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「静かな退職」の秘訣①、休暇は分割せよ!!

 経済学には限界効用逓減の法則というものがある。投入量が増えるほど一要素あたりの効用が減るというものだ。例えば年収100万円の人が年収1000万円になったら地獄から天国に行ったような気分になるだろう。しかし、年収1000万円の人が年収1億になっても贅沢ができるようになった以外の向上はなく、年収1億の人が年収10億になってもほとんど生活は変わらないだろう。仕事帰りのビール一杯は美味いが、二杯目になると普通になり、三杯目になると飽きてくる。効用とはこうした性質を持つのである。

 休暇も同様だ。2連休が4連休に増えたとしても効用は2倍にはならない。せいぜい1.5倍程度だろう。したがってこうした休暇のとり方は効用を逓減させる。

 それよりも細かい休みをチョコチョコと取ったほうがQOLは上がるはずだ。これが「休暇は分割せよ」の極意である。

 これを読んでいる「静かな退職」希望者の皆さんは、きっと今の仕事に何も期待をしていないだろう。したがって会社に行く時間は果てしない虚無と苦痛のはずだ。こうした人にとって休暇は「息継ぎ」に近い。平日に水面下で息を止めて我慢し、休日にやっと水面に浮上して息を吸うことができる。

 休暇も同じだ。休暇の目的の1つは連勤を「切断」することだ。5連勤をいかに破壊するかを心がければ、一気に人生のゆとりは増えていくだろう。水曜日に有給休暇を取ったとしよう。この場合、一週間の出勤日が全て休みの次の日か、明日休みという状態になる。なんと素晴らしいことだろう。

 あなたは一週間のうち、「自由になれる」と感じる曜日はどこだろう。土曜日と日曜日は間違いなく自由になれるだろう。これに比べて金曜日も翌日が休みなので、比較的自由に行動できると感じるはずだ。

 水曜日に休みを取ると、なんと金土日に加えて水曜日と火曜日も自由な日として加えられる。素晴らしい!!一日労働で疲れ果て、次の日に備えて陰鬱な気分になるのは月曜日と木曜日だけだ。しかも前日休んでいるので気分はリフレッシュしている。一気に人生の幸福度は上がるのだ。

 水曜日は理想的だが、実際は都合によって動くだろう。火曜日や木曜日に休暇を取ってもあまり問題はない。火水木のどこかに休暇を入れられれば非常に理想的である。一年間を52週とし、祝日などもあるから5連勤を余儀なくされるのは、多くても40回ほどだ。計画的に有給を取れば、一年間の5連勤を20回以下に抑えることができる。

例えば2023年11月の場合は15日に有給休暇を入れるのが最も効率的である。

 もちろん半休制度も活用したい。「休暇は分割せよ」の理論から考えると、半休の効用は大きい。全休一回よりも半休二回の方がトータルだと大きいことになる。ただし、注意が必要だ。半休の場合は通勤コストがかかる。この場合、効用の増加分は通勤コストで打ち消されてしまうだろう。全休と半休の構成比は職場の雰囲気とやりたいことのバランスを見極めて、慎重に選択していこう。

 業界によっては義務的な連休が課せられている場合もある。例えば金融機関の場合はどこかで5連続の連休を取ることが義務付けられている。この場合も「休暇を分割せよ」のルールは守ろう。ついつい月曜日から金曜日までをまとめて休んで9連休を作りたくなるが、これはコスパが悪い。この場合は水・木・金・翌週の月・火という取り方が効率的だ。こうすると今週と翌週が2連勤と3連勤になり、5連勤が二つ破壊されることになる。こんな状態では出勤日もどこか休み気分だろう。実質的に先週の土曜日から翌週の日曜日まで3週間近くも休み気分が味わえるのだ!! 

2023年12月は休日が皆無の暗黒の月だ。
こういう時こそ連休を取ると良い。

 5連勤は悪魔の所業である。これを「静かな退職」希望者は熟知しよう。5連勤は体力を消耗させ、折角の休日を寝て終わらせてしまう原因となる。これを防ぐには計画的に休暇を取得し、5連勤を破壊していく必要がある。実際は「静かな退職」をしている人間でも繁忙期はなかなか休めないので、休みやすい月に有給休暇を取りまくろう。週休3日には及ばないまでも、週休2.5日くらいには変えられるはずだ。

 あなたはこう思うかもしれない「休みが取りにくい」と。「静かな退職」を決行するにはここを乗り越える勇気が不可欠だ。有給休暇は労働者の権利だ。有給を使わないことは給料を自主返納しているのと同じことである。有給を使わせないような会社は従業員を精神操作して搾取をしているのだ。

 なぜかは分からないが「同僚」という存在は常に会社の論理を労働者の論理を優先させるので、有給休暇を取ると睨んでくるかもしれない。「こっちは苦労しているのに」論法だ。だったらあなたも「静かな退職」をすればいいではないかと思ってしまう。その勇気がないのなら、文句を言ってはいけない。もし自分の仕事が価値あるもので、休みを返上してまで頑張りたいと思っているのなら、それは非常に素晴らしいことだ。誇りに思ってほしい。

「静かな退職」への非難の眼差しは妬みと考えてしまおう。自分が奴隷だから、鎖を抜け出した人間を見て腹が立ち、主人に密告しているのだ。この論法は「オレは病気になったからお前も病気になれ」と言っているのと変わらない。「勝ち組」になりたかったら出る杭にならなければならない。当然ながらそれ相応の忍耐と努力は必要だ。

「静かな退職」を成功させるための肝となるのは休暇の取り方である。ここを上手に乗り越えれば自分の人生を生きることができるだろう。企業の目標には上限がなく、黙っていれば無限に業務量は増え続ける。雇用者と被用者は非対称な関係にあり、被用者は雇用者の要求にNOということができない。挙句の果てに被用者同士で監視し合う始末である。

「静かな退職」はこの非対称性を崩す試みだ。企業は被用者の立場が強くなれば無意味な仕事を削減し、より効率的な社会が作り上げられるだろう。イノベーションも促されるはずだ。それに労働力不足の流れが加速すればロストジェネレーションや退職して燃え尽きた高齢者の雇用を推進することができる。「静かな退職」は今まで「定額使い放題」だった社員の性質を根本的に変容させていくだろう。「静かな退職」は「静かな革命」なのだ。

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