2024/04/18/CA

今日のテーマ
日本において、同性婚に対し、異性婚と全く同一の婚姻に係る法制度を認めるべきかどうか

記事
朝日新聞「多様な愛 社会も司法も」(2024年3月15日発行)

2024年3月15日、札幌高裁で、同性婚を認めないことは「違憲」とする判決が出た。一連の同性婚訴訟で、初の高裁の判断である。一連の裁判の争点は憲法第24条1項の「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立」という点や、第24条2項、第14条の「法の下の平等」などの点であった。この高裁の判決では、第24条1項に踏み込まれ、「両性の合意」という文言に対して、札幌高裁は「文言上、異性間の婚姻を定めている」と認めつつも、法令を文言・表現だけでなく、目的を踏まえて解釈することは一般的で、「憲法解釈でも同様だ」とした。このことなど、3つの争点で違憲状態ではなく、違憲だという判断が出た。その他、地裁レベルの6判決では、「合憲」は1件にとどまり、「違憲」が2件、「違憲状態」が3件だった。

しかし、日本において、「同性婚」の法制化は進んでいない。そこには、一定の反対勢力があると考えた。したがって、今回は、「日本において、同性婚は法制化されるべきか」という議論を行うことで、現在そしてこれから行われる同性婚についての議論を整理したい。国際的な流れや、司法の流れにおいて、制度化は必至である議論であるかもしれない。しかし、法整備が遅い理由は一定の反対勢力がある議論であるのではないかと考えた。また、大きなテーマであるため、難しい議論かもしれないが、できる限り、挑戦していきたい。

 立論側は、「同性婚に対し、異性婚と全く同一の婚姻に係る法制度を認めるべきではない」という点で議論を行う。みなさんは、「同性婚に対し、異性婚と全く同一の婚姻に係る法制度を認めるべき」という立場で議論をお願いします。

同性婚:同性で結婚すること
法制化:制度や規則を法律により定めること。

意見・論点

  1. 伝統的な婚姻の捉え方が壊れる。

婚姻とは、単純な男女の性関係ではなく、男女の生活共同体として子の監護養育や分業的共同生活等の維持によって家族の中核を形成するものでもある。しかし、同性婚においては、婚姻の目的が、子どもの監護養育ではなく、当事者(大人)の幸福が目的となる。同性婚は当人同士のものだからである。そうなれば、一夫一婦性や貞操義務といった社会的規範が揺らぐこととなる。このように、同性婚合法化は同性カップル当事者だけでなく、全ての異性カップル、特に子供たちに多大な影響を及ぼすことになる。(岸田首相「社会が変わってしまう課題」と発言)
Q異性婚でも当事者同士の幸福を求めて結婚している→同性婚が違憲になる直接的な理由にならないのでは?
A現状の制度では監護養育を目的とした内容となっている。→当事者同士の幸福だけでなく様々な理由から制度が出来ている。

Q具体的にどのような悪影響が出ると考えられるのか?
A今まであった家族間の喪失が生まれる。

2.悪用、犯罪につながる可能性がある。
  同性婚制度を悪用する可能性がある。例えば、国籍取得などである。実際に、イギリスでは2015年に不法滞在のために、同性婚制度を用いた事件があった。また、異性婚と比較して、同性の方が結託しやすさがあるとかん がえられる。また、性犯罪のために同性婚を用いる(幼児愛者が結託して同性婚を行い、養子をとるなど)といった可能性も考えられる。制度の悪用は可能性のあることである。

Q同性婚による問題ではなく政策の問題なのではないか
A政策・制度の問題ではあるがその根幹に同性婚が関わっているのは確か。同性婚の証明が困難な事からそのため制度づくりや政策設計が難しいと考える。

3.「父母」「夫婦」といった言葉の利用がなくなる。
  同性婚を認めることによって、両性の結婚ではなく、結婚の当事者の結婚を認めるということになり、「父母」や「夫婦」といった言葉は配慮の対象となる。従って、「父親」「母親」などといった文化も薄れていくだろう。
 それは、両親が揃って、育ってきた子どもにとって、良いと言えるのかは疑問である。
 どのような言葉を使うかは社会関係や家族関係に影響を及ぼす。子供からすれば、父も母も親には違いないが、父に対しての接し方と、母に対するそれには違いがある。「父」「母」という言葉を使わなければ認識できない関係性があるわけで、「父」「母」という言葉をなくすことは、そうした親子の関係性を否定することにつながる。少なくとも子供を尊重した話ではない。

Q現在も片親で育てている人がおり、同性同士(二人の父・母)になっても価値観に悪影響がないのでは
A同性同士になることで考え方に影響がでる可能性が高くなるのでは。

Q妻・奥さんや家内など昔ながらの言い方が今の社会にあっていない。→同性婚の合法化により呼称が変わっても悪影響はないのでは

予想される反論・再反論

  1. 同性においても結婚する権利がある。(結婚することにより、得られる利益を教授する権利がある。)

