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「静かな退職」希望者へ!!社内ニート完全マニュアル!!

 最近のトレンドとして「静かな退職」というものがある。近年世界中で仕事への熱意を無くし、適当な仕事で済ませる人間が多いらしい。少なくとも日本においては何年も経済が伸びていないし、将来の希望もない。頑張って出世したところで中間管理職になって消耗するだけだ。つまらない仕事なんかに人生を潰されるよりも、仕事は最低限であとはプライベートに時間を注ぎ込みたい、という認識のZ世代が急増しているようだ。

 現時点での社会経済上の情勢を考えると、こうした人間が増えるのは仕方がないことだ。コロナ・パンデミックで「静かな退職」は一気に加速した。今回はそんな社内ニート希望者のために、社内ニートとして人生を生き抜く術を教示したいと思う。

同僚と関わるな!!

 会社のストレスのナンバーワンは人間関係だ。仕事そのもののストレスや、残業時間の負担を遥かに上回るときもある。関係が良かったとしても、嫌われることを恐れて消耗してしまう人がいる。同僚とは社内ニートを目指す上で最大の障害であり、ここを乗り越えられるかによって「静かな退職」の成功が決まる。

 会社の同僚は友達ではない。これは非常に大切な事実である。あなたが小学校から大学まで関わっていた人間とはわけが違う相手と考えた方がいい。職場の同僚とはあくまでビジネス上の繋がりであり、友達とは違う。相手が自分に関わるのは利益があるからだ。現役時代はヘコヘコしていた部下が役職定年した途端そっぽ向くというのはサラリーマンの常道だ。部下はあなたの役職に従っているのであって、あなたに従っているわけではない。

 SNSを絶つとストレスがウソのように解消するという話がある。同様に同僚との関係もできる限り断ち切ろう。職場の同僚はあなたの家族や友人と比べるとはるかに価値が低い。同僚との会話と友人との会話、あなたはどちらが楽しいだろうか?私に関しては少なくとも圧倒的に友人である。どうでもいい人間関係のために苦しむことなど、あってはならない。

 なお、同僚との関係が無くなったとしても恨んではいけない。あなたの快適な社内ニート人生を支えているのは彼らの働きなのだ。好きの反対は無関心という。眼の前の同僚は近所のコンビニの店員と同列の存在と割り切りつつ、心のなかでそっと感謝しよう。

プロ意識を持て!!

 社内ニートは楽ではない。成功する人よりも挫折する人の方が多い。何事も、一人前になるには苦労が必要だ。リスクだってある。そうした苦労を乗り越えるのが真の勝ち組なのだ。辛くなったとしても、ここは踏ん張る所である。

 社内ニートにとっての試練は自分の存在意義を考えてしまうことだ。あなたが社内ニートを続ける理由は何か?それはお金を稼ぐことだ。それ以上でも、それ以下でもない。ネットで検索してみればいい。好きで働いている人間がどれほどいるだろうか。世間の有名人が生き生きとしているのは生存バイアスだ。多くの被用者は生活のために毎日苦役を我慢しているのである。

 あなたも同様に社内ニートとして苦しんでいるかもしれない。それは他の被用者も同じだ。あなたはお金を稼ぐために苦労をしているのだ。変な集団思考を捨て、個人としての生き方を考えよう。普通の人と変わらないではないか。

自分が「搾取する側」であることを自覚しろ!!

 罪悪感と優越感を持つことは社内ニートにとって大事である。ここでいう罪悪感とは一般的な罪悪感ではなく、自分が恵まれているという罪悪感だ。そしてこの感情は優越感と表裏一体である。中世の貴族は農奴の苦労の上に栄耀栄華をほしいままにしていた。現在でも大企業は非正規の労働者の賃金を抑え、正社員の賃金に回している。立派な搾取の構造だ。

 社内ニートは会社を搾取する側の存在だ。会社や同僚はあなたを支えるために存在し、あなたは彼らから搾取をしている。社会保険を考えれば国家だって同じだろう。人間が動植物を搾取して豊かな暮らしをし、その人間の中でも企業が非正規の労働者を搾取している。そしてあなたはその企業から搾取をしている。あなたは地球という星の搾取非搾取の関係の頂点にいる、霊長なのだ。

 社内ニートの強みは会社の外で発揮される。あなたは会社の内部では鼻つまみ者かもしれないが、社外の人間から見れば立派な勤め人である。社会的信用は非常に厚い。あなたがサボってようと、合コンで出会う女の子やローンの審査担当者にとってはどうでもいい話だ。

出社時間を無駄と思うな!!

