朝ドラヒロイン考:上白石萌音「ちはやふる」からカムカムへ

明確に彼女を認識したのは、映画「ちはやふる」。あれから5年、あっという間に若手人気女優の仲間入りを果たした上白石萌音ちゃん。

(イラストは「和菓子 あんこ」で検索しました。noteの画像検索便利)

NHK連続テレビ小説、通称朝ドラ「カムカムエブリバディ」が始まってまだ2週間ですが、上白石萌音ちゃん演じる安子ちゃんが愛おしくてたまらない。安子ちゃんと稔さんの恋にきゅんとしたり涙したり。そんなわけで(どんなわけで?)独断と偏見まみれの朝ドラヒロイン考を展開します。

今でこそ、既に人気や実績のある女優さんが朝ドラのヒロインにキャスティングされていますが、昔の朝ドラはド新人が頑張る姿を応援する、というスタイルも多かったんですよ…という朝ドラ60本以上鑑賞済みの視点も最後に少し語ります。

ちはやふるのかなちゃんはハマリ役だった

冒頭でも書いたように、私が明確に上白石萌音ちゃんを認識したのは2016年に公開された映画「ちはやふる」でした。

かるたを題材にした高校生の青春を描く、人気漫画の映画化。原作ファンでもあるので、それぞれのキャラを誰が演じるのか、3次元の映像の中で演じ切れているのか注目していましたが、上白石萌音ちゃんの「かなちゃん」は、個人的にはとってもハマっていたと思いました。

主人公ちはやのかるた部仲間で、古典マニアで、百人一首の歌の世界を愛する呉服屋のひとり娘、大江奏、通称「かなちゃん」。彼女の古風でふんわりしたイメージが、わ、そこに「かなちゃん」がいる! と、映画館で静かに感動したのを覚えています。この作品は割とキャスティングに成功している映画ではないかと思っています。

※「ちはやふる」は上の句・下の句・結び、の3部作ですが上・下のDVDのリンクがうまく貼れないので完結編の「結び」を貼っておきます。

ジャケットの右下、上が黄色の袴の女の子がかなちゃんです。いま観るとすごい豪華なキャスティングだな…。

余談ですがこの作品、朝ドラ俳優がいっぱいですね。

「結び」には朝ドラ前作のヒロイン、清原果耶ちゃんもいますし、まもちゃん清水尋也くんも。松岡茉優ちゃんは「あまちゃん」で注目されて以来すっかり売れっ子だし、賀来賢人くんは「花子とアン」の兄やんでした。過去作の確認が朝ドラ脳(笑)。まっけん新田 真剣佑を認識したのも映画「ちはやふる」だった。ちなみにまっけんは最初は「真剣佑」名義でしたが、のちにこの作品で演じた「新(あらた)」から名前をとって改名したのは有名な話。

ちょっと話がそれましたが、コミックはこんな感じ。かなちゃんが表紙に描かれてる巻です。ちはやふる原作大好きなんで、いくらでも語りたいんですが、話がそれすぎるのでまたの機会に。

デビュー間もなく映画の主演に大抜擢された「舞妓はレディ」

上白石萌音ちゃんは、2011年の第7回『東宝「シンデレラ」オーディション』で妹の萌歌ちゃんと一緒に入賞し、「Shall we ダンス?」の周防正行監督が長年構想を練っていた「舞妓はレディ」の主役にデビューからほんの数年で抜擢されます。すごく注目が集まっていたのを覚えています。

この作品の好演で、第38回日本アカデミー賞 新人俳優賞などいくつかの映画賞を受賞。

その前の2012年に公開の映画「おおかみこどもの雨と雪」にも、雪のクラスメートの声で出演してたんですね!ってリサーチして判明しました。

注目度がグンとアップした「君の名は。」

前述した2016年の「ちはやふる」上の句、下の句シリーズを経て、上白石萌音ちゃんの名前が一気に広まったのは、やはりこちらのアニメ映画「君の名は。」でしょうか。クラスメート役を務めた「おおかみこどもの雨と雪」の新海誠監督の大ヒット作です。

私はすっかり「上白石萌音=かなちゃん」で認識していたので、そうか、かなちゃん、ヒロインの声優を務めるなんて出世したなー、なんて思っておりましたら、映画も大ヒット! 歌手としても大々的に活動を広げて大躍進。

「ちはやふる」上の句の公開が2016年3月、下の句の公開が4月、「君の名は。」が8月。すごい勢いですよね。ふんわりかなちゃん、隣のかなちゃんが、あっという間に手の届かないスターになっちゃった感じ。

東宝シンデレラとはいえ、すごーいめちゃめちゃプッシュされてるーなんて、このころはまだ何となくぼんやり眺めていた覚えがあります。

ほとんど社会現象「恋つづ」での破壊力

「君の名は。」は大ヒットを記録して、映画館でかなりのロングランをしていたし、彼女のドラマや映画を全部観ていたわけではないので、気が付けば「ちはやふるのかなちゃん」ではなく、すっかり「君の名は。の三葉」のイメージが定着。

