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#12 授業は楽しいか②

わからないから楽しい

 前回と真逆の話を。
 人間、知的好奇心というものがあります。知りたいことの大小はありますが、どんな人にもあると思います。また、「ネタバレ」「予定調和」という言葉があるように、これから起きることや知りたいことを不意にバラされてしまうことへの抵抗感もあります。

 前回は、授業がわかるから楽しいとしましたが、それとは逆に、わからないからこそ楽しい授業も存在します。私は、好きな社会科でよく使う手法です。例えば、幕末。黒船と日本船(関船)の圧倒的な差を数字で提示します。最近は資料集などに、こうした数字が載るようになりました。大きさだけでも違いますが、黒船は近代の軍艦。子どもたちは、「こりゃかなうわけないよね」となります。

 ところが、日本は植民地化されませんでした。日米修好通商条約という不平等条約を結ばされたにも関わらず、です。技術面でも経済面でも圧倒的不利な状況。「さあ、サムライの国、日本はどうする?」と問います。

 子どもたちは自由に発想し始めます。「アメリカがダメなら、他の国と仲良くすればいい」「いや、他の国とも不平等条約を結んじゃってるよ」「じゃあ、強くなる」「どうやって?」「とりあえず武器の開発」「まず木造がやばいよね」「鉄だ!製鉄!」「日本て鉄鉱石とれるの?」「気合いで何とかする」「そりゃ無理でしょ」などなど……。この子ども同士のやり取りが、実に面白い。そして、このやり取りは次の課題を生みます。

 「じゃあ、どうやって日本が変わっていくのか調べてみるか」

 この議論の最中で気をつけたいのは、予習組の捌き方です。どんな教室にも、必ず予習をしている子どもはいます。先ほど触れたように、ネタバレは一部の子どもたちのやる気を削ぎます。いきなり第一声から「倒幕して明治維新を起こし、殖産興業や富国強兵した」と言われたら、「何のことかさっぱりわからないけど、あいつが言うんだからこれが正解なのか」と諦めにも似た雰囲気が漂ってしまうこともあるでしょう。そこで、彼らには「まとめ役」としてその授業の最後(または単元の学習の最後)に活躍してもらいます。いわば、全てを知っている「神の視点の持ち主」。

 予習はいいことです。どんどんやるべきだと思います。でも、教室で学んでいるときは、その予習を生かすポイントを定めてあげた方がいいと私は思っています。野球に例えるなら、彼らは「押さえの切り札」。先発や中継ぎピッチャーが炎上しても、彼らがいれば修正が効きます。一番いいのは、教師が話す回数を減らせること。大人の説明よりも、子ども同士の説明の方が聞いてくれる場合も多いからです。

 「わからない」問題の良さは、多くの子どもたちを主体的に学ばせるのに向いています。ただ、教師のネタ選びによるところが大きいので、難しすぎる課題だと授業自体が成り立たなくなる可能性もあります。注意したいですね。

 さて、12回にわたって授業の話題を書いてきました。ひとまず完走としたいと思います。読んでいただき、ありがとうございました。

2023.10.09 あーる

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