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「静かな退職」を「はたらく細胞」で例えると「老化細胞」になる?

 人体は60兆個の細胞に分かれているが、それぞれは複雑に分かれて分業体制を構築している。最初は幹細胞といってどんな細胞にも慣れるのだが、分化するにつれ「メチル化」という現象が起こり、別の細胞になれなくなる。まるである年齢を超えると容易にはキャリアチェンジができなくなる現象のようだ。

 人体の細胞は社会に似ている。例えば循環器系は交通業界や流通業界だろう。消化器系は農業だろう。呼吸器系はエネルギー産業に例えられる。免疫細胞は警察そのものだ。皮膚は国境警備隊かもしれない。神経系は国家官僚機構そのものだ。脳細胞は政治家、グリア細胞は議員秘書と言えるだろうか。ドラマの鉄板と言えば刑事ドラマだが、はたらく細胞でも免疫の話が多く、ここも似ている。

 さて、ここで気になるのは「静かな退職」を決めた社内ニートの立ち位置である。彼らに相当するのは最近話題の「老化細胞」に違いないだろう。

 老化細胞は老朽化した後も人体の組織の中で機能を停止した状態で居座る細胞のことだ。老化細胞はただ働かないどころか、色々な有害物質を周囲に振りまき、組織に少しずつ慢性炎症を与えている。老化すると加速度的に病気になっていくのは、この老化細胞が原因ということが最新の研究で分かってきた。

 社内ニートも老化細胞に良く似ている。社内ニートは周囲の士気を下げ、組織の停滞感を悪化させる。会社活性化においては重大な障害になるだろう。しかし、「静かな退職」や士気の低下は少数の人間ではなく、多くの人間に薄く広く蔓延する。こうなると、対処のしようがなくなる。老化細胞のように士気を無くした社員が組織のあちこちに溜まりだし、会社は慢性炎症を起こすようになる。

 最近の研究で老化細胞を除去することによって人間の老化を食い止め、健康寿命が伸長する可能性が出てきた。実現すれば素晴らしいことだ。ただし、元気な90歳100歳の人間で社会が占拠されれば、今までの世代交代に関する社会の感覚は大きく変わってくる。中途半端に元気な90歳100歳が大老害として蔓延し、もしかしたら社会は遥かに不活発になるかもしれない。老化細胞を除去した結果、その本人が社会にとって老化細胞になるという結末が生まれるかもしれないわけである。


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