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アメリカ臨床留学への道⑥:いざ、トレーニング開始

現在アメリカで外科医として勤務してます。まだ半年ほどしか経っていないので成功している訳ではありませんがこれまでの過程について紹介しますので海外留学をお考えの方の参考になれば幸いです。
アメリカでのトレーニングを続けていく上でポジションを獲得するまでは経済的な問題が一つ大きな悩みの種です。もし参考になりましたらサポートいただければ幸いです。

これまでのプロセスを長々と紹介してきましたが、全てはアメリカで外科医としてトレーニングをするための下準備です。ようやくフェローとしてのトレーニングを開始しましたがここからもやはり困難ばかり…笑

まずやはり一番初めに苦労するのは英語です。今はだいぶ理解できるようになりましたがカンファレンスなどでディスカッションが始まると何について話しているのか、どういう方針になったのかなど分からないことも多々ありました。自分の英語のレベルは海外留学を目指す方の中で、上でもなく下でもなく、中の中だと自負しています。TOEFLの試験は何年か前に一度だけ受けて88点、一応STEP2 CSは一発でパスしました。短期ですが海外留学経験は大学時代に3ヶ月だけあり。大学時代から英会話はある程度継続してきました。つまり留学を目指す方の中では至って普通で少しだけ意識高めに英語を勉強してきた程度(そして愚かにも少しだけ英語できると勘違いしているパターン…)です。多くの方が採る英語の勉強方法で、TEDやYoutubeを利用してスピーチやレクチャーを英語で聞いたりするとこともある思います。いわゆる綺麗な発音で原稿を読むような英語であり、これを理解するのはあまり難しくありません。一方でNetflixなどで字幕なしで映画などを2時間退屈せずに見続けて内容を理解して笑ったり感動できる純日本人の方は少ないと思います。そして当然ですが英語のレベルは後者が求められます。
ただこればかりは普通のスペックの人間では、日本にいながらこの英語のレベルを身につけることはなかなかのハードルだと思います。仕方ないのでこちらにきても英語の勉強を続けるしかありません。例えばPAと一緒に回診をしたりする際に患者への説明しているのこっそり録音して家で練習したり、最近のアプリでは文字に起こしてくれるものもあるのでそう言ったツールを利用して少しでもカンファレンスなどの内容を理解するようにしています。言葉のDisadvantageは積極性でカバーといきたいところですが、ここまで上手く英語で話せない・理解できないとなると普通の人間では消極的になれたとしても積極的になるのはなかなか困難です。英語の勉強をしにアメリカに来た訳ではないとわかっていても、英語がある程度のレベルではないと手術や外科の勉強も十分にできないとも言えます。時間の無駄と考える方もいらっしゃるかも知れませんがそういう意味では研究留学→臨床留学という方法も一つだと思います。

ネガティブなことばかり書きましたが一応今のところはクビにはならずにこちらでの仕事を継続しています。毎日の業務は朝6時半ごろから開始、回診をして7時半ごろからICUカンファレンス、8時半ごろには手術室にいき9時台には手術開始です。もちろん症例にもよりますが軽症例であれば昼過ぎに、重症例でもだいたい夕方には終わることが多く、17時前後には仕事を終えれていることが多いです。ほぼ毎日手術がありますがキャンセルなどで手術がない日には14時ごろに帰宅することもあります笑
こちらに来てよかったことの一つは平日であっても夕食以降の家族との時間を持てることです。日本では休日であっても家族と一緒に食事できないことも多かったですが、休日・週末はオンコールでない限りは基本的にはduty freeなので家族と過ごせる時間は格段に増えました。

手術に関しては病院にもよると思いますが体位取りからがフェローの仕事です。なので朝のカンファレンス中には麻酔の導入はほぼ終わっていることが多く、手術室に入れば体位を取り、アテンディングに電話で一言声を掛けてからドレーピングをして手術を開始します。大体の場合、開胸・剥離まではPAと進めておき、カニュレーション前にはアテンディングが到着し指導を受けながらカニュレーションを行います。症例によってはそのまま執刀させてもらえることもあれば、その逆でカニュレーション前から(もしくは皮切から)交代となることもあります。これはアテンディングの裁量や症例の重症度によってまちまちです。手術を終えればICUへの搬送を麻酔科医とともに行い、ICUチームにサインアウトを行って終わりです。ここまではおそらく日本でのトレーニングと大きな差がないと思います。

術後に関しては基本的には出血やドレーントラブルなどがない限りは呼ばれることはほぼありません。最初は違和感がありましたが慣れてくると外科医は手術のみにフォーカスできて非常にありがたいシステムです。あとは食事を取り終えたぐらいに一度ICUへ様子を見に行き落ち着いていたらあとはよろしくお願いします、と言った感じでその日の仕事は終わりです。オンコールの場合はそのまま病院に泊まりますが、この場合もそれほど呼ばれることはありません。逆に呼ばれるとなると本当に緊急の場合が多く、ECMOやICUでの緊急開胸など寿命が縮むようなことが多いです。ですので体力的には日本の当直より楽ですが、精神的にはやはりオンコールは疲れます。何度か緊急にも当たりましたが、アテンディングが到着を待てない状況で自分1人でICUのスタッフに囲まれながら開胸してECMOに乗せたりする場面もありました。上記の通りで英語の問題もありその時の緊張と冷や汗の量は日本の時の2倍・3倍です。ですがそういう緊急の場面をともに経験していくことでICUのスタッフからも少しずつ信用を得られるという側面もあり、見知らぬ日本人という存在から、少しずつフェローの1人として認識してもらえるようになってきました。

手術に関しても手術器具の名前がスッと出てこなかったりPerfusionistやAnestheologistとのコミュニケーションでつまづくことはまだまだあります。手術中にパッと質問したかったり、手順を確認したかったり、自分がどうしたいかを伝えたいのに英語で言おうと考えている間にその場面から次の場面にうつってしまいアテンディングに文句を言われることが多々あります。ここでもやはり英語…。半年経てば慣れてくると言われますがまだまだ苦労してばかりです。



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