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【ギフトシネマ会員インタビューvol.6】中島 愛子さま

途上国の子ども達に映画を届けるNPO法人World Theater Project(以下、WTP)は、団体発足以来、多くの方々に支えられ活動を続けてまいりました。どのような方達がどのような想いで支えてくださっているのか。 活動を支えてくださる大きな存在である「ギフトシネマ会員」の皆さまに、お話を伺っていければと思います。
第6回目のゲストは、中島 愛子(なかじま・あいこ)さん。5年前に一般社団法人ALIVEが実施した次世代リーダー育成プログラム「ALIVE(あらいぶ)」にてWTPに出会ったことをきっかけに、ギフトシネマ会員としてご支援くださる中島さん。3人のお子さんを育てながら、日々お仕事、社外活動にと奮闘される中島さんの行動力の背景には、社会に対する素敵な想いがありました。

(聞き手:菊地夏美、取材日:2023年9月5日)

リーダー育成研修に参加して出会ったWTP

―本日はインタビューにご協力くださりありがとうございます。
早速ですが、普段はどんなお仕事をされているのでしょう?

初めて菊地さんやWTPの皆さんにお会いした2019年は、会社の医薬部門にいて、研究職から研究企画職になって3年ほどが経った頃でした。今年3月に異動になり、IR(インベスター・リレーションズ)担当部署にいます。会社の株を投資家の方に買ってもらうお仕事で、決算説明会を主幹したり、そのための資料を作成したりしています。

―今の会社にはどのような経緯で入社されたのでしょうか?
私は大学院まで行ってタンパク質の研究をしていました。その研究を継続できる道の一つとして、製薬企業への就職がありました。特に製薬企業にいきたいと思っていたわけではなかったのですが、大学で研究員になって教授を目指すのも違うと感じていて。そんな中、たまたま今の会社に出会い、入社後は15、6年の間、ずっと研究を続けてくることができました。

研究をされていたときの中島さん

そのままずっと研究を極めていくだけでなく、グループのリーダーになってマネジメントをするなどの選択肢もでてきて。2017年に、将来のリーダー候補となるミドル世代の社員を20~30名集めて行う研修プログラムが、会社のグループ横断的に実施されました。自分の専門分野だけではなく、経営について学んだり、他業種の人と触れ合う機会をつくりましょうという研修でした。
3年かけて行われるプログラムだったのですが、最後の年には外部の研修プログラムに参加するようにと送り出されました。そのうちの一つがWTPとの出会いになったALIVE(一般社団法人ALIVEが実施する次世代リーダー育成プログラム)だったのです。

「会員になりたい」とは思わなかった

―今、お話を聴きながら中島さんとの初めての出会いを思い出していました。私たちの団体はどのようなイメージでしたでしょうか。

初日にきょうちゃん(代表、教来石の呼び名・以下統一)が団体のことを話している姿を見た時、正直にいうと、「団体のリーダーがこんな人で大丈夫かな」というのが第一印象でした(笑)。

ALIVEのプログラムは、「チームになってその団体が抱えている課題を解決する提案を出す」というものだったのですが、WTPからは「途上国の子どもに "移動映画館"を届けるための持続可能な収入源を確保せよ」という課題が出され、どうやって提案まで持っていけばいいのだろうと戸惑いました。

当時は同じチームのメンバーと夜遅くまで会議をして、「何が一番のWTPの問題なんだろうね」と色々と想像しながら話していました。最後はチームメンバーの一人が、「僕は今WTPの会員になりたいとは全然思わない。でも僕が会費を払いたいと思う団体になれば、みなさんも会員になってくださるのでは?」という話になって、私たちがどうしたら会員になりたいかを考えて提案しようとなりました。

ALIVEにてWTPの課題に取り組んでいただいた。

―夜な夜な会議していただいていたんですね(泣)。会員になりたいと思わないというお話をチームでされていたとのことでしたが、現在、中島さんは会員になってくださっています。その背景にはどのような想いが?

最初はきょうちゃんの姿勢に共感できなかったんです。でも段々と応援したいという気持ちにさせられてしまいました(笑)。きょうちゃんが持っている特殊な感じなのか、新しいリーダー像なのかはわからないですが、チームメンバーも巻き込まれていった感じがしています。

きょうちゃんの不器用でも一生懸命で真っ直ぐな姿勢、結局はぶれないところ、想いの素晴らしさ、そして、映画を観ている子ども達の顔をみたり、現地の配達人の方からのお話などを聞いて、やっぱりこの活動は、きょうちゃんにしかできないし、この団体にしかできないと思ったんです。

ALIVEにてチーム一丸となって最終提案をし終えた後の一枚。

―ありがとうございます。あのALIVEのプログラムから5年が経ちましたが、今も続けてご支援いただいていてとてもありがたいです。

もちろん「映画を届けたい」という活動自体にも共感しています。それから、WTPを支援する方たちとの出会いも、私が応援したいと思う理由になっています。メンバーや支援者の方たちの優しさを感じましたし、集まっている方たちの繋がりが強いイメージで。そんな団体をずっと応援していきたいという気持ちと、私もその一員でいたいなという気持ちがありました。直接活動に参加することはできないけれど、寄付という形で応援できるならば、続けていきたいと思っています。

特にこの5年間は、社会の誰もが右肩上がりに上がっていけた状況ではない中で、WTPもいろいろ辛かったり、大変だったりしたと思います。それでも事業を継続していて、会員の方達も継続して支援しているというのは、価値がある活動だからなのではと思います。

