からない人も半数はいるのではないだろうか。

正直に全て語って治っていると思ったら実は治ってなかったなんてことになったら、もうどうやって生きていけばいいやらと落ち込む事にもなりそうだ。

フランクに語るものもいればシビアに語るもの、そもそも語りたくない者や一生秘密にしておきたい者もいるだろう。

場合によってわきがが治るのが怖くなっている人もいるのでは。
むしろワキガだから全てうまくいかなかった自分の人生と。
治ってしまったら今の自分を構築しているアイデンティティがなくなってしまい、全てが崩れ去り空っぽな人間の完成になってしまうのだ。
若い人であればどうにでもなるだろうが、ある程度歳をとってからこの状況になると、そっか大変だったねと慰めてくれるどころかもっと早く治せなかったのと人間力を低く見られ、罵られ失望される場面も増えてくるだろう。
もちろん年齢とか状況に関係なく努力できたり社会に復帰できる人はたくさんいると思う。

それに自分に対しての苛立ちも募る。

どうしてもっと早く治療しなかったんだ、もっと早くしていたら、あの場面も、あの時悲しい思いをする事も、あの選択を諦める事も、と後悔のタラレバエピソードが星の数ほど、まるで走馬灯の様に一気に浮かんでくる。自分の人生をもっと考えておけばと。
自分でも匂いには気がついているが何も言われないしきっとそこまで酷くない、着替えしてデオドランド塗っておけば問題ないでしょと甘くみていたツケが全部回ってくる。

なのでワキガの人はとにかく早く完治を目指すべき。現代医療では完治は難しいとされているがそれでも完治に近い形を目指すべき。
直近でも皮膚上のワキガの匂いを発生させる細菌のみを死滅させる研究が、日本の大学で成果をあげている。
しかし、一般人が製品として取れるにはまだ時間がかかりそうだ。
それに自分に効果があるかは使ってみないことにはなんとも言えない。
もちろんそこまで待って昔はメスでアポクリン腺を切ってたんだよ、えーうそー!なんて語られる日もくるかもしれない。

しかし、その時代に生きる者はその時代の方法で全力を尽くすしかないのだ。
いくら未来により良い物ができるとしても、それまでの今を消費し続ける価値があるのか考えるべきではある。

それになんだかんだ指摘しない人、優しい人、周りに恵まれた人は楽しく過ごせている場合も多いだろう。それにわきがだからと言って喜楽の人間の感情がなくなるわけでもない。
自信がある者、海外へ行く物、普通に恋愛して結婚、子供をもつ者もいるだろう。
むしろ周りに、自身に恵まれている者はそのまま、わきが人生を謳歌するのも一つの手ではないのだろうか。



私はそんな人生を歩んで来たが唐突に崩されたので、これ以上はごめんだが。



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