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ほんとうのほんとう

ほんとうのほんとうは
いつもただかなしいだけだ。
怒ってるとか、ちゃんとやるとか
どうしてとか、そうじゃなくてとか。
そんなのは全部
わたしのほんとうでも
あなたのほんとうでもなかった。
きっと。

あのとき、ほんとうに失ったものは
ただの恋で
仕事でも理想でも夢でも
どれでもなかったんだ。

あの日、夜中に自転車が倒れるみたいに
永遠に失ったのは
わたしたちの可能性という名前の
恋愛だった。

恋愛にはキスやセックスがあると
人は言うけれど
必ずしもそれが恋愛ではないんだと
わたしはほんとうは思っている。

言葉がなくても、伝わってしまうこと。
この胸から言葉が
水蒸気みたいに漏れ出て
気付いたらあなたが
その言葉を食べていたとしたら。

それを感じたとしたら
それが恋なんだとわたしは思う。

芝居なんてものは
そんな恋の積み重ねで
出来ているとても脆いものだ。

わたしのほんとうのほんとうを
何度だってさらしたい。
血まみれになっても
前が見えなくなっても
息が出来なくなっても
先のことなんて
何一つわからなくても。

狂ってもいいから
ほんとうのことだけを。
もう一度。

それはどこまでいったって
ただのわたしの欲望だ。

それが欲しい。
だからもう一度
あなたに手を伸ばす。

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