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廻り道の端に

大人になるまでに描いていた未来を
今生きている人はどれくらいいるんだろう。

叶いやすい夢、難易度の高い夢、
いろいろあるけれど
何となく思い描いていた未来とは
ほど遠い生活をしている大人は
少なくないはず。

順風満帆に生きるのは案外難しい。
まっすぐ生きていても、どこかで挫折してしまったり、運に恵まれなかったりして
人生のコンパスは簡単に狂う。

もともと大きな夢を描いてわけではないけれど
こうなれたらいいな、と思っていたのとは
全然違う現実を私も生きている。
やりたかった仕事に就いているわけでもなく
ふとした時にちょっと溜め息が出てしまうこともある。

ただ人生というのは妙に味わい深いものだな、
とも思う。

新卒で入った会社は、特にそこを熱望したわけではなかった。
正直当時は大学時代に色んなことで悩み尽くして人生への挫折感でいっぱい、
とりあえず働かないとなぁ、というくらいで
心の中は虚無だった。
当然、新しい環境に対する愛着はまったくない。
ただそこで働くからには一生懸命仕事を覚えないといけない、という思いからとにかく目の前のことだけをひたすらに頑張ったことは覚えている。色々な面で期待をせずに淡々と過ごしていたが。

私なりの一生懸命さを評価してくれる人がいた。
見ていてくれる人はいるものなのだということをそこで初めて知った。
困っていたら、声をかけてくれて一緒に解決しようとしてくれた人がいた。
他人に対しても愛情深い人がいるということを初めて知った。
他人の幸せを喜び、多少の自己犠牲を厭わず、
長所を褒めてくれる人。
ダメなところはダメと叱ってくれる人。
かけがえのない人たちと出会った。

まさかそんなことになるとはまったく思ってなかったな、と今では苦笑いさえしてしまう。
投げやりな、やけっぱちな気持ちで
たどり着いた場所だったはずなのに。
(すみませんでした)
本当に温かいものをたくさんもらった。
心が荒んでいた私に、人として本当に大切なものを思い出させてくれた気がする。
人間として大切なものを数えきれないほど学んだ。
綺麗事みたいに聞こえるが、本心で
そこにいた人たちとの出会いは宝物だったと今思う。

人生、思い通りにいかないけれど、
それは悪いことだけじゃなくて
良いこともきっとそう。

何かを失ってしまったり、夢破れたり
期待通りにいかなくて人知れず泣いたり。
その一方で
考えもしなかった素敵な出会いがあったり、
宝物を得たり、評価をされたり。

廻り道の先に初めて見えてくるものもある。
そこで初めて自分の大切なものや夢に出会うかもしれない。

遠回りをしてよかったんだ、と思う。
まっすぐに歩いていたらきっと出会わなかった、
大切なものをたくさん知れたから。

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