東大法学部の下位層の就職はなぜ悪いのか

 以前の記事でも触れたが、東大法学部の下位層の就職は非常に悪い。東大はおろか早慶の平均そうよりも悪いと思う。聞いたことのない無名企業やブラック企業に就職するものやフリーターになるものもいる。その原因について考えてみたい。

東大法学部の落ちこぼれについて

 大学という環境は高校のように偏差値という枠組みで画一的に測れる環境ではないので、何を持ってその人物を優秀と言えるのかは曖昧だ。ただし、なんとなく上位層・中間層・下位層の区分はできるだろう。概ね20%・60%・20%の割合と考えてみる。

 上位層は大体予備試験に合格するかキャリア官僚になる。中間層は色々なタイプがいる。弁護士やキャリア官僚になる人間は数多くおり、外資系やデベロッパーに進む人間もいる。しかし、第1希望が叶わずに挫折する人間も多い。

 中間層の滑り止めとなっているのがメガバンクだ。東大法学部の出身者でメガバンクが第1希望という人間は皆無である。大抵は官庁に落ちるか、行きたい業界の適性がなく、やむなく就職していることが多い。ただし、メガバンクは間違いなく日本で最も力を持っている一流企業であり、東大法学部優遇のような旧態依然とした文化が残っているので、就職者の評価は悪くない。いざ会社に馴染んでくると、キャリア官僚としてすり減るよりもマシだと考えている人間の方が多いと思う。

 ところが下位層の場合はメガバンクの内定すら難しくなって来る。下位層のうち半分は何とかそれでも総合商社に滑り込んだり、法科大学院に進んだりして起死回生することが多いが、下半分の下位10%は本当に就職が難航する。正直、東大とは思えない苦戦ぶりのことが多い。彼らは官僚はおろか大手企業に入ることすら叶わず、色々大変そうだ。

社会不適合者が多い

 東大法学部の学生は他の大学に比べて変わっている人間が多い。アスペルガー的な人間は当たり前のように見るし、しばしば尊大すぎる人間も目撃する。また、東大法学部の中には浮世離れした人間も多く、世知辛いビジネス社会にとことん向かないと考えられているのかもしれない。

 ただし、下位10%の人間がアスペルガーだらけという訳では無い。アスペルガーであっても中間層に食い込んでいる人間は多いし、下位層の半分以上は入学までそれなりに社会に適応していた人間である。したがって社会不適合者の多さが下位10%の惨状を表しているとは言えない。

働き蜂の法則

 これは結構致命的である可能性がある。どんな集団でも下位の人間は落ちこぼれるというおなじみの法則である。受験勉強で燃え尽きたり、東京に馴染めなかったり、スペックが相対的に不十分だったりして、下位10%に入ってしまう人間がいる。彼らは次第に自信を失って不活発になる。すると、情報が入ってこなかったり、肝心なタイミングで頑張れなかったりして、周囲に遅れを取ることになる。

 私は就職活動の時にいつも知人数人でESの添削会をする等情報交換を欠かさなかったのだが、下位10%の学生はロクに就職活動を行っていなかったり、そもそも大学に知り合いがいなかったりした。これでは大きな格差が開くのは無理もないと思う。

会社側から嫌われる

 これは結構無視できない要因だと思う。採用担当だってプライドがあるので、自分の会社を舐めていたり、辞退する可能性が高い人間は採用したくないだろう。

 大学偏差値のように細かく階層化されている訳では無いが、やはり「東大法学部だったらこの辺りには収まりたいよね」という相場感はボンヤリと存在しており、それを下回る企業は「格落ち」という扱いになる。二流企業の採用担当から見ると、東大法学部の学生が受けに来ても腕試しだと思うだろうし、仮に来てくれたとしても、強い挫折感を持ってしまうと想像するだろう。こうなると、転職で早期に会社を去る可能性が高くなる。こうした人物を採用するメリットは少ない。

 大学受験と違い、一流企業に通らないからといって二流企業に簡単に通る訳では無い。したがって、二流企業に全滅して三流企業に進むことになるケースが結構ある。大卒者が高卒労働者の世界に入れないように、学歴に応じて一定の相場感というのは存在しており、高すぎても低すぎてもうまくいかないのだ。

マニアすぎる

 しばしば自分の興味のある仕事がやりたいと考え、マニアックな就活を進める人間がいる。無類のゲーマーがゲーム会社を受けまくるという具合だ。

 就職活動やビジネス社会でマニアという存在は基本的に好まれない。どの会社に入ったとしても、文系の場合は「ビジネスマン」として働くことになる。そしてビジネスマンの業務にマニアの興味を満たす内容は殆どないからだ。ビジネスマンにとっての仕事の価値は金であり、マニアは仕事観が根本的にズレている。年収や就職偏差値で選んだ学生の方が残念ながら企業からのウケはいいだろう。したがって東大法学部のゲーマーがゲーム会社を受けても落とされる可能性が高い。

 真摯に夢を追いかけている人間が評価されないのは残酷にも思えるが、残念ながらビジネスの世界ではやりたいことベースの人間よりも、年収に執着する人間のほうが採用されやすいし、評価もされやすい。やりたいことのある人間は休日に趣味としてどうぞ、という話である。

就職の軸がブレている

 これは色々な人に言えることだが、人生の軸がブレている人間は落ちこぼれやすい。やりたいことが明確な人間は実のところそこまで多くないのだ。東大法学部の学生の場合は、法律に興味が持てず、かといって官僚は激務だし、民間企業もしっくりこないという堂々巡りで軸がブレているパターンが多かった。

 私も就職活動が迷走していた人間の1人なのだが、それでも学歴的なプライドは残っていたので、自分の社会経済上の地位を守るという一点で就職活動をしていた。しかし、こうした軸を持てない人間は多く、どの分野にも全力投球することができずに不発に終わってしまうケースがある。

 個人的な意見だが、この問題は新卒就活以上に転職の時に顕在化すると思う。会社員は専門職や起業と異なり目標が見えづらく、どの会社に行っても結局同じという結果に陥りかねないからだ。しかも転職して入った会社は最初に入った会社に比べて強い思い入れを持ちにくく、尚更軸のブレは大きくなると思う。

東大法学部の下位10%から巻き返した人

 とはいえ腐っても東大法学部という人もいる。下位10%に入っていながら別の手段で巻き返した人も存在する。例えば幸福の科学教祖の大川隆法はおそらく東大法学部で落ちこぼれ、あまり勝ち組とは言えない専門商社に入った。だが、このままで終わりたくないと思ったのか、「起業」し、成功してしまう。

 他には現在安倍派の裏金疑惑を暴露して話題になっている。宮澤博行・元防衛副大臣が挙げられるだろう。彼も東大法学部を卒業したのだが、飲食店や塾講師などを転々として苦難の道を歩み、地元に帰って議員になった。順調に出世のハシゴを登っていき、40代にして副大臣まで到達したが、ここに来て先行きが怪しくなっている。ただし、これほどの逆転を成し遂げた人物だから、なんとか乗り切れる気もしている。

 林修は一応長銀に入っているので、下位10%ではないだろう。中間層のやや下の方という感じだろうか。どうやら大蔵省に落ちたらしい。


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