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家は結晶

オフグリッドをなめんじゃねぇ

「オフグリッドにするなんて簡単なことじゃないんだ!
 オレだって何年もやっているがまだ完成してない!」
そう啖呵を切ったのは、牛小屋をゲストハウス(認可済み)にまでDIYされた
ご近所のDIYの達人さん。

「今の目標は何?」と聞かれたので、
「オフグリッドのタイニーハウスを作りたいんです」って
正直に答えただけなんですけどね(^_^;)

その一方で、こうも仰る。
imaseなんて、音楽はじめて1年でメジャーデビューしたんだ。
 もう頑張る、とか俺たちの考え方とかは古いんだよ。」と。

う〜ん、これってダブルバインド・・・?

ミラーニューロンと初体験

私は父が左官、祖父が大工、曽祖父が宮大工でした。
曽祖母は芸妓で妾だったので直系ではないけど、
「手に職」の血を引いていることが、私の誇りでした。

物心ついた時から、使える大工道具といえば、
父のお下がりの先端が錆びたドライバーとノコギリ、そして小型のトンカチ。
余った木材をもらっては、トンテンカンテンと不細工な工作をしていました。

コンクリートといえば、汗水垂らしてこねるものという認識でした。
モルタルやペンキで汚れた作業着で汗だくになって帰る父の姿が、
一番古い父の記憶です。

『家をつくるのは熟練の棟梁と職人たちによるものであり、
 素人になんてできることではない。』
それが『常識』でした。

今やYouTubeを検索すれば、
いくらでも素人さんが「マイホーム」をDIYしている動画が出てきます。

実はうちの近所に移住した方にも、古民家改修で有名なYouTuberさんがいます。
初めて会った時は、肉体労働要素ゼロ・大工スキル無しって感じでしたのに、
自分で学びながら、プロに聞きながら、失敗しながら、一歩一歩進み、
一年で一軒家を改修し、その道程を綴った本まで出版社から出されました。

また、同時期に家族5人で移住した別の家族は、
水道なし、電気なし、ガスなしの家に引っ越し、
水は湧水(敷地内の穴から流れていたそう、強運!)
電気は屋根にソーラーパネルを2枚取り付け、電線を引かず、
お風呂は薪釜で、キッチンは薪ストーブとカセットコンロの併用、
湧水が溜まった池をプールにして、この夏も快適に生活しています。
身近なオフグリッドハウスです。
(ちなみに、こちらのご主人は大工さんです)

どちらもコロナ初期に移住してきて、まだ数年しか経っていないけど、
難しいと思われるハードルを超え、
着実に自分達の棲家を、希望するカタチにしています。

人間にはミラーニューロンというものがあるそうで、
「他人の行動を理解したり、
 模倣によって新たな技能を修得する際に重要であるとされる神経細胞」
端的にいうと「見たものを真似る能力」ということ。(なのかな?)

古典芸能の世界では、年端もいかない子どものうちから弟子入りし、
修行させるのはそういうことなのでしょうね。

最初に見た家づくりのイメージが
「プロが石橋を叩きながら正確にチームとして建築するもの」か
「普通の人が試行錯誤しながら、時には失敗も許容範囲で建てるもの」かで、
完成までハードルの高さに対するイメージは違ってくるでしょう。

最初に手にした道具が
「錆びたドライバーとノコギリの人間」か、
「最新式の高性能インパクトドライバーと丸鋸の人間」でも、
イメージできる「進める一歩の幅」が違ってくるのは想像に難くありません。

最初に見たイメージは「秀れたモデル」にもなりますが、
時として「足枷」にもなることもあるでしょう。

父の働く後ろ姿は「かけがえのない記憶」として胸に刻みつつも、
脳に刻むは
『先人に学べ、そして後人にも真似べ。』
ではないか、と。

住人十色

歴史的建造物でも個人宅でも、惚れ惚れするような建築物は
熟練したプロならではのものです。
そういう場所に伺うと、なんとも言えない安心感があり、とても寛げます。
そして椅子からお尻が離れなくなります(笑)

一方、そこの住人がDIYで建てた家は、
その住人のアート作品であり、美意識が前面に出ているので、
テーマパークや美術館にいるような面白さがあり、家中見て歩きまわります。
迷惑な客ですね(苦笑)

どう住みたいか、自分は何をして、頼むなら誰にお願いするのか。
その為にどのように時間やお金を分配するのか。
その選択や行動の結晶が棲家であり、
その結晶が多様性を帯びてきたのが、この時代なのだと思います。

冬が来る前に、雪のように美しい結晶を創りたいと思う今日この頃です。

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