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【1982】いままで「カロリーが低い、取り出すのが難しい、買った方が安い」という理由で、そこにエネルギーがあるのを知りながら見捨てていたものは多い

【1982年の卒論回顧】代替エネルギー開発におけるソフト・エネルギー・パス理論の有効性(14)

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第4章 ソフト・エネルギー・パスとハード・エネルギー・パスの調和
 
 1 ローカルエネルギーとしてのハード・エネルギー・パス
 
 ローカルエネルギーとは、我々の身近に存在し、かつ在来のエネルギー供給システムには、乗りにくかったエネルギー資源を、地域社会を中心にエネルギーの需要と供給が密接に結びついた形で利用していこうとするもので、ソフト・エネルギー・パスの発想を取り入れた。その対象としては太陽エネルギー、風力、中小水力、地熱、バイオマス、海洋、廃熱利用、廃棄物利用、システム利用などが考えられる。
 
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 現行のハード・エネルギー・パスよりとらえるならば、特に、廃熱利用、廃棄物利用によるところが大である。
 
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 この廃熱利用、廃棄物利用のリサイクリングは、昭和48年の石油ショック以前にはほとんど注目されることなく、一般的には焼却、自然放流、あるいは埋立地に放置が常識であった。
 しかし、人々は資源の重要さを痛切に感じて省資源・省エネルギー運動を展開し、今まで見捨てていた廃熱・廃棄物の再利用を考え出した。
 
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 また一方では、環境・公害問題などで事業活動から排出される産業廃棄物が、事業主自らの責任で適正処理をすることが原則となり、廃棄物を事業所外に出さず、所内で有効利用する方法に目が向けられた。そして、各種の廃棄物処理・再利用技術が開発され、リサイクリング活動が積極的になった。それとともに、やはり今まで見捨てられてきた冷却水の水圧や低カロリーの排熱など、かつてはエネルギー源として考えられなかったものを新しい観点から利用する技術も生まれた。
 
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 つまり、いままで「カロリーが低い、取り出すのが難しい、買った方が安い」という理由で、そこにエネルギーがあるのを知りながら見捨てていたものは多い。また、高カロリーでエネルギー転換可能なものでも、そのエネルギーの発生時間帯と使用したい時間帯のズレが生じるため、利用できずにやむなく見捨てている場合もある。しかし、これらを何らかの方法でカロリーアップするなり、備蓄する方法を考えればニューエネルギーに転換できる。
 
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 廃熱利用の場合、たとえば、三菱重工の神戸造船所二見鋳造工場が導入したシステムは、いままで再利用障害になっていた熱の発生時間・場所などの問題を蓄熱と熱交換システムにより解消、排熱の多目的利用を可能にした。(注1)
 このシステムにより、本来冷暖房や給湯に必要とした油、電気、ガスなどが大幅に低減。年間にLPG200トン(注2)、電力7300キロワット時(注3)、金額にして約2000万円(注4)の経費節減となった。
 
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 このように、廃棄物などを再利用・有効活用する技術は、すでに驚くほど数多く開発されているが、これらがすぐ企業化に結びつくかといえば、必ずしもそうではない。
 まず、再生資源の原材料としての量的確保や、そのための集荷流通体制の確立が難しい。それができたとしても質的なバラツキが多く安定した生産体制に乗せにくいし、二次汚染発生の危険性など考慮すべき問題が多いため、主として採算性の面から企業化できるものは、残念ながら限られている。
 
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 しかし、現段階でのリサイクリングは、決して企業化だけが目的ではない。当面は企業内でリサイクル技術の成果を着実に伸ばしつつ、企業化をはばむもろもろの難関の克服につとめ、将来に備えることが大切である。
 しかし、悲観的見方をすれば、ハード・エネルギー・パスをとりつつ、ローカルエネルギーの利用を考えても、その供給には限りがあり、やはり、化石燃料等の増加を余儀なくされることが十二分に予想される。

(つづく)マガジン「ソフト・エネルギー・パス理論の有効性」に編綴

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