見出し画像

8人の女たち

映画版で、フランソワ・オゾンは
女性の物語として描いた。
レズビアン、美しくなること、共犯意識。

でもロベール・トマの原作は
少し違う。
マルセルという屋敷の主人は男性だ。

許してほしい
愛してほしい
遊んでほしい。
可愛がってほしい
抱いてほしい
養ってほしい。

自分だけが一番だと言ってほしい。

女性たちはマルセルに
そう言っているように思える。

幼い少女が父親に甘えるように
でも女たちはもう大人で
だからマルセルは耐えられなかった。
そんな気がするのだ。

大人になれなかった
8人の女たち。
誰かへの思いやりよりも
愛してもらうことで精一杯だった
愚かな
そして必死な彼女たち。

わたしは女性自立や
女性の映画みたいなものは
あまり好きじゃない。
この世界にはふたつの性別があり
それが自然だと思うからだ。

彼女たちは彼女たちなりに
マルセルを愛していた。
彼女たちは彼女たちなりに
状況を良くしようとしていた。
醜く取り乱して
馬鹿みたいに争って
何とかしようともがいていた。

だから切ない。
ただのミステリなんてない。
そこには人の痛みと、叫びが
隠れている。

おどけて、悪ぶって、スカして見える
彼女たちの
女性としての真実を
信頼しようと思う。

愛していた。
から、間違った。
沢山のこと。

わたしもまた思い当たるから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?