#17『ほんとにあった夢十夜①』

 こんな夢を見た。
 腕組みをして小劇場の座席に座っていると、突如として現れた男性2人組が、サンパチマイクの奥で奇怪な動きの芸を始めた。
 片方は顎に髭を蓄えており、もう片方は太い黒縁の眼鏡を掛けている。髭の男はコミカルな動きを交えつつ、何やら面白可笑しな話をしている。一方で眼鏡の男は、持ち前の鼻に掛かった甲高い声で、可笑しな点を訂正している。このことから髭の男が「ボケ」、眼鏡の男が「ツッコミ」であることがわかると同時に、この場がオリエンタルラジオのライブ会場であることが理解出来た。
 そうか、オリラジは小劇場でも仕事をしているのか。この、「無いっちゃ無い、有るっちゃ有る」な話に私は納得していた。
 しかし、どうやら普段のオリエンタルラジオとは少し違うようだ。いつまで経っても武勇伝を始めないどころか、藤森の発言に中田がツッコミを入れ出したのだ。

 「お前それ、猫しっぺ猫ちゃんのシャオかよ!!」

 中田の意味不明な発言に、会場は笑いの渦に巻き込まれた。しかしこれは、意味がわからないから可笑しいのではなく、私以外の観客は意味をしっかりと理解した上で笑っているようだった。
 「いったい何だい!猫しっぺ猫ちゃんのシャオって!?」と、透かさず藤森も聞き返す。どうやらこちらが本当のツッコミのようだ。
 すると中田は、どこからともなく分厚い本を取り出し、開いたページの内容を読み上げる。

 「『猫しっぺ猫ちゃんのシャオ』、アメリカ南部の地域では、猫にしっぺされた猫の肉を耳でシャオする料理を食べることがある。」
 「だから何だい!シャオってのは!」

 またしても会場は笑いに包まれた。その後、分厚い本は中田のジーンズのポケットに仕舞われた。ここで夢は終わった。
 目覚めてからすぐに「猫しっぺ猫ちゃんのシャオ」を検索したが、シャオという名前の飼い猫しかヒットしなかった。

見た日:中学3年生の冬


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