 しばしば「会社にいる時間が苦痛」と考える人がいる。たしかにそうかも知れない。社内ニートとして会社で時間を潰すのは人生の無駄と感じるだろう。

 しかし、そうしたマイナス思考は考えものだ。見方によってはこの出社時間は非常に大切である。まず一日8時間出勤するのは健康にいい。通勤は運動にもなるし、睡眠リズムの乱れも整えられる。睡眠不足の原因の1つは「明日会社で失敗するかも」という不安だが、社内ニートの皆さんは大した責任のある業務は任されていないだろうから、気楽である。会社への出勤は健康のためのジムだと考えよう。

 何もすることがなく、ぼんやりする時間であっても重要だ。世間の人間がどう動いているか観察することは大事だ。退職した途端に老け込む人間が多いのは、社会と接する機会がなくなって、社会性が無くなるからだ。社内ニートであっても身だしなみなど最低限の社会性は身につくので、世間との「ズレ」を調整するいい機会になる。

遅刻・無断欠勤は絶対に、絶対にするな!!

 遅刻や無断欠勤は社会人であれば絶対にしてはいけないことだ。社内ニートは通常の社員以上にこの点は気をつける必要がある。

 遅刻や無断欠勤は絶対的な指標であり、単に仕事をしてないのとは異なり、クビにする口実になる。社内ニートは絶対に規定に触れることはしてはいけない。会社を搾取する側に回るという大変な恩恵に預かっているのだから、出退勤くらいはちゃんとしよう。ノーブレス・オブリージュである。

 どうしても眠い時は会社に行ってから寝よう。どうしても会社に足が向かない時もあるかもしれないが、ここは踏ん張りどころだ。どうせ大した業務はないのだから、気楽に行こうではないか。休みたい時は上司に連絡だ。この勇気があるかどうかは社内ニートと落伍者の明暗を分ける1つの試金石である。

会社に感謝しろ!!

 これは社内ニート志望者の皆さんが肝に銘じるべき基本原則だ。まず日本の正社員というのは非常に恵まれた立場にある。不祥事を起こさない代わりにめったにクビになることはない。給料も多少の差はあったとしても、横並びだ。会社というものは究極の福祉国家なのだ。日本は頭打ちになっている代わりにぬるま湯のように心地よい国である。

 この国で最も恵まれている人間は恐らく金融・保険・不動産といった業界の社内ニートだ。大した能力はなくてもそこそこの給料と社会的地位が保証される。雇用保険だってある。現代の特権階級だと思う。ここに入れなかった非正規雇用の人間が、いかに悲惨な思いをしているか考えるべきだ。

 人の恨み言は人間を腐らせる。日頃から会社の悪口ばかり言っているサラリーマンを見て、いい気持ちになるだろうか?どうせ会社にいるのなら、嫌いになるよりも好きになったほうが精神的に幸福感が高い。社内ニートを目指すなら、まずはあなたの生活を支えてくれる会社に絶大な感謝をしよう。こうすれば自然と気持ちも明るくなるというものだ。

不機嫌な表情でため息をつけ!

 社内ニートで重要なのは仕事を極力減らすことである。世の中の7割の人間は人に嫌われるのを恐れている。不機嫌な人間は怖いので関わりたくないと考えるはずだ。

 社内ニートを追求するのなら、なるべく眉間にシワを寄せて苦しそうな顔をしよう。ため息を付くのもオススメだ。こうした相手には人間は自然と仕事を振らなくなるし、注意する気も失せてくる。それこそが大きなチャンスである。

 また、この擬態にはもう1つの効果がある。それはあなたの悲壮感を増大させることだ。もし仕事をサボっている社員が楽しそうな表情をしていたら、同僚はどう思うだろうか。きっと腹が立つに違いない。自分とあなたを比べ、嫉妬するはずだ。これは非常にまずい状況だ。

 あなたは社内ニートという特権を手にしている。他の人間が特権を求めてきたり、不平分子が抗議行動を行ったら、貴族は豊かな暮らしを失ってしまう。同様にあなたも周囲の反感には気を付けるべきだ。そのためにはノーブレス・オブリージュが必要だ。「社内ニートだって実は苦労しているんだぞ」と大げさにアピールすることによってあなたの特権を支える同僚たちの気を慰めるのである。

「可哀想な人」と思われろ!!

