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窓から外を見ている

作品の理解のために
図書館で昨日この2冊を読んでいたら
「カラカラ天気と五人の紳士」を
シス・カンパニーでやるという
ニュースが流れて来た。
いい意味で、別役実はそんなに頻繁に
上演される作家ではない。
風が吹いているのか。
別役実の風ならどこまでも吹いてほしいものだ。

「とうめいなすいさいが」と
「窓から外を見ている」が好きだった。 

「とうめいなすいさいが」では老夫婦が
生まれなかった子ども、の話をしていた。
マッチ売りの少女にも、生まれなかった子供が出てくる。

「窓から外を見ている」には
窓からずっと外を見ている男が
考えていることが描かれていた。
彼は人や空気と関わろうとしていて
そのやり方が変わっているだけなのだ。
周囲によって自分は変化する、と話していた。
窓から外を見ている男が変わり者なのではなくて。
男にそうさせる理由が
わたしたちにあるのかもしれない。

別役実は宮沢賢治をとても尊敬していて、影響を受けているそうだ。
流れるような独特の文体のリズム。
思想にも政治にも本質的には感化されない
絶対的な文学の才能。
そして、電信柱。
その純化された魂は、まさに現代の宮沢賢治だ。
その別役実も亡くなってしまった。

戦争を語り、戦後を語り
右を語り左を語り
泥にまみれ、熱を放射する。
そういう作家が、いなくなったなどと
うそぶいていてはいけない。

この時代にも
窓から外を見ている男は必ずいて
わたしはきっとまだ
そのことに気がついていないだけなのだ。



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