エッセイ#56『ささくれ』

 指に埋まったささくれが取れない。
 左手の親指に木のささくれが刺さってから、かれこれ2週間が経過した。刺さった当日は、ピンセット片手にささくれと格闘していたが一向に抜ける気配はなく、諦めてもう気にしないことにした。これが悪夢の始まりだった。
 指に深く刺さったそこそこ太めのささくれを、気にしないなんてことは不可能に近い。日常生活にはほぼ支障がないが、不意に触ってしまった時に激痛が走る。その度にペンケースの中のピンセットで刺抜きを試みるが、やはり抜けない。初日に抜けないものが、数日後に抜けやすくなることなどないのだ。

 よく見ると、親指以外にもあらゆる箇所に細めのささくれが埋まっている。こちらも親指同様に生活への支障はないが、見れば見る程むず痒い気持ちになる。
 左手中指の第一関節には原因不明の膿疱のようなものが出来ているし、右手中指の付け根には作った覚えのない瘡蓋が出来ている。爪も何だかいびつだし。色も他人より赤っぽいし。まず何から治すのが手っ取り早いのだろう。


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