 社内ニートはなるべく「可哀想な人」と思われるように振る舞った方がいい。世の中の8割の人間は弱者を叩くことに罪悪感を覚えるからだ。多くの社会人、特に男性にとっては屈辱的に思えるかもしれないが、これは社内ニートには必要なスキルだ。

 モンスター上司に当たった時もこのスキルは生きる。女の涙には勝てないというが、今はジェンダーレスの時代だ。上司の前でやばそうだと思ったら泣こう。こうすれば普通の上司であれば嫌な予感がしてあなたに関わろうと思わないはずだ。弱そうな相手に強く出るサイコ的な人間もいるが、管理職の立場だと少ないのではないか。少なくとも変に強がって挑発するよりも素直に泣いて許しを請うた方がいい。

 働き蜂の法則によればどんな集団も下位2割は無能である。だから、あなたの存在が部署の生産性を下げているわけではない。それどころか他の社員のやる気を上げているのだ。「あの人みたいにはなりたくない」とか「あの人のお陰でビリにはならない」という心理が働き、他の社員は気持ち良く働くことができる。そしてその成果の一部はあなたに還元されている。

 ここで重要なのは善人であると思われることである。あらゆる社会では弱者には善良であることが求められる。マッチ売りの少女がいい例だ。善良な弱者には多くの人が同情してくれる。しかし、一度悪行を犯せば全く反応は違ってくるだろう。乙武さんは不倫報道の後、多くの人に叩かれるようになった。社内ニートという危ない橋を渡っているあなたはくれぐれも敵対者に口実を与える機会を作ってはならない。常に社内ニートは紳士であれ、ということだ。

寝不足で出勤しろ!!

 あなたの人生にとって大切なのは会社にいる時間だろうか?いや、違うだろう。あなたの人生の目的は私生活であり、その私生活を支えるのは会社である。したがって、貴重な時間とエネルギーは少しでも私生活に残しておくべきだ。

 一日は24時間しかなく、会社・余暇・睡眠の3つによって分けられる。会社の時間は決められているので、私生活を伸ばすには睡眠を削るしかない。

 寝不足で出勤することにはメリットがある。思考回路が鈍るので、時間が短く感じられるのだ。そして核となるのは居眠りである。

 社内ニートが是非身につけておいた方が良いスキルは「トイレで寝るスキル」だ。トイレの形状によっても異なるが、色々と工夫しよう。不足した睡眠をトイレの時間で解消させることができれば、あなたの私生活は延長できる。もちろん休み時間に寝ても良い。

 この方法の重大な副作用は精神面だ。寝不足は鬱傾向に拍車を掛ける。もし精神が動揺しているのなら、睡眠時間はなるべく増やしてほしい。

トイレは第二の家だと思え!!

 基本的に会社という場所は常に周囲の監視下にあると思っていい。同僚は常に周囲に目を光らせている。360度見回すと目・目・目である。こうした無数の視線によって会社員は相互に監視し合っている。

 この監視から逃れられる場所はトイレだ。トイレの個室は職場で唯一の楽園だ。トイレの個室ではあなたは本当の自分でいられる。この「避難所」を活用しない手はない。なるべく家で大便をせず、職場で大便をするように心がけよう。給料をもらって大便をするなんてなんて素晴らしいことだろうか!!

 トイレタイムで困難となるのは排便音と臭気である。これは早めに慣れておきたい項目だ。世の中には認知症老人の大便を拭いている人だっているのだ。大便の匂いに慣れることは育児や介護にも役立つ。無駄なことはないと自覚し、トイレタイムを生き抜こう。

 もちろん他の場所を探しても良い。喫煙所や仮眠所、外回り営業なども機構な避難所となるだろう。ここではあなたは思う存分羽を広げる事ができる。一日のうち、休み時間を除いても1時間から2時間くらい避難時間を確保できればベストである。

テレワークを活用しろ!!

