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ニオイバンマツリ

「fairy」

私ね、妖精さんが見えるの

でもママとパパは信じてくれなくて

でも妖精さんはね

絶対いるの。

だって、そこにもあそこにもいるのに

なんで信じてくれないんだろって

悲しいの。

お花をピカピカにしてくれるし

お家で私と一緒に遊んでくれるの。

それでね

羽がね、パタパターってキラキラなんだー。

そう思っていた子供時代はとっくに過ぎて

いつしか

私の目には妖精が映らなくなった。

というより

妖精なんか最初から

いなかったのかもしれない。

生活に、仕事に、追われ

気がついたら夕方なんてことはざらにある。

今日も疲れたなーなんてことを考えながら

軋むベットに横になった。

カーテンの隙間から少し見える

空色は闇に溶けていくように真っ暗だった。

ふと

今は何時だろうと時計を見ようとしたとき

視界の横でキラリと何かが光った。

私は、首を傾げながら辺りを見回した。

光ったのは確か窓の外からだったような。

恐る恐る窓を開けてぐるりと1周首を捻った。

すると

小さな虹色の

鍵がポツンとベランダに落ちていた。

これはなんの鍵だろうと首を傾げたとき

また視界の横で何かが光った。

光った場所に向かうと

そこには

虹色で鍵穴のついたロックがあった。

鍵を鍵穴に差し込むと

ふわりと身体が浮いた。

かと思うと背中から虹色の羽が生えた。

私は思うままに空を飛び、宙を蹴り

そして、遊んだ。

また、

妖精たちが見えるようになったのだった。

私は喜びに満ち、

壊れかけた何かが元に戻っていくようだった。

そして、遊び疲れたなと思った頃。

妖精たちは突然消えてしまった。

カーテンの隙間から覗く空色はもう明るい。

あれからというものの

私の前に妖精たちは1度も現れたことがない。

でも、私はもう大丈夫。

私は今の仕事を辞めることにした。

そして、これから出会う子供達にこう言うの。


「妖精さんはきっといるよ。

だって、それを信じている限り

心の中にいつだっているんだから。」

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