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#9『小山市』

 栃木県は小山おやまへ行ってきた。映画『四畳半タイムマシンブルース』を鑑賞するためである。
 私は現在千葉県某所に住んでいるが、いったいなぜ栃木まで足を運んだのかというと、入場特典である書き下ろし短編を入手するためである。これは各劇場で上映最初の週に入場者に配られているものだが、ここ数ヶ月は大学卒業に向けた諸々の準備で何かと忙しく、気付いた頃にはすでに東京近郊での上映は3週目以降に突入していた。
 そんなわけで、上映の開始が他に比べて遅い小山の映画館までやって来たのだ。

 映画館が位置していたのは「ロブレ」というショッピングセンターの中だ。小山駅からのアクセスも良い好立地である。
 この「ロブレ」というショッピングセンターは凄い。なんてったって、もう12月も2週目だというのにクリスマスっ気が全くないのだ。これは決して貶しているわけではない。私は常々、商業施設のクリスマス準備の早さに疑問を抱いていた。私の地元のショッピングセンターなんて、ハロウィンが過ぎて間もない11月の中旬から巨大なツリーが飾られていた。「流石に時期尚早過ぎやしないか。これでは市民の季節感覚がどんどん狂ってしまう。」という私の心配は露知らず、街の親子連れ達は笑顔でツリーと写真を撮っていた。クリスマスの準備は20日辺りからでもきっと間に合うだろう。私の地元も小山を見習ってほしい。

 小山駅には宇都宮線、両毛線、水戸線と東北新幹線の4路線が乗り入れている。このうち、私が利用したのは宇都宮線だ。
 宇都宮線の停車駅に「古河こが」という駅がある。この駅は宇都宮線で唯一の茨城県にある駅で、両隣を栃木県の駅に挟まれたやや特殊な駅である。私はここでふと思った。茨城と栃木の県境はどうなっているのだろう、と。
 古河駅と次の野木駅の間には必ず県境が存在し、ずっと窓の外を見ていれば絶対に県境を目にすることができる。私はそう信じて、ボックス席で窓の淵に肘をつきながら外の景色を眺めていた。その様子はまるで、地元を離れて遠くの街へ引っ越す夢追い人のようだった。しかし、一向に県境らしき場所は現れない。それもそのはず、普通県境とは目に見えないものだからだ。
 私が住む千葉県は、東京都、埼玉県、茨城県、神奈川県と隣接しているが、いずれの県境も目に見えるようになっている。東京・埼玉とは江戸川で、茨城とは利根川によって大部分が区切られている。また神奈川に関しては、東京湾アクアラインで結ばれているだけで陸続きではないため、正確には県境というものは存在しないのかもしれないが、海を渡った先は別の県だと考えるとわかりやすい。このように千葉県には特殊な県境しか存在しないため、栃木と茨城の間にも何らかの目印があるものだとばかり考えていたのだ。
 実際、千葉県に住むほとんど旅行をしない家庭の小学生なんかは、県を越えるためには川か海を渡らなければならないと思い込んでいる者も多いはずだ。

千葉県とその県境

 無事、映画『四畳半タイムマシンブルース』を鑑賞し終えた。面白かった。
 入場者特典は、2週目にも別のものが配布される予定になっているが、来週は色々とバタバタしているため、また来月辺りに宇都宮まで行こうと考えている。


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