 最近はテレワークが当たり前になってきた。これを活用しない手はない。テレワークは社内ニートの天啓だ。ただし、諸刃の剣にもなりうるので中が必要である。

 テレワークは頻繁に電話がかかってくるし、一日の終わりに日報を欠かされることが多い。こうなると、完全にサボるわけには行かなくなる。

 オススメはテレワークの日のために計画的に雑用を確保しておくことだ。こうすれば日報に書く内容も予め確保しやすい。上司はあなたの他にも取り組まなければいけない仕事が沢山あるので、多少誤魔化したところで大丈夫だろう。

 テレワーク中は普段家にいるのと違って集中できないという人も多いかもしれない。その場合にオススメなのは睡眠に当てることだ。テレワーク中の不安も寝てしまえば解決だ。例えば9時に出勤のメールを送り、12時まで雑用を行った後、休みを取り、そのまま4時まで寝てしまうというのも良い。こうすれば不安な時間を起きていずに済むだろう。

フレックスも活用しろ!!

 フレックスは一見社内ニートには関係ないように見えるが、活用の余地は大いにある。

 普通の会社は残業が常態化していることが多い。5時が定時であっても、一般職を除いて第一陣が帰り始めるのは6時とか7時であることが多い。こうなると、社内ニートは5時ピッタリに帰ることが難しくなってしまう。

 フレックスはこの問題を解決する。例えば始業を11時にすれば、8時間勤務しても帰るのは7時だ。結構残業しているように見えるのではないか?フレックスとテレワークが普及したことで、こうした帰宅時間の同調圧力は軽減している。社内ニートには生きやすい時代である。

ネットサーフィンで時間を潰せ!!

 社内ニートにとって最も大事な時間つぶしはネットサーフィンだ。これは奇跡の発明といえる。ネットがあれば無限に時間を潰せる人は多いだろう。社内ニートにとっての中核といえる活動である。

 問題はネット制限だ。ネットに関してはブロックされている会社が多いだろう。You TubeやSNSといったサイトは閲覧が難しい。したがって主に閲覧するのはニュースサイトとウィキペディアだ。この二つを中心に社内ニートライフを完成させよう。芸能関係のブログは止めた方がいい。レイアウトがカラフルであり、背後から覗かれた時に発覚のリスクが上がるからだ。ニュースサイトやウィキペディアは背景が白なので、比較的後ろから見えにくい。

教養をつけろ!!

 社内ニートの生活において教養は不可欠だ。普通のサラリーマンと比べても重要と考えて良い。

 ネットサーフィンでウィキペディアを読む機会は多いはずだ。ウィキペディアはそれなりに教養に明るくないと十分に楽しめないだろう。ニュースサイトも同じだ。したがって、あなたは社内ニートの知的世界に十分な教養を身につけるべきだ。日頃からニュース解説などを読んで時事に強くなろう。もちろんこうした自己研鑽を行うのは勤務時間内に確保するべきだ。

 余裕があれば、英語学習を進めよう。英語のサイトは背後から覗かれても内容が把握されにくいからである。英字新聞の多くは電子化されており、しかも大半の会社で閲覧可能だ。英字新聞は英語力が涵養されるし、日本語に比べて読むのに時間がかかるので、時間を潰しやすい。

 もちろん英語に留まる必要はない。フランス語や中国語といった第二外国語に手を出すのも良い心がけだろう。習ったばかりの語学を会社で活かすのは気持ちがいい。眼の前の閉塞感もいつしか晴れやかになっていくはずだ。

 かなり上級者向けになるが、一番充実するのは数学や物理だ。この手のサイトは異常にクオリティが高く、読み尽くす心配はない。仮にスラスラ読める人間なら最初からサラリーマンにはなっていない。私立大学のPDFを漁って高等数学の講義ノートを読み、頭を捻りながら就業時間を待とう。

 世の中には仕事よりも面白くてワクワクしていることに満ち溢れている。決して仕事のことは嫌いでも、世界のことは嫌いにならないでほしい。

雑用を嫌がるな!!

 社内ニートはしばしば雑用を頼まれることがある。こうした雑用を屈辱と捉えるのではなく、楽しめるくらいの意気込みで臨もう社内ニートはとにかく暇であり、時間の経過を長く感じてしまう。これは場合によっては苦痛になりうる。軽作業は集中力も高まるし、時間の経過を早くしてくれる。「なんでこんな作業を・・・」ではなく、「自分だけこんな楽な作業で給料がもらえるなんてラッキー」と捉えよう。

イベントには参加するな!!

