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つまるところ

魂の居場所を移したのだ。
辛い決断だった。まだ時間稼ぎしたかった。
現実逃避して、可能性があると思いたかった。

でも知っていた。
あの日からずっと
ここにはもう可能性などないことを。
伸びていく、変わっていく
学んで、過ちをリカバリーして
そんな可能性はもう潰えたことを。

それでも留まった。
可能性など世界のどこにもない。
そんな風に生きてきたからだ。
辛い思いも沢山してきた。
人にも沢山裏切られた。
今回などまだいい方だと。

母が死んで。
そんな風に悪ぶる力が
残っていないことに気がついた。

賃金も安いのに
バカにされているのに
理想と愛のために
辞めていった仲間のためだけに
ボランティアし続けていた時間。

もうその虚しさを
抱える強さは
わたしにはないと気づいた。

母が死んで。
わたしは無理をすることを止めた。
本音ではない
仕方のないことを
誰かのためにすることを止めた。

人は死ぬ。
それを見たからだ。

わたしの大切な人も、わたしも
皆死ぬ。
だから、ほんとうのことを。
ほんとうのことだけを。

芝居を、またはじめるなんて
それだって違う無理じゃないか。
実際以前より、異なる仕事を抱えて
求められるレベルは高くなった。
体が軋む。
疲れたなと困憊することも増えた。

でもいい。
魂は安らかである。

ほんとうはずっとここに
魂を置いておきたかった。
誰も辞めさせたくなかった。
夢が永遠であればよかった。

わたしは大人にならない。
バカにされて、笑われて
古代の遺物と言われてかまわない。

あのときのままの、わたしでいる。
魂はもうここにはないけど。
思い出だけはここにある。

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