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【短編小説】仮)アデリア王国物語#10

城内の大会議室では王族の定例会のサルトルの話になった。

大理石のテーブルには国王が鎮座し、ブレーンの官僚や継承位がある叔父上達やアシルやバイレードも座っていた。

アシルは警察の資料とサルトルの供述に整合性があるか、議題に載せる。

「一人娘のワイナリーの血筋を持つリアーナを資産として置いてるが、サルトルが異母兄なのか?」

「招き入れた理由は?身の安全だけで言うなら警察でも良いのでは?」

「本当に実の妹なら犯人は銃撃しない筈。それにどうしてレベッカの子供だったとサルトルは断定できるのか。」

「警察の新たな調べでは、8歳の頃、児童施設に入った経歴があったが、サルトルの出自は不明だ。児童施設に入らせた経緯は孤児で道端に寝ていたとの供述があり、生まれた病院や住んでた村は分からない。村人が施設で引き取ってくれと言われた。施設の人から聞いたが、道端から連れてきた割には服はボロボロでなかったと。」

国内の権力闘争の政治的な目的であっても万騎の軍力を持つバイレードだ。逆に身の危険がある。

「やはり、アステラス国と繋がってるスパイか・・・。」 

児童施設へ強制的に入れるのは簡単だ。住民登録の申請を簡単に手に入れられる。

******

勾留期間、牢屋に居るサルトルは手錠に繋がれてるが余裕の雰囲気でアステラス語で呟いた。

「死罪になる前に救いの手が来る。」

人々が寝静まった真夜中、山を超えてアステラス国の軍の行進が静かに迫ってる。

第一軍隊が棒先に古布を巻いて、ヴァルハラ産の灯油を染み込ませ、アデリア王城の近くの中心街から放火する。

昨夜、ヴァルハラのスラム街から反射炉で冷えて固まった大砲の弾丸を線路を轢いたトロッコを使って運搬され、今は後方の第二軍隊が二頭の駿馬を使って荷台に積んでいる。

そして実戦用の後方装填式のアームストロング砲も持ち込んだ。

無数の雲が浮かぶ空中では雲の隙間からゆっくりと飛行船が現れ、アステラス国の鷹の王章が薄雲から現れた。

ドオォオン!

大きな地鳴りに流石の王城も気付いた。

王城を覆う煉瓦の壁が大砲で崩れる。門兵が敵の剣で刺し殺され、大量の軍が王城に流れ込む。

沖で監視してた護衛の海軍は沈没し、司令部である大きな軍船も敵国に乗っ取られ、海戦は事実上の敗北。

圧倒的なアデリア王国の弱さが露呈してしまった。

「リアーナ、レオナルドとともに地下に逃げろ!!」

執事のレオナルドは絵画を外して、金庫の中になる銃に弾丸を詰め込んで装填した。

「バイレード!!」

リアーナは心の叫びのままに好きな人を呼んだ。離れたくはない。

「逃げる訳には行かない。行くぞ、アシル!!」

バイレードは指揮官として号令を掛ける。

「言われなくても分かってるよ。一つ上のお兄ちゃんをこき使いたいんだろ?」

アシルは腰から王章の付いた長い剣を抜刀し、走り出す。

「行くぞ!!」

兄弟は軍を引き連れて最前線で戦う。門の通路が続々と軍隊が入り、バイレードは足蹴して、相手の腹部を刺したり、鍔迫り合いをしながら威圧的に押し切って敵を薙ぎ倒した。

国王と王妃を連れた叔父達、リアーナは地下の階段を降り、張り巡らされ、入り組んだ地下通路を走った。

圧倒的な敵国の武力にアデリア王国は1日で陥落した。

「・・・停戦を申し込む。」

奥行きのある広い玉座の間に逃げた兄弟は、バイレードは兄を庇う。アシルは右腕をやられ、バイレードは苦悶の表情で血に吸い過ぎた剣を腰に収めた。

敵国のアステラスの大将、ラッシュが仁王立ちし、横でスパイのサルトルは嘲笑う。

「停戦ではない。負けを認めろ。」

ラッシュはまだ血を求めてる。飢えた剣は兄と弟の生きた魂を求めて居るのだ。

ラッシュの大剣は鈍色の光が反射する。

一番、弱そうなアシルを跪かせ、生首を落としたいと大剣をチラつかせた。

バァン!と発砲音が聞こえた。ラッシュ大将の硬い鎧を破壊し、体を貫いた。グラリと床に大将が倒れ、時間差で血溜まりが出来る。サルトルは突然の出来事に驚いて固まった。

硝煙が揺らぐ。

「はぁい。そこまで〜。」

天井からのんびりとした陽気な声が聞こえた。

その銃撃音に兄弟も驚いていると執事のレベッカが頭上から大声を出した。

二階の観覧席の椅子を使い、執事はミニスカのガーターベルトの大股で壁を乗り越え、ラッシュの胴体を狙撃した。

背後にはドゥオモ家の父親が腕組していた。

「リアーナの敵討ちよ。」

バンバンバン!

頭上を睨んだサルトルに執事のレベッカは楽しそうに狙撃し、サルトルが床にバタリと倒れた後にまた一発、お見舞いとして射撃した。

「派手に殺すのが私の持ち味よ。」

執事のレベッカが銃の撃ち方を止めた。兄弟は疑問を後目に父親が壁から顔を覗かせ、今の状況を喋った。

「今、アステラス国と良好関係にあったゼウス帝国が、飛行船を撃墜して押し返してる。世界会議でアステラス国の経済制裁の会議も始まった。」

ドゥオモ家の情報伝達は兄弟にとっても秀逸で。

「君達は一体・・・。」

「リアーナの父親はアデリア王国のただの民間人よ・・・。名乗る事は是としないけど、ゼウス帝国、第一情報機関に勤めるオメガ部隊って所かな。」

「オメガ部隊、ゼウスのスパイか。」

アシルが怪我した腕を抱えながら驚く。バイレードはただ驚いて唖然とした。

「もう君達、弱いから参戦したよ。後は任せなさい・・・。その代わり、このアデリア王国を我がゼウス帝国に編入するからね!」

レベッカの言ってる事が火事場泥棒だと思ったが、兄弟からしたら国王の処刑やリアーナの身の安全を考えたら保護国として編入もありかなと思ったのだった。

「条件は提示しても良いのか・・・?」

「勿論、ご希望があれば。」

胡乱な目でバイレードが呟くとレベッカは若い兄弟を面白可笑しく見つめた。現在、アデリアの国王は生きてる。そして条件とは、ただ一つ、保護管轄内に置かれても独立行政を運営できる事だーーー・・・。

【完結】

😺雫からのメッセージ😺

最後までお読み頂きありがとうございます。
連続小説は初めてでした。
多分、もうこの様な長い小説は書けない(笑)と思います。
プロットなしの小説なので行き当たりばったりで大変でした(まぁいつもの事ですが)
この小説をクリックして最後まで読んで頂き、感謝を申し上げます。本当に皆様、会えて嬉しかったです。ありがとうございましたm(_ _)m


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