NPOの活動は、「継続」することがとても大変だし、難しいじゃないですか。WTPのメンバーはみんなが他に本業を持っていて時間がない中で活動していて、ALIVEでWTPの課題に向き合った時に、資金的な苦しさもわかったので、支援することで少しでも力になりたいと思っています。そして存続してほしいなと思います。

今目の前にいる子どもの命をもっと尊重してあげたい

―ありがとうございます(泣)。中島さんはお仕事以外にも様々な活動をされていると聞きました。何がきっかけではじめられた活動なのか教えていただけますか。

自分が研究職に向いているのかわからず悩んでいた時期がありました。その頃ずっと「自分が本当にやりたいことはなんだろう」と考えていたんです。

育児休暇中に少し時間ができたので、子どもと一緒に興味のある場所に赴くようになって。いろいろ出会った中で一番大きかったのは、上の子が2歳の時に下の子が産まれて1年間育児休暇をとった時に出会った「野外保育」です。「自然の中でのびのびと遊ばせることが子どもにとってとても大切」というもので。

私は性格的に何でもきっちりやりたいタイプで、子どもが三人いるのですが、一番上の子が産まれた時は、ベビースイミング、ベビーサイン、ベビーマッサージなど、良いと聞いたことはなんでも、とにかく一生懸命やっているような母親でした。上の子が2歳の時に「先回りして心配したり与えるのではなく、持っているものを育む」ことを大切にしている野外保育に出会った時、人の意見や育児書に頼って子育てするよりも、今、目の前にいる子どもの命をもっと尊重してあげたいと思うようになりました。

先回りして失敗させないようにするとか、いろんなスキルを早いうちから与えるよりも、たくさんの経験をした中から、自分で道を選ぶなり、生きる力をつけるなり、そういう風になるといいなと思ったんです。

そこから、子育てサークルに行ったり、子育て関係のNPOのお手伝いをしたりなど、少しずつ幅が広がっていって。「子どもの居場所づくり」に取り組みたいなと思うようになり、今では地域で「プレーパーク」という子どもの遊び場を毎月開催するまでになりました。

子どもの居場所づくりに取り組む中島さん

―お子さまとの時間の中で新たな出会いがあったのですね。そういえば、料理教室などもされていると聞きました。

一番下の娘の育児休暇中に、「雑穀料理」というものに出会ったんです。「つぶつぶ雑穀料理」という可愛らしい名前です。
つぶつぶ雑穀料理は、お肉やお魚などを使わずに、日本の伝統的な調味料と季節の野菜、それに日本でもはるか昔から栽培されてきた雑穀を使って作るビーガン料理です。雑穀というと地味なものをイメージされるかもしれませんが、メニューは無限大で洋風や中華風にアレンジしたりもするんですよ。甘いお菓子もお砂糖を使わずに、果汁や甘酒などで作れるんです。とても美味しいし、体にも優しいし、なんて楽しそう!とハマってしまって、雑穀料理教室の講師の資格もとりました。

お写真からもあたたかい雰囲気が伝わってくる料理教室

―お子さまが3人いらして、お仕事もされていてそうした活動も…。本当にすごいです。

そんなことないです。いろんなところで手を抜きながらやっていますから(笑)。

みんなが笑顔でいられる社会に。
ハチドリの一雫のように私にできること

―最後に、中島さんの夢について教えてください。

子どもの頃は、「夢=職業」みたいなところがあったのですが、今の夢は、ちょっとうまく言えないのですが、「みんなが笑顔でいる社会になるといいな」ということでしょうか。

いろいろな活動をしていますが、すべての原点に「みんなが笑顔でいて欲しい」という想いがあると感じています。もちろん大変なこともいっぱいあるんです。でもなぜ続けているのかというと、せっかく同じ時間を過ごしているのに、「あぁつまんないな」とか、「がっかりだな」とか、「世の中いいことないな」と思っているのはもったいない気がして。だから、私自身も楽しいし、周りも楽しいし、みんなが笑顔でいられるような、そんな社会になるといいなと思っているんです。

みんなが笑顔でいられる社会を作るための方法には、たとえば会社をつくるとか政治家になるとかいろいろあると思います。ただ私はどちらかというと、草の根的な身近なところから一人ひとりを笑顔にしていけたら、やがてはみんなが笑顔になるかなと思っていて。じわじわと、ハチドリの一雫のように、私ができることをできるようにやって、その結果みんなが笑顔でいられるといいなと思っています。

私はたまたま日本に生まれて、日本で一定程度の生活水準の中にいて、映画もボタン一つで観られる環境にいます。直接途上国に行って子どもたちの様子をみたわけではないけれど、どこの国の子も、どんな子どもにも幸せになってほしいなという気持ちが大きくて。なのでWTPの活動を応援している根っこにも「みんなが笑顔でいて欲しい」という想いがあるのだと思います。

―中島さんは本当にその想いを体現されているなと今日のお話を聴きながら思いました。みんなが笑顔でいられる社会って素敵です!本日はありがとうございました!

AIKO NAKAJIMA
大手化学メーカーグループ勤務。子育て支援の活動やつぶつぶ料理教室などの社外活動にも奮闘中。
子どもの頃によく観ていた映画は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『インディ・ジョーンズ』。
ここ数年は毎年ドキュメンタリー映画の自主上映会も企画運営。


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