見出し画像

パスポートとスタンプと顔認証と。

 ある日の午後、パスポートを手に取り、パラパラとめくりながら、出入国審査の自動化もいいけれど、スタンプはなくなってほしくないなあ、なんて考えていました。

 いつどの国を訪れたのかが一目で分かる出入国スタンプですが、国によってそのデザインは様々です。

 あくまでも私のパスポートに限った話になりますが、円や四角形を基調としたデザインが多いなか、底辺が少し長めの二等辺三角形をしたタイの出国スタンプは、意外です。その奇抜さのせいで隣のスタンプと重なったり、横のページにはみ出したりもしていますが、それはご愛敬ということで。他にも現地の言葉が並んでいるものもあって、たとえば韓国の入国スタンプでは「대한민국」が確認できます。

 スタンプは、色の多様性があるから好きです。

 日本のスタンプは空色に近い優しいブルーですが、国によっては緑や赤、赤紫色なんかもあったりして決して一様ではなく、また言葉にすると同じ青だったとしても、そこには微妙な差があるため、見ていて飽きません。それどころか、色とりどりのスタンプが不揃いに並んだ姿は、今まさに旅行へと出発するようなわくわく感にも似て、何処か楽しそうです。

 ビザになると、色の鮮やかさに加えて、お国柄が際立つデザインの複雑性が目を惹きます。手元のパスポートでは、カンボジアのビザシールが、一際魅力的に映ります。

 しかし、これらパスポートを彩るスタンプとビザは、いまや絶滅の危機に瀕しているのかも知れません。

 他の国々同様、韓国でも数年前から出入国審査が自動化され、スタンプはなくなりました。ビザシールも同様です。日本でも、すべてではありませんが、複数の空港で自動化システムが導入されています。現在はまだの国々でも自動化は時間の問題でしょうし、スタンプがなくなれば紙の削減に繋がるだろうことを考えると、致し方ない流れなのだと思います。

 それでも、いつだったかは忘れましたが、仁川空港で初めて自動化ゲートを利用した際、便利ではありましたが、やはり海外での醍醐味が一つ減った気がして、何処となく淋しさを感じました。

 そういえば、その後は日本に帰国した際にも自動化ゲートを使うようになるわけですが、実はこのときに予想もしなかった事態が襲い掛かりました。

 顔認証が、全く以てうまくいかないのです。

 何度やってもダメ。近くにいるスタッフの方の助けを借りても、認証機能の問題なのでできることは特になく、結局、それまでしていたように審査官のいるデスクに行き、手続きをしてもらいました。

 その後も、帰国の度に同じことを繰り返します。簡易化されたはずなのに二度手間になるという、おかしな事態に陥ったわけです。

 この、顔認証がうまくいかない理由ですが、ある程度の見当は付いていました。おそらく、というかほぼ確実に、修正された写真が原因です。

 何を言っているんだと思われるかもしれませんが、韓国でパスポート写真を撮影すると、頼んでもいないのに、もとい「修正しないで下さい」と頼まない限り、ほぼ確実に修正されます。無論パスポート写真には規定があるので、それにはきちんと従っているのですが、そうではない部分、たとえば、心持ち頬がすっきりていたりしています。私の場合はそれに加えて、全体的に薄っすらとしたモヤが掛かっていました。つるつるすべすべのたまご肌にするため、わざわざご丁寧にフィルターを掛けてくれたのでしょう。

 履歴書の証明写真と実物が違うのは韓国あるあるで、今更な話ではありますが、さすがにパスポート写真となると、大使館に受理してもらえるだろうかという余計な緊張と不安が付きまとうので、正直勘弁してほしいところです。(無事に発行されたので問題ないとは思いますが、韓国でパスポートを発行・更新する方は、ご留意ください。)

 ただ顔認証の性能も段々と改善しているようで、前回福岡空港を利用した際は、初めて、それも一回で成功しました。予期していなかった喜びでしたが、今後はスタンプを押すことはないと考えると、やはり淋しい気がするのは否めません。


◆◆◆

 そうそう。

 ちなみに、出入国審査が自動化された日本の空港でも、スタンプの取得は可能で「希望される方は、自動化ゲートの通過後、出国手続時には航空機への搭乗前、帰国(上陸審査)手続時には税関検査前までに、各審査場事務室の職員にお申し付けください(出入国管理庁)」だそうです。

 うむ。

 我儘なお願いなのは分かっていますが、できれば自動化ゲートにスタンプ機能を付けてほしいところ。

 ではでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?