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『ソウルハッカーズ2』の『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』から十二星座の"強さ"を分析してみた

 『ソウルハッカーズ2』は、『真・女神転生シリーズ』や『ペルソナシリーズ』でお馴染みのアトラスから、この8月25日にリリースされるゲーム作品で、1997年発売の『デビルサマナー ソウルハッカーズ』のなんと25年ぶりの続編作品です。


 そんなこの作品ですが、3月から『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』という動画がほぼ毎日公開されていたのをご存知でしょうか?

 この動画は、Aionの未来予測で見えたゲーム内に登場する悪魔などを日替わりで紹介するものです。発売前にこの形式でキャラクターなどを紹介するのは、『真・女神転生V』の際にも行われていました


 ただ、『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』には一つ要素が追加されていました。見えた悪魔などから十二星座の運勢を占うというものです。

ジャックフロストが見えるということは、ベスト星座はうお座になるらしい


 悪魔紹介から星占いに繋がるのが単に面白かったり、2日目にはもう悪魔じゃないものが出てきて面白かったりと、しばらく見ていたのですが、あるときふと気がつくことがありました。

 以下はそれに気がついた最初の5日間の星座ランキングです。

3/10, 3/11, 3/12, 3/13, 3/14の星座ランキング


「「「 上位陣めっちゃ強くない!?!? 」」」


 もしかすると、この『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』には星座ごとの強さや流れみたいなものが存在するのかも???

 というわけで、『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』を3/10から8/24まで全て集計し、その運勢の強さがどのくらいのものなのか、どう移り変わっていったのかを、分析してみました

分析の前提の話

▶︎ 分析のスタンス

 今回の分析は、「ちょっとだけ真面目なカジュアル分析」のスタンスをとっています。直感的にやりたい手法を選びつつ、真面目要素も入れたくなったら入れるという形です。
 いろいろ粗いところは有りますが、それはそこまで厳密さを求めていないということですので、そこが気になった人はガチ分析やってみてください。


▶︎ 分析の方針

 今回の分析は、『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』の運勢から、それぞれの星座の強さやその変動を可視化してみたい!というモチベーションから始まりました。そこで、星座の運勢の強さをレーティングにして、その変動を観察することにしました。
 「運の強さのレーティングって何だよ!」って思う人もいるかもしれません。私もそう思います。
 でも、実際どうなるか気になりませんか?私は気になっちゃったのでやってみました。
 一方で、強さや流れの観察が主眼なので、検定のような順位の偏りがままあることなのかどうかを検証することは今回は行っていません。たまたま順位が偏っているだけという可能性はありますが、「運も実力のうち」としてその運の実力を見ていきます。


▶︎ 『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』の発表形式

 分析をするためには、まず『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』での運勢の発表のされ方について知っておく必要があります。

 発表形式は2つに分けられます。
 1つ目は、ランキング形式。12の星座が1位から12位まで並べて発表されます。大半がこの形式です。

ランキング形式では1位~12位まで並べられる


 もう一つが、ピックアップ形式です。12の星座の中から超ラッキーな星座をいくつかピックアップして発表します。ピックアップされた星座の中での順位は発表されません。ピックアップされる星座の数は3~12(!?)です。

ピックアップ形式ではいくつかの星座が選ばれる


 そのほか、そもそも動画投稿がない日がありました。これは7/9の1日のみです。


▶︎ 分析の際に気をつけたこと

 今回、分析するにあたって貴重な真面目要素として気をつけていたことがあります。それは、今回扱うのが順位情報だという点です。

 順位の情報は、相対的にどちらが上か(今回であれば運勢が良いか)がわかりますが、具体的にどのくらい差があるのかはわかりません。1位と2位の間が僅差でも大差でも同じ順位差1ですし、2位と3位や8位と9位など違う順位の場所でも同じ順位差1です。

他にも、2位の結果が他の1位の結果を上回る場合があるなど、
別々のランキング間の順位同士の比較ではどちらが真に上なのかが分からない
というような特徴もある。

 この手の話は順序尺度のお話で、順位そのものを四則演算をしても意味のある結果が出ないことになっています。2位+3位が5位とは言えませんし、1位と5位と6位の平均が4位と等しいとも言えません。
 ですので、順位情報を扱う際はあくまでも相対的な上下関係しか分かっていないということ、その具体的な差は不明であることを念頭において、順位そのものを計算で扱ったり順位差を比較したりするときはそれなりの理由を用意するようにしました。


実際に分析してみた

 それでは実際に『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』の結果を分析してみましょう。

※ 分析に使った順位などのデータは全て手作業で収集しているため入力ミスなど実際の動画と異なる部分があるかもしれません。ご了承ください。


▶︎ 順位観察編 : まずはシンプルに眺めてみる

 手始めに、全ての順位変動を眺めてみることにしました。

 まずはデータを集めるところから。『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』を一つひとつ見ていき、その結果をスプレッドシートにまとめていきました。またざっくりと眺めやすくするために、データをまとめながらTOP3と12位に色付けしてみました。

3月分のデータ
3/18はピックアップ形式で、0がピックアップされた星座

 やっぱり何か傾向がありそう。TOP3に注目すると、てんびん座・さそり座からおひつじ座・おうし座に流れが移っていきつつ、うお座がずっと強いように見えます。


 これをグラフにしてみましょう。ランキング形式の日だけ取り出して順位の変動をグラフにしたものが以下です。縦軸の上が1位、下が12位です。

グラフ縦軸上側が上位
ランキング形式でない日付は飛ばして線を結んでいる


 ……これではよく分かりませんね。星座別に分けてみました。

それぞれの星座でなんとなくの傾向が見える
特にある時期に取ってない順位がわかりやすい

 これだけでも、星座によって上位が多い時期であったり下位が多い時期があるのが見てとれます。また、各星座の余白部分が分かりやすく、その時期はその余白あたりの順位を取っていