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定番だけど新しい。英語が彩る恋物語に心洗われる「カムカムエブリバディ」

大好きな朝ドラが終わると、また次の朝ドラへ。余韻を残しつつ次のドラマへバトンタッチ。半年夢中になって観てきた物語が最終回を迎え、寂しさや余韻に浸る間もなく次の週の月曜日には、新しい物語が始まる。何十年も繰り返してきた恒例行事です。

朝ドラのテイストが自分に合わないと、今回は観ない、という方もいらっしゃるようですが、私はすべての朝ドラが好きなので、毎回、何十年もこの恒例行事を繰り返して余韻を引きずりつつ、次の物語への期待を膨らませてワクワクしながら新しい朝ドラの第1週を迎えます。

そんなこんなで始まった2021年後期の「カムカムエブリバディ」。

英語が奏でる小さな恋の物語

3世代のヒロインたちが紡ぐ100年のファミリーストーリー

昭和から平成、そして令和へ
。三世代のヒロインたちは、その時代時代の試練にぶちあたり、ときに、世間や流行から取り残されながらも、恋に、仕事に、結婚に、不器用ながらも自分らしい生き方を見いだしていく。そして、3人の傍らには、いつもラジオ英語講座があった。(公式サイトより)

物語の始まりは昭和30年代。ラジオとの出会い。英語との出会い。今のようにモノがあふれている時代ではないからこそ、新しい世界との出会いとトキメキは、今より豊かだったのではないかなと思う。

14歳に見える!奇跡の上白石萌音

ヒロイン、安子ちゃんと稔さんの淡い恋に朝から心洗われっぱなし! 上白石萌音ちゃん14歳にちゃんと見えちゃうのがすごい。23歳なのに。

安子には、これといって夢と呼べるものはありません。安子はただ、大好きな街で、大好きな人たちと暮らす日々が、いつまでも続けばいいと思っていました。

イマドキだとつい夢を持たねばいけないような空気になってしまうけど、ただただ今の生活に幸せを感じることができて、穏やかに過ごせる、ただそれだけで素敵なことなんですよね。

失礼を承知で言うと、上白石萌音ちゃんって「絶世の美女」とはちょっとタイプが違って、かわいいのだけど隣の女の子感が強い。だからこそこういう素朴な役柄が似合う。清楚な花柄ワンピースもすごく似合ってて、彼女のことを応援したくなってしまう。応援したくなる感って朝ドラヒロインにはとっても大事。

時代ものの朝ドラあるあるの恋のすれちがい、幼なじみのやきもち、なども朝からきゅんきゅんしながら観ています。

昭和感が素晴らしい令和のアイドル松村北斗くん

安子ちゃんの憧れのひと、稔さんを演じるのは松村北斗くん。SixTONES(ストーンズ)という、2020年のデビュー時から絶大な人気を誇るジャニーズのグループのメンバーということはご存じでしょうか。

我が家は娘が嵐、Snow Manのファンで、私自身も80年代からのゆるいジャニーズウォッチャーなので、もちろん知っていましたし「お、次の朝ドラにはSixTONES(ストーンズ)の松村北斗くんがヒロインの相手役ね」と、認識はしていたのですが、朝ドラで彼に出会う方も多いんですよねきっと。全作「おかえりモネ」でもりょーちん永瀬廉くんがキンプリのメンバーでキラキラのアイドルだということを知らなかった、という方が意外と多くてびっくりしました。朝ドラとジャニーズはファン層がちょっと違うんですね。

その松村北斗くんの昭和感、昭和の学生感がめちゃめちゃいい! ザ・塩顔と言ってもいい、誠実さを醸し出す安心感。(以前別のドラマではこの塩顔を逆手にとって怪しい役もやっててそれもすごくハマってた) 安子ちゃんへの声掛けも優しくて、英語も流暢で素敵です。

安子ちゃんとの恋、応援したい。でもこの時代だし、跡取り同士だし、この後切ない展開が待っているんだろうなと思うと切ない。それでも。今はこのトキメキを味わっていたい。そんな第1週でした。

ひたひたと近づく戦争の足音が切ない

3世代のヒロインの物語、ということで子役も2日のみ、1週目から穏やかな日々の中に戦争の影がチラホラと見え始めていました。ラジオから聞こえる戦争のニュース。パーマネントの禁止。そのうち英語も野球も和菓子もオシャレなジャズ喫茶もどんどんと町から消えていってしまうのでしょう。

ディッパ―マウスブルース。この喫茶店の名前も、戦争の足音が大きくなると日本語の名前に変えなければならなくなるのかな。少しずつ感じる戦争の時代を想像すると胸がギュッとします。

戦争に向かう描写をいくつもの朝ドラで観てきました。近年でいえば「エール」「まんぷく」「わろてんか」「べっぴんさん」「とと姉ちゃん」「マッサン」「花子とアン」「ごちそうさん」……。教科書ではわからない、時代の空気が立体的に感じられるのは朝ドラのおかげです。少なくとも私は。