こちらベストセラー小説の映画化にも姉妹で出演してましたね。

朝ドラ以外の民放の連続ドラマは、子育て中はあまり追えてなくて、娘たちとドラマを楽しめるようになった矢先、登場したのがこのドラマでした。

猪突猛進の看護士、七瀬と、ドSの切れ者医師、天童の恋物語、めちゃめちゃベタなんだけどうっかりハマってしまいました(笑)。(TBSのラブコメのセットやグッズを集めたイベント、キュンフェスにも行ってしまった)

萌音ちゃんは一生懸命で思わず応援したくなるヒロインを好演してました。ヒゲダンの主題歌流れると興奮した日々を思い出す。

快進撃は続くよどこまでも

その後も、ラブコメヒット作枠と呼ばれる、TBS火曜ドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」でもヒロインを好演。

調べたら「恋つづ」と同じスタッフが制作したらしく。普通の子が一生懸命がんばって成長していく、という、正直、似たような役どころだったし、鬼編集長に振り回される女子、ってとこも「プラダを着た悪魔」の日本版にしようとしてる?と実は最初は全然期待してなかったドラマで(汗)。でも観続けてると、意外なところで感動したりキュンとさせられたりして、気が付けばまたもや「一生懸命がんばる萌音」にハマることに。

なんというか…「がんばる普通の女の子」がメチャメチャ似合うんですよ。以前の記事でも書きましたが、上白石萌音ちゃんってものすごく美人というわけではないんだけど、けなげな女の子、がんばる女の子、普通の女の子のハマリ具合が半端ないというか。地味過ぎずキレイ過ぎない絶妙な普通の女の子感。そしてこれが朝ドラのヒロインに繋がるわけです。

昔の朝ドラはど新人のヒロインを見守っていた

上白石萌音ちゃんのように、もう既に、そこそこ知名度のある若手人気女優をヒロインに据えるのは、ここ10年くらいはもう定着してしまっているのですが、今のように朝ドラが盛り上がる前は、割とほぼ新人の女優さんが抜擢されることも多かったんですよね。

「おかえりモネ」で優しいお母さん、亜哉子さんを演じた鈴木京香さんも、ほぼ新人時代に、往年のメロドラマをリメイクした1991年の朝ドラ「君の名は」のヒロインに。ちなみに萌音ちゃんの「君の名は。」が登場する前は、「君の名は」といえば、こっちだったんです! ご存じ?

(朝ドラの「君の名は」DVDやBlu-ray見つからず)

時代が遡りますが、科捜研の女もとい沢口靖子さん、1983年の「澪つくし」ではセリフがかなり棒…いやしんどい感じだったのです。でもめっちゃ観ながら応援してました。1988年の「はね駒(はねこんま)」の斉藤由貴さん、「純ちゃんの応援歌」の山口智子さんは新人にしては結構うまいなと、10代20代の若造の私は偉そうに観ながらあれこれ言っていました。ほぼ新人の竹内結子さんも「あすか」で女優へのステップを踏んだ印象です。

並べてみると懐かしい! 上記にも書きましたが、昔は新人がかなりがんばってもセリフが棒読みだったり、演技が未熟で観ているこちらが、ドキドキするようなドラマも多かったのです。でもなんか朝ドラってそういう、一生懸命頑張ってる女の子を応援するような空気があったのです。

ちょっと視聴率が下がってしまってヒロインや脚本などにテコ入れをし始めた印象がある時期があって、そこそこ知名度のある女優さんを使うようになって今がある、という歴史をちょっと知ってほしかった。

今みたいにTwitterやネットで盛り上がってるのも、昔からの朝ドラファンとしては嬉しいのですが、やれあっちのドラマはなってない、このキャラクターは、という声を聞くと、何言ってるんだよ朝ドラってのはさー、昔に比べたら格段に質は上がってるのよ!と思わずマウント取りたくなってしまうわけなんですよ。楽しめばいいじゃん! 観たくないなら観なけりゃいいじゃん! 前作下げて今のドラマ上げなくてもいいじゃん!って。すいません。どのドラマも愛しい朝ドラなのでね。

*****

つらつらと書いていたら、女優論というより、上白石萌音ちゃんの軌跡をたどりつつ、昔の朝ドラ回顧になってしまいました。

無理やり結論。

朝ドラヒロインには一生懸命なヒロインが似合う。
でもってカムカムの上白石萌音ちゃんは
そんな朝ドラのヒロインにぴったり。


ってことです。すごい話の巻き戻し感。

追記(11/12):顔の造形、雰囲気、あのふんわり感と安心感。そう、上白石萌音ちゃんを観ていると、どこか遠い次元の話ではなく、自分の近くにある話として感じられる。「ちはやふる」のかなちゃんで感じた、身近な友達感を残しつつ、どんな話のヒロインにもスッとハマってしまう。圧倒的な存在感とは真逆の、物語の世界観にふわっと馴染む空気のような存在。そんなことを朝ドラ観ながら思いました。

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さて、引き続き明日も来週も朝ドラを楽しみましょう。
今回も長文におつきあいいただき、ありがとうございました。
(軽く書こうと思ったのに3000文字超!)

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