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誰かのために

あなたのために、泣くことが出来るだろうか。
わたしのために、いつか笑う日が来るだろうか。
それとも。
ただ、何者でもない、見知らぬ誰かのためにすら
わたしたち人間は生きられるのかもしれないのだ。
それほどに、連帯とは
不明瞭で、それなのに強い幻のように
発光し続ける、得体のしれない何かだ。

差別という言葉があり
更に愚かなる区別という言葉がある。
それらはいっそ選別という
もっと大いなる残酷な手のひらの中に
実際には存在しているのだが…

我々の命の連続性を
顧みぬ単独行動ほど愚かなものはない。
けれどもその愚かささえ
遺伝子の計算通りであるのだろうから
真の単独行動など
実際には存在し得ないのだ。

例えば、聡明でない
例えば、美しくない
例えば、裕福でない
ということが何を意味するのか。

遺伝子におけるそれは窪みなのか
出っ張りなのかさえ
わたしにはわからない。

記号の何か情報、そして数式のある組み合わせ
そうでしかないなら…

顔の皮膚1枚、骨格ひとつ
着ているドレスの値段
国籍や学歴にいたっては
話が通じなければ尚判断できない。

それが死体であったなら
そのことに意味は全くないだろう。

醜いか、愚かか。
それほどに何も持たない人生であったか。

そうだとして。
だから、何だろう。
それはただの情報に過ぎないのだ。

わたしは今度国籍の違う
階級の誓う人を演じなくてはいけないから
こんなことを考えているのだけれど

影のような見た目の
人物をつくり出したい。
明るい場所に立っていても
笑っていても
その人のところだけ
ひんやりとした影が出来るような

そんな控えめな美しさを…
つまるところだから結局
人間は情報ではない。

肉体なのだ。

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