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芸能人の寿命は短い?

 日本人の寿命は世界で一番長い。しかも、毎年0.2歳のペースで伸びている。2022年は新型コロナの影響で短縮したのだが、それでも史上例を見ない長寿社会であることは間違いない。日本人の死亡年齢のピークは90歳であり、100歳まで生きるものも珍しくはなくなっている。

日本人の半分近くが90歳まで生きる異例の長寿社会に到達している。

 私の祖父母の世代の親戚は軒並み80代に差し掛かっているが、殆どが生き残っている。18人中亡くなったのは3人で、それぞれ享年は83歳・86歳・89歳だ。もはや80代前半で亡くなるのは「早死に」の部類に入っているようだ。
 
しかし、ニュースなどを眺めていると少し実感とズレているな、と思った。テレビで見かける有名人は90歳超の寿命の人物をあまり見かけないからだ。統計が間違っているとは思えないので、芸能人の寿命が短いのだろうか。

 以前の記事で政治家の訃報に関しては分析した。2022年に亡くなった9人の有名政治家のうち、寿命の中央値は87歳で、90代の者も2名いた。概ね日本人男性の一般的な分布と同じである。令和になってから死去した総理大臣は中曽根康弘(101)・安倍晋三(67)・海部俊樹(91)だ。細川護熙(85)・森喜朗(86)・麻生太郎(83)・小泉純一郎(82)も相変わらず元気だ。村山富市に至っては99歳を過ぎた現在でも健在である。殺害された安倍晋三を除き、総理大臣は全員日本人男性の寿命中位数を超えられるようだ。

 政治家のようなストレスの掛かる職業は短命に見えるが、実際はそうでもないようだ。むしろ政治家のような歳がいってから就任する職業は中高年になっても元気であることが必要なので、生存バイアスがかかるのかもしれない。

 実業家はどうだろう。40で急死したビズリーチの社長のような例もあるが、日経新聞の訃報を見る限り、概ね長命のようだ。寿命は80代後半がボリュームゾーンで、90の壁を超える者も多い。しばしば100歳超えも存在する。ここ最近の訃報を見ても京セラの稲盛和夫(90)・ウシオ電機の牛尾治朗(92)・トヨタの豊田章一郎(97)・イトーヨーカドーの伊藤雅俊(98)など90代の者が目立つ。経営者の半分以上は日本人の寿命中位数を超えているようだ。

 これらと比べると芸能人の寿命は短いように思える。日本人の寿命最頻値と感覚がズレる原因だと思う。最近死んだ芸能人を見ても、あき竹城(75)・水木一郎(74)・葛城ユキ(71)・西郷輝彦(75)・渡辺徹(61)など、80歳に達しない者が多い。宝田明(87)や高見のっぽ(88)は政治家だと普通だが、芸能人だとかなり長寿な方だ。ここに上島竜兵のような自死したものは含まれない。

 長寿の有名人を考えても、芸能人は思い浮かばない。90代後半にまで達した芸能人はあまりいないのではないだろうか。瀬戸内寂聴や森英恵のような90代後半まで生きた著名人も、芸能人というよりは文化人だ。役者・歌手・芸人をメインにしている者ではほとんど見かけない。女性の25%・男性の10%が95歳の壁を超えることを考えるとあまりにも少ない比率である。

 芸能人の寿命を縮めている要因はなんだろうか。真っ先に浮かぶのは不規則な生活や不摂生だ。活躍期間が若いというのもあるかもしれない。政治家や実業家もストレスフルだが、一方で歳を行ってから活動的でいられるというのは健康にも良い。芸能人は若い頃がピークなので、人生の後半戦で燃え尽きてしまうのかもしれない。

 ちなみに有名人の中で芸能人よりもさらに寿命が短い職種が存在する。それは力士だ。力士の平均寿命は60歳とも言われる。北の湖は62歳、千代の富士は61歳で亡くなった。理由が力士の特殊な体格にあることは間違いないだろう。あの体格を維持するのには凄まじい負担がかかるようだ。

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