負け

負けた　負けた
すぐ前にいたアイツに負けた
すぐ目の前に捉えていたアイツ
序盤では一度ちぎった　だが俺はペースを落とした
すぐまた抜かれた　まだ前に捉えてはいた
最後の最後に抜くと決め　少しずつ近づく
力を溜める　坂道を登る　
下りが来た
ここで追いつく
ここで仕留める
ペースを上げる
背中を捉える　あと5メートル
3メートル　　ペースが上がる
下りが終わる
登る坂道　
足は上がらず　息は乱れて酸素が足りない
頭も上がらない　もう止まってしまいたい
いやだ　やめない　終わらない
前を見る　人影はなく
アイツは遠く　もっと遠くへ
見えなくなった
ゴールが近づく　テープを切る
貼り付けてある記録を見る
奴は俺より５４秒速かった
走り切れたことに安堵する　だがそれも束の間
帰り道　思い出す
勝ちきれなかった自分
噴き出す　嫉妬　怒り　努力　実力　
勝利　
俺の敗北
アイツの背中を俺は忘れない
今はまだ遠くとも
必ずちぎる　誓う　自分へ
越える　いつか　自分を