 どこまで、権利を認めるかという問題がある。同性婚を認めるとすると、ポリアモリー(複数恋愛)も認めるべきなのか。一夫多妻なども、個人の性的志向なのであれば認めるべきなのだろうか。同性婚を性的マイノリティとして、彼らの結婚の権利を認める場合、その他のポリアモリーや、フィクトセクシュアルのような性的志向も認めるべきだという話になり、社会の規範が曖昧になる。したがって、同性愛を含むと異性愛で区別した仕組みを持つことは当然であり、完全に同じ仕組みを導入することは難しいと考える。つまり、婚姻とは別の仕組みで、同性婚を認める仕組みが必要であると考える。既存の枠組みのなかで、認めるということは、家族制度や婚姻の意義といった社会全体に通底する問題に関わってくる。(論点1と重複するかもしれない)
Q同性婚の場合は「同性同士の結婚は認めない」と法律に記載されていない。一夫多妻は法律に記載されているため同一視するのは違うのでは?
A明確な記載はされていないが法律の中にある「認識」が問題。同性婚が認められることで新しい問題が生れるのでは
Q同性婚問題が出ているのは社会の声が大きいからと考えられる。そのため一夫多妻を合憲にするべきというような意見が出ることがないのではないか
A

2.海外でも導入されている権利であり、主要7カ国(G7)のうち同性婚を認めていない国は日本だけだ。国際的に見ても認めるべきである。
 日本は、「家族主義」的である。家庭こそが、家族の福祉の負担を第一に負わなければならないと、公共政策が想定するようなシステムである。この家庭とは、稼ぎ手としての男性と、家事や育児労働などの再生産に携わる女性という、近代家族を基にできている。もちろん、この家庭も時代によって、男女の性的役割が変化はしている。しかし、男女の家庭があることで、そのつながりを強めていることは変わらない事実である。他国とは、システムが異なるため、他国が導入しているからといって、日本に導入しなければならないとは言えない。

QLGBTを世界的に進めている中、同性婚を法律として認めることで企業のイメージアップなど経済効果を生むこともあるのではないか
Aその点も考えられるが日本では家族主義を軸として経済発展してきた側面がある。同性婚を合法化する中で日本独自の「結束」が揺らいでしまうのではないかと考えられる。

Q同性婚が認められない中で同性愛者が海外に移住→人口減少に繋がるのではないか
A同性婚を認めることで少子化は進むと考えられている。

Q同性婚が進むことで養子縁組や精子提供の増加などが生まれている効果がある。そのため同性婚の合憲が少子化に直接繋がることはないのでは。 
A今までの家の形・文化がなくなることを多数いるのでは
Q時代が変わることで反対意見は少なくなっていくのでは(今反対意見を挙げているのは高齢者が多いと予測)
A

参考文献・URL

  1. 朝日新聞「多様な愛 社会も司法も」(2024年3月15日発行)

  2. NHK 「同性婚認めないのは憲法違反 札幌高裁 2審での違憲判断は初」(2024/3/14発行)
    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240314/k10014390391000.html

  3. Marriage for All Japan https://www.marriageforall.jp/

  4. 茨木市パートナーシップ制度 

https://www.city.ibaraki.osaka.jp/kikou/shimin/jinken/menu/sexual_minority/58214.html

  1. 一般社団法人平和政策研究所「憲法・民法から見た同性婚合法化の是非 ―婚姻制度の立法趣旨と子供の福祉の視点から―」

https://ippjapan.org/archives/6307

  1. ハフポスト日本版編集部「【判決要旨全文】東京地裁が「違憲状態」と判断した理由は? (結婚の平等裁判)」
    https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_65f02aece4b0bd5228d56505

  2. SYNODOS 「日本国憲法における「同性婚導入」と「パートナーシップ導入」―近時の裁判例とその先の議論―」
    https://synodos.jp/opinion/society/28913/

  3. BUSINESS INSIDER 「なぜ日本では同性婚の議論が進まないのか? アメリカとの違いから見える日本の現在地」https://www.businessinsider.jp/post-246360

  4. https://glo12.com/news/archives/1592

  5. https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/features/2020/04-5_2.html

  6. https://www.vogue.co.jp/change/article/is-familism-still-working

  7. https://www.hokeni.org/docs/2023030300061/

  8. http://www.seisaku-center.net/node/1101

【先生からのコメント】
・問題の根幹は「個人対社会」となっている。
・人権は全ての人間が持っている。だが価値観がある以上排除されてしまう人が生まれる。
・全部認められるようにならなければならない。(そのような前提であらなければならない)
・個人の尊重をどのように社会にアジェストしていくのかを考えていかなければならない。
・法律を変えなければならない。→司法では法律から分析して判決を出す。そのため立法府が動き法律を変えなければ同性婚が認められることはない。


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