 会社に付き物なのがイベントだ。特に多いのは飲み会である。昭和の会社では飲みニケーションが恒常化していた。

 こうしたイベントはなるべく社内ニートは参加しない方がいい。同僚との関係を断ち切っているからだ。繋がりが深くなれば尚更問題は深くなるだろう。会社の飲み会は給料がマイナスの労働だ。飲み屋の単価は高いし、話は面白くない。そんなものに金と時間を費やすなら家に帰ったほうがマシだ。

 いくら飲みニケーションをしたところで同僚は同僚だ。あなたの友達ではない。学生時代のような楽しい関係は二度と戻らないと考えよう。意味不明な礼儀作法と上司のつまらない説教を聞かされるくらいなら、子供と一緒にテレビを見て笑っていたほうが生産的だ。

友人を大切にしろ!!

 会社の同僚に大した価値がないということは先程述べた。あなたにとって真に大切な相手は友人だ。これらの重要性はいくら説明してもしきれない。これらは人生の手段ではなく目的と考えるべきだ。

 ハーバード大学の研究によると、人間の幸福度にとって重要なのは学歴や年収ではなく、「人との繋がり」であるそうだ。体験に照らしても事実だ。例えば「青春を楽しむ高校生」を思い浮かべてほしい。それはクラスで浮いているが成績1位の高校生だろうか?成績は下の方でも部活に打ち込み、友人とカラオケに行き、彼女と渋谷でデートをする高校生のはずだ。やっぱり大事なのは人なのである。

 残念ながらこうした幸福は大人になると失われる。社会人になるとどんどん人間は孤独になっていくからだ。一番ありがちなパターンは同僚を友達と勘違いすることだ。残念ながら同僚は友達ではないし、退職したら切れてしまう。それよりも昔の友人の方を優先しよう。老人になっても小学校や中学校の友人と付き合いがあるという人間は多い。同窓会をやってもいい。地域のコミュニティに参加してもいい。人間との繋がりという点では会社よりも学校の方が遥かに価値が大きい。なお、職業上の肩書でマウントを取ってくる友人とは縁を切ろう。彼らはあなたが選ばなかった地獄への道を突っ走る犠牲者だからである。

家族を大切にしろ!!

 家族はさらに大切だ。仕事が忙しくて親の死に目に会えないなんてことがあってはいけない。舞台役者は親の死に目に会えない職業と言われるが、あなたは幸いにしてサラリーマンだ。あなたの代わりはいくらでもいる。これを嘆くのではなく、逆に利用しよう。

 会社はあなたがいなくても回るが、家族は違う。子供にとって親はあなただけだ。どちらを優先すべきかは明らかだろう。家族は人生の宝だ。仮にあなたの命が付きたとしても、あなたの生きた痕跡は地球上に残り続ける。子供のために生きる人生は素晴らしいものと考えるべきだ。そしてその家庭生活を支えてくれるのが会社なのである。

 やりたいことがあって働いている人は別だが、サラリーマンの多くは仕事内容に興味がない。それにもかかわらず、家族を犠牲にするような働き方が蔓延していた時期があった。こうした本末転倒の生き方は是正されるべきだ。やっと苦しい仕事から解放されて60歳になった時に、熟年離婚や子供から見放される事態は避けたい。あなたは社会での居場所を失い、孤独な老人として消え去っていくだろう。配偶者や子供に社会的な見栄を押し付けることはあってはならない。こうして結びつきは不安定であり、真の居場所になりにくい。そうした結びつきが欲しいのなら職場の同僚に求めるべきだ。

 もしかしたらLGBTの人もいるかもしれない。こうした人々も例外ではない。むしろマイノリティ故のコミュニティの団結がある可能性もある。こうした繋がりは非常に大切であり、ぜひ継続させたいものだ。

趣味を持て!! 

 人間に必要なのはライフワークである。経営者や芸術家であれば仕事に打ち込むことがライフワークだが、あなたは被用者である。なかなか仕事をライフワークにはできないだろう。ここを勘違いすると役職定年と同時に自分が打ち込んできたものの虚無に気付かされ、喪失感と共に死んでいくことになる。

 あなたは社内ニートであり、せっかく時間とエネルギーが余っている。趣味に打ち込まない手はない。趣味には人との繋がりを増やすという要素もある。1人でできる趣味に没頭する人が多いが、なるべくなら社交要素のあるものの方がオススメだ。社会人になってからは滅多なことでは友人は増えないので、こうした機会は貴重なものとして活かそう。

 ブログのような趣味であれば、勤務中のネタ探しが可能になる。こうなると、社内ニートとのシナジーも大きい。もちろん教養を付けるのも趣味の一環として良い。

寝る前のスマホはやめろ!!

