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サトシ・ナカモトって誰なのか?どんな論文を書いたの?(後編)

はじめに

Project LUCKと書く人

Project LUCKメンバーの大橋です!Project LUCKというのは、株式会社マーキュリー(代表取締役:都木聡)の中で立ち上げたプロジェクトです。そのコアメンバーが日々、自分たちが学んだことや読者の皆さんとコミュニケーションをとりたいと思い、さまざまな記事を書いています。

今回のテーマ

サトシ・ナカモトって誰なのか?どんな論文を書いたの?」という記事の後編です。後編ではサトシ・ナカモトの論文について第7章以降をざっくりご説明していきます。前編はこちら。


サトシ・ナカモトの論文とは

前編ではタイムスタンプ技術やプルーフ・オブ・ワークについてご説明しましたね。(第7章以降はどちらかというと補足的な内容が多いため、気になる章だけ読むのもありだと思います!)
では、さっそく第7章以降をご説明していきます。


第7章 ディスク容量の確保(Reclaiming Disk Space)
ー 端末の空き容量を確保するために ー

すべての取引データを保持しようとすると、ブロックが増えていくほどデータも増えてしまうので、ノードが平均的な容量しかないPCを使用していた場合、空き容量が足りなくなってしまう可能性があります。

そこで、容量が足りない場合、ある程度古い取引データを削除することも可能であると述べています。

スマホと一緒でデータが増えいくと空き容量はどんどん減っていきますが、定期的にデータを整理すればまだ使用できるということですね。


第8章 簡易的な支払検証(Simplified Payment Verification)
ー サーバーのデータを削除しても支払検証は可能なのか ー

この章では、第7章で述べたように古い取引データを削除したノードでも、簡易的な支払検証は可能であると述べています。

簡易的な支払検証は、すべてのデータを保持している他のノード(一般的にはフルノードと呼ばれています)が持っているデータを利用することで可能になります。

しかしながら、フルノードによる支払検証と違い、簡易的な支払検証となるため、ネットワークが攻撃者に乗っ取られた場合は攻撃者が作成した偽の取引データに騙されてしまう可能性等もあります。

そのため、結局は安全性と素早い支払検証を求めるなら、自らフルノードを運営する方が良いだろうと述べています。


第9章 価値の結合及び分割(Combining and Splitting Value)
ー 一つの取引にかかるインプットデータとアウトプットデータ ー

1円ずつ誰に送る等の取引を行うのは面倒ですよね。
そこで、この章では1,000円や500円等、必要に応じて価値を結合または分割して送るためには一つの取引に対して複数のデータを入力または出力する必要があると説明しています。

インプットデータ
・大きなトランザクションからの1データ
・少額のトランザクションからの複数のデータ
アウトプットデータ
・最大2データ
(受取人への支払データ & 送金人の釣り銭に係るデータ)

ひとつの取引にはインプットデータ(だれにいくらもらったかという情報)とアウトプットデータ(誰にいくらあげるかという情報)がありますが、インプットとアウトプットデータには上記のようなパターンが考えられると述べています。


第10章 プライバシー(Privacy)
ー 取引を公開しても、プライバシーを守ることはできるのか ー

彼が提案したモデルだと、取引データを全ての人に公開する必要があります。そこでどのように個人のプライバシーを守るかという点についてこの章で述べています。

取引データを公開する必要があるため、どのアドレスにいくら送金したか等の取引データは誰でも確認することができます。しかしながら、公開鍵と具体的な特定の個人を紐づける情報はないため、公開鍵の匿名性を保つことでプライバシーを守ることができるとしています。

さらに、念のため、各取引毎に新しい鍵を用意するべきであると述べています。これは同じ鍵(仮に鍵Aとします)を使用していると、いくつかの取引をした場合、すべて鍵Aを所持している人の取引だとわかってしまうためです。

しかしながら、たとえ取引毎に新しい鍵を使用したとしても、取引のインプットデータにより鍵Aを所持している人の取引だとわかってしまう可能性は残るため、鍵の所有者が明らかになってしまった場合、関連する取引データがばれてしまうリスクはあるとしています。


第11章 計算(Calculations)
ー サイバー攻撃に耐えられるのか ー

この章では仮定をおいてサイバー攻撃が成功する確率について計算しています。
仮定に基づき計算をすると、ブロックが増えるほど攻撃の成功確率は下がると結論付けています。


第12章 結論(Conclusion)
ー 信用に頼らない取引システム ー

本論文では、信用に頼らない電子取引システムについて提案してきました。

既存の電子署名技術により所有権はコントロールできますが、二重使用を防ぐ方法がなければ不十分です。
そこで、二重使用を防ぐために、プルーフ・オブ・ワークを使用して取引履歴を公開・記録するネットワークを提案しました。

不正をしない誠実なノードがネットワークの大部分を占めている場合、攻撃者がデータを書き換えることはブロックが増えていくとほぼ不可能となります。
また、ネットワークの構造は単純であるが故にしっかりしています。

ネットワークの特徴
・複数のノードが同時に動作する
・データがすべてのノードに送信されなくても問題ない
・ノードは自由にネットワークから離れたり、再参加することができる
・ブロックが有効であれば次のブロックを作成することで承認を表明するという合意方法


まとめ

彼の提案したシステムでは、電子署名とタイムスタンプ技術を応用することにより、インターネット上でも金融機関等の第三者を通さず、個人同士で直接取引が可能となると説明していましたね。
以下に重要なポイントのみまとめました。

ビットコインのブロックチェーンとは…
・金融機関等の第三者を通さずに取引できるため信用に基づく取引ではない
・既存の電子署名技術とタイムスタンプ技術を応用したもの
・取引を一般に公開しているため、誰でもその取引が正しいか検証できる
・ネットワークが攻撃者に乗っ取られない限り、データの改ざんは困難
・ネットワークは複数のノードが同時に動作するため、障害が起こりづらい
・公開鍵の匿名性を保てば、ある程度プライバシーを守ることは可能だが、リスクは残る

ブロックチェーンと聞くとまだ新しい技術というイメージがありますが、実際は15年以上も前に考えられたシステムなんて驚きですよね。

論文ではブロックチェーンについて説明されていない点も多いので、その点については今後書いていければと思います。

また、ハンガリーの首都ブダペストにはサトシ・ナカモトの像も建てられているらしいです。
旅行等で近くに行く機会があれば、訪れてみても面白いかもしれませんね。

参考文献

1.  Satoshi Nakamoto 「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」
https://bitcoin.org/bitcoin.pdf

2.オブジェクトの広場「ビットコイン論文からさぐるブロックチェーンのヒント」
https://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/technical/bitcoinpaper/part1.html

3.Statue of Satoshi ー Budapest, Hungary ー 
https://www.statueofsatoshi.com/


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