割と早いうちにしんどい戦時中の庶民の姿が描かれるのだと思いますが、安子と稔さん、どんな運命をたどるのでしょうね。

第一週で心に響いた名言

和菓子職人に身が入らず、ダンサーになるといって家を出た安子のお兄ちゃん算太。(演じる濱田岳さんは「わろてんか」でヒロインを見守る幼馴染、風太をいい味だしてました。今回の勇ちゃん的な)

あずきの声を聞け。何をすればいいか、あずきが教えてくれる。食べる人の幸せそうな顔を思いだして作れば、美味しくなってくれる。

これは和菓子職人である、安子と算太のお父さんがあんこを作るときに職人さんに伝えた言葉ですが、和菓子づくるだけではなく、ものづくりにも通じる言葉だと思いました。

手にしてくれた人の顔を思い浮かべて、
心をこめて作れば、いいものができる。。

でも全然家業に興味を持てないお兄ちゃんを見て、安子が言います。

お菓子には作った人の気持ちが乗り移る。
でもお兄ちゃんは作るときに楽しそうじゃない。

心がのらないことを無理にやらない。自分の心に正直に。今回のドラマのメッセージのひとつかな、と思いましたが、そのうちに好きなことに打ち込める時代ではなくなってしまうんですよね。

定番の安心感と新しい試みにワクワク

半年の中で3世代のヒロインが登場する、というスタイルはとても新しいけれど、カワイイ子役時代から始まって、移り変わる時代の中で女性の生き方を描いて行く、というスタイルは正統派の朝ドラだと思います。たぶんはじめての方でも見やすいかと。

脚本は2007年の朝ドラ「ちりとてちん」、2012年の大河ドラマ「平清盛」2016年のNHKドラマ「ちかえもん」の藤本有紀さん。落語を題材にした「ちりとてちん」はファンも多い作品だし、近松門左衛門が主人公の「ちかえもん」は機会があったらぜひたくさんの人に観てもらいたい名作!

「ちかえもん」たまたま藤本脚本だとは知らずに見始めたら、初回からめちゃめちゃ面白くて、娘たちとお腹抱えて笑って毎週楽しんでいたんです。この作品で藤本さんは第34回向田邦子賞を受賞。時代劇の脚本として初となる同賞受賞とのこと。笑えて泣ける物語がきちんと描ける方。

信頼感のある脚本家の3世代にわたる100年の物語。期待しちゃいます。

朝ドラ小ネタその他いろいろ

ヒロイン安子ちゃんが初めて聞いたラジオ英会話講座で、キュリオをきゅうりと聞き間違えるシーンが可愛かった。昔、シルク・ドゥ・ソレイユの「キュリオス」を観に行ったことがあって、そのときに「キュリオス」は「好奇心」という意味だと知ったのですが、骨とう品という意味もあったのですね。朝からきゅんきゅんしながら英語の勉強もできるなんて一石二鳥!

城田優さんのナレーションも流暢で心地よい。

その他に第1週で思い浮かべた朝ドラネタ。

★JOKA東京放送局といえば「花子とアン」
最初にラジオから流れる音声「JOAK こちらは東京放送局であります」を聞くと、2014年の朝ドラ「花子とアン」花子(吉高由里子)の息子、あゆむくん。ラジオが大好きで、兄やん(賀来賢人)が作ってくれたお気に入りのラジオを手に「じぇーおーえーけー こちらはとうきょうほうそうきょくであります」とかわいらしい声でしゃべっていました。幼くして旅立ってしまったあゆむくんと花子の慟哭を思い出して涙。

ラジオのおばさんとして有名だった花子の「ごきげんよう」が聞けたりしないのかな。なんて期待を。ちなみに荒物屋あかにしのご主人役の堀部圭亮さんは「花子とアン」で花子に厳しく指導する真面目なアナウンサー役でした。朝ドラが繋がる繋がる~。

★パーマネントといえば「あぐり」
「なぜ戦争になるとパーマネントが禁止になるのか、安子にはよくわかりませんでした」というセリフで思いだしたのは1997年の朝ドラ「あぐり」。ヒロインあぐりの美容院でもパーマネントが禁止になり、建物疎開と称して美容院が壊されていました。今思うとひどい話ですが当時は女性がオシャレなんてとんでもない、という時代だったんですね…。

ちなみに「花子とアン」は鈴木亮平さん、「あぐり」は野村萬斎さん、それぞれヒロインの相手役の役者さんの魅力に気が付いた作品でもありました。

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朝ドラ鑑賞を重ねるごとに、知らなかった時代の空気感、人の息遣いが感じられるようになっていく。この感覚が嬉しい楽しい大好きなドリカム状態の朝ドラ脳。

これから半年、楽しんで朝ドラライフを送りたいと思います。


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