 寝る前のスマホはやめるべきだ。人間は刺激が強いものを求める本能があるので、ついつい寝る前にスマホで下らない動画やニュースを見がちである。これはある種の本能のバグのようなもので、勇気を持って控えよう。

 寝る前のスマホは睡眠時間を減らす。寝付きが悪くなり、貴重な時間が減ってしまう。その割に寝る前のスマホは大した情報が得られない。趣味でも娯楽でもなく、タダの中毒と考えた方がいい。動画だったら通勤中に見ればいいし、ニュースだったら勤務時間中に見ればいい。第一、会社で飽きるほどネットができるのだ。くれぐれも時間を間違った箇所に使わないでほしい。

有給・休職・育休は被用者の特権と思え!!

 昭和の会社文化では有給休暇を取らないことが当たり前だった。休職や育休など以ての外だ。そんなことをすれば犯罪者のような扱いになることは目に見えている。

 しかし、考えてみてほしい。個人事業主は何の保証もない。体調不良で働けなくなっても誰も穴を埋めてはくれないだろう。これと比べると、有給休暇という制度は特権だ。ただの権利ではない。特権である。これを生かさずしてなんとするか。有給休暇はなんとしてでもフル消化すべきだ。

 休職に関しても同様だ。こんなに素晴らしい制度はない。メンタルに問題を抱えたら即座に実行するべきだ。我慢して働いても何一ついいことはないし、貴重な健康を損なってしまう。休職のデメリットは出世に響くことだが、社内ニートにとっては関係のない話だ。それに休職経験者は上司からしてもパワハラしにくい存在である。

 育児休暇は必ず取得するべきである。これは国の政策としても推進しているし、乗るしか無い。このビッグウェーブに。愛する子供の成長を見守るのと、会社のノルマを実行するのとどちらが人生にとって価値あるかを考えてほしい。

具合が悪い時は出勤しろ!!

 これは時と場合によって慎重に選ぶべき選択肢だ。本当に具合が悪い時は出勤する必要はないが、多少風邪を引いた時くらいは出勤した方がいい。

 理由は有給休暇を温存するためだ。健康で生産的である期間は、少しでも趣味や家庭に向けた方がいい。風邪を引いた時は会社で寝込んで給料をもらおう。

「将来性」に期待するな!!

 社内ニートに関する悩みとしてしばしば聞かれるのが「将来性がない」である。これに関しては少し考え過ぎだと思う。現在の生活に充実を感じていないから、将来が不安という気持ちが高まるのだ。家庭や趣味を充実させることに注力していればこの悩みは解消するはずだ。

 仮に仕事を頑張ったとして、どんな将来があるのだろうか。会社でどんどん出世して役員になることだろうか。残念ながらこうした地位に就けるのは元から優秀な人が死ぬほど努力して、なおかつ運に恵まれた場合だ。多くの人間は餌をチラつかされて、途中で夢破れて、会社を去る。仕事でよほどやりたい事があれば別だが、社内ニート志望者の皆さんにとっては関係のない話だ。

 第一、サラリーマンになった時点で将来はたかが知れている。あなたは有名なサラリーマンを何人知っているだろうか。林修や池井戸潤はサラリーマンを辞めた後に別の項目で大成した人間だ。サラリーマンをやっている以上はそもそも大した将来性はないだろう。せいぜい今ある会社の地位を落とさずに定年まで逃げ切るくらいだ。

気に入らなかったら副業しろ!!

 とはいえ、将来性のないサラリーマンを続けることに嫌気が指す人も多いだろう。そんな時は副業を始めたら良い。男性の半分くらいには金を稼ぎたいという本能的な欲求があり、それはなかなか社内ニートで達成されるものではない。

 会社で持て余したエネルギーをどんどん副業に投入しよう。会社という安定した収入源があるため、非常に楽しいはずだ。人間の脳内で副業は別の会計になるため、副業でも受けた収入が本業に遠く及ばなくてもやりがいを感じるはずだ。

 副業が成功すると、別の未来も見えてくる。それは独立だ。ハイリスクであるため、よほど自信のある人しか不可能だが、もし副業で生計を立てられそうなら、そちらの道に行ってもいい。サラリーマンには定年退職という避けられない宿命があるため、副業でスキルを付けることは老後の充実にも繋がるはずだ。

 創意工夫や将来性を追い求めたいというのは人間に不可欠な欲求だ。ただし、それを会社で発揮する必要はない。実のところ、会社は最も創造性を発揮しにくい場所だ。それよりも副業・恋愛・子育て・趣味などの方がよほど自由だ。 サラリーマンに将来性はないが、会社を一歩出るとそこには未来が広がっているのである。

健康には気をつけろ!!

 金・地位・権力よりも遥かに大切なものがある。それは健康だ。健康は何にも勝る宝だ。健康な身体があってこそ、あなたは人生100年時代を楽しむ事ができるだろう。

 しばしばこういう人がいる。「人間長生きするようにはできていないから、60歳で死にたい」と。なんともったいない!!こんなことを考えるのは人生の生きがいを見いだせていないからだ。「60歳を過ぎた人間は要らない」という会社の論理を内面化してしまっているのだろう。しかし、あなたの命の価値は生産性で決まる訳では無いし、少なくとも会社に決められる筋合いはない。

 働きすぎて病気になったり、飲み会のやり過ぎで肝臓を痛めたり、仕事で責められて自殺してしまう人がいる。恐ろしいことだ。繰り返すが仕事は生活の手段であって、目的ではない。会社のために身体を壊すことほど愚かなことはない。常に健康を優先するべきなのは言うまでもない。個人事業主と違ってあなたには休む特権がある。特権はちゃんと行使しよう。

昼休みには散歩しろ!!

 社内ニートには昼休みの散歩はオススメである。スマホの画面を見ているよりもよほどいい。というのも、ネットは勤務中にいくらでもできるからである。それよりも休み時間はそこでしかできない活動に集中するべきだ。散歩は特にオススメである。同僚に監視されているプレッシャーから逃れられるし、運動にもなる。健康のために非常に有用だと思う。

「静かな退職」を目指すあなたへ

 これまで社内ニートライフを手に入れる方法に関して長々と述べてきた。決して楽な道ではないはずだ。社内ニートのは才能と運が必要だし、成功する人よりも落伍する人の方が多いはずだ。それでも「静かな退職」を狙うのならば、これらの原則を1つでも実行するべきだろう。

 哲学者のアーレントは「人間の条件」の中で働き方を「労働」・「仕事」・「活動」に分けた。このうち労働は生きるために仕方なくする働きのことだ。仕事や活動の段階まで行っている人はいいのだが、多数派の会社員にとって会社の業務は労働でしかない。人生をかけて取り組みたい課題なのかは疑わしい。

 こうした観念が生まれ始めているのが日本が成熟した国になったからだろう。経済が伸びていた時代とは違う。賃金も企業規模の伸びるとは思えないし、一方でサラリーマンがどういう人生を辿るのかは良く分かってきた。サラリーマンは社長も含めて全員が替えがきく存在だ。組織の歯車として使われた後、定年退職で消え去っていく。人間関係という観点では40年在籍している会社よりも中学校や高校の方が遥かに価値があるようだ。60歳になって会社人生を振り返った時に残るものはあるだろうか。残念ながら燃え尽きてしまったり、会社が嫌いになって退職していく人のほうが遥かに多いのだ。

 しかし、考え方を転換することができれば問題は軽減される。静かな退職のメリットは、退職をソフトランディングできる点だ。55歳になって出世が頭打ちになって茫然自失になった人間よりも、20代から退職をジワジワ始めた人間の方が遥かに切り替えは上手になるだろう。会社人生を失っても家族や友人や趣味がある。現役時にゆとりを持ち、退職後には無形の資産が残る。賢い生き方だ。

 なお、働く人全てが労働をしているわけではない。自分の夢に向かって頑張っている人も多いだろうし、自分の仕事にプライドを持っている人も多いだろう。こうした人物を否定するつもりは全くない。あくまで社内ニートはこうした「活動」ができなかった人間のための次善の策だ。大企業で「活動」をするのは至難の業で、ほとんどの人間は上司の悪口を言いながら「労働」をしている。それならもっと被用者の強みを活かせばいいのだ。賢い頭と柔軟な精神があればどんな場所でも天国になる。社内ニートはその奮闘の一種だと言えるだろう。

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