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愛という概念

レア・セドゥという女優さんが好きだ。
少しのそばかす、どこを見ているのか
わからない瞳。
どんな役をやっても漂う諦念と
常人と異なるエネルギー。

絵の具をそのまま壁に叩きつけたような
発色の仕方。
青よりも青いブルー。
血よりもずっと濃い赤。
そのような女優さんだ。

今回の作品は、レア・セドゥのようだ。
フランスの脚本。
そして、出てくる女たちは皆
愛に足を取られ
囚われの園から出られないのだ。

攻撃的で、自由な
現代的な女性たちの
パワフルな舞台だという解釈もあるようだ。

わたしにはそう思えなかった。

間違えて
失って
蒼白になる。

どこから人生を間違えてしまったのだろう。
そんな風に思う瞬間が
きっと人間にはある。

リアリティではない。
この芝居に必要なのは
限りない虚構である。

女性というものは結局
嘘で出来ているのだし
そうでなければあんなに美しくはないのだ。

すべてが嘘で
すべてが本当だから
だから
虚しい…

虚しいから
またひとを愛してしまう。

愛の前に
恥ずかしさも、正しさも
思慮も、常識も、時代も
砕け散るだろう。

叫び、泣き、わめき、笑い、罵り
彼女たちはそれをおそれない。

愛の前に、無垢である。

わたしもまた、日本人であることを捨てて
大いに乱れてみたいと思う。

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