村山富市がついに100歳になるらしいが 

 筆者は人生100年時代を考える上で百寿者に興味を持っているのだが、最近は有名人の中での100歳を超える人が増えてきた。3月3日をもって村山富市元総理大臣は100歳を迎えるそうだ。東久邇宮成彦王・中曽根康弘に次いで史上三人目の百寿者となる。筆者の調べた限りでは、一国の元首が三人の百寿者を輩出するのは史上初である。

 以前の記事で村山富市はおそらく百寿者になる可能性が高いと書いた。99歳の人間は半分以上の確率で百歳を迎えるし、村山富市は同年齢の男性にしてはかなり元気そうに見えるからだ。ただ、それでもかなり昔よりは衰えた。90代前半までは活発な政治活動を行っていたし、97歳頃までは自転車に乗って買い物に行くなど、かなり元気だった。しかし、98歳辺りから露骨に衰え始めているようだ。福島瑞穂は毎年村山富市を訪問しているが、97歳の時は近所まで送っていたのが、98歳の時は玄関先になり、99歳の時は自宅の中に限られている。今回も自宅の外には出なかったようだ。このペースだと、103歳辺りまでは持つだろうか。もしかしたら東久邇宮の記録を更新できるかもしれない。

 この記事で百寿者として書いた人物のうち、キッシンジャーは去年の11月に死亡した。中国に訪問するなど、晩年まで元気いっぱいだった。三笠宮百合子は現在も存命である。

 百寿者を狙えそうな人物のうち、ジミーカーターは余命いくばくもないように思えたが、現時点でもまだ生きている。ただし、妻のロザリン夫人は96歳で亡くなったようだ。葬儀にカーターも出席していたが、会話は難しくなっており、車いすで移動していた。完全な要介護状態である。マハティールはまだ元気だが、入退院を繰り返している。ただ、認知症などはなく、外国訪問なども行っている。心疾患がどうにかなれば、村山富市コースだろう。というかこの人、94歳まで首相をやっており、異次元の体力である。渡辺恒雄はそろそろ98歳だが、今のところ生きているらしい。たぶんフレイルがかなり進行しているので、百寿者になれるかは微妙なところだ。動静が伝わらない辺り、入院しているのではないかと思う。

 他に百寿者を狙えそうな著名人はいるだろうか。江崎玲於奈は98歳(そろそろ99歳)であるが、まだ元気のようだ。普通に立って話している。百寿者まではあと一歩である。池田大作は以前の記事には書かなかったが、95歳で死去した。おそらく要介護だったため、百寿者になれた可能性は元から低かっただろう。ドクター中松は95歳の現在も元気だが、百寿者になるにはまだ遠い。経済学者のソローは百寿者になると思っていたが、ついこの前に99歳で死去した。ジャスコ創業者の岡田卓也は98歳でまだ存命のようだが、車いすに乗っており、百寿を迎えられるかはわからない。ちなみに姉は106歳まで生きていたようだ。有名人の多くを占める芸能関係者は95歳を超えた人間はほとんどおらず、候補すら見つけらない。芸能人は短命のようだ。

 それにしても、90代になると一年一年が重い。毎年のように衰えが進行するのが他人の目から見てもよくわかる。例えばカーターは96歳まではトークイベントで話していたが、98歳になると歩行や会話が難しくなっており、99歳時点ではほぼ行動不能だ。村山富市ははるかに元気だったが、やはり毎年衰えが進行している。マハティールは元気溌剌でよくわからない。90歳以上の超高齢者に関しては、見た目はあまり変わらず、足腰の方が深刻だ。露骨に歩行が難しくなり、転んだ時のダメージも大きそうだ。人間を観察していると、60歳辺りまでは加齢に応じて黒ずんでいくのだが、80代後半あたりになると色素が抜けて白くなっていくきらいがある。理由はよくわからない。

 日本人の多くは長生きに対して妙な嫌悪感があるらしく、頭から否定してかかる人が多い。例えば寿命が延びることによって苦しむ期間が延びるという考え方が典型例だ。実際は健康寿命と平均寿命の延びは軌を一にしているし、医療の進歩によってはピンピンコロリ化が進む可能性も十分にあるのだが、なぜか日本人はそういう方向には考えないようだ。寿命延長の話を語る人は毎度のようにいちいち健康寿命について説明する羽目になることが多い。ネット上の言論も大半が否定的だ。これではイノベーションも停滞するし、社会保障は破綻するだろう。

 実際は百寿者の多くは90歳の時点ではかなり元気で、自立した生活をできることが多い。だから、こうした人物が増えることは社会の負担にはならないはずだ。どちらかというと、問題なのは硬直的な日本のキャリア設計の方だろう。現時点で日本のサラリーマンは60歳でキャリアが消滅するので、それからの30年以上を貯金で乗り切らなければならない。寿命という観点から見ても終身雇用はすでに崩壊しており、どちらかというと「雇い止め」の後にどうやって食いつなぐかが問題となっている。キャリアチェンジが可能な20代の内から定年のない職業に就くか、独立を念頭に置くか、FIREが可能な資産を形成する必要が出てくるだろう。

 ところで、百寿者に多い要素は何だろうか。実のところ、あまり明確な特徴は見い出せなかった。長生きの家系もあまり存在せず、ランダムな可能性が高い。例えば三笠宮夫妻は夫婦ともに百寿者だが、三人の息子は全員早世している。政財界の大物などを見ても、財産や権力の多寡と寿命はほとんど関係なさそうだ。アメリカと違って日本は国民皆保険制度の下で万人が良質な医療を受けられるため、社会的地位が高くても寿命が延びるわけではなさそうだ。

 百寿者にとって決定的な特徴は性別だ。100歳以上人口の90%近くは女性である。やはり女性の方が長生きなのだ。2020年の生命表によると、男性が百寿者になる確率は3%に対し、女性は9%である。体のサイズが寿命に関係あるという話もあるが、百寿者との関係はよくわからない。確かに百寿者は背が低いことが多いが、これは加齢で背が縮んだ影響かもしれないし、大正生まれの日本人が今より背が低かったからかもしれない。村山富市や中曽根康弘は長身だった。ここに関しては何とも言えない。寿命を短くする要因はいくらでもあるが、長くする決定的な要因に関しては見出しにくい。他人に寛容で勤勉な人が長生きするという話もあるが、やはり確かなことは言えない。個人的に思うのは、ライフワークを持っている人は長いということである。社会と関わることができるし、生きている意味も見出しやすい。会社人間の場合は退職後に燃え尽きやすいので、リスクである。じゃあ自由業がいいかというと、そうとも言えない。自由業は極端に寿命が短い人も多く、個人差が非常に大きいからだ。長寿のメソッドというのはなかなか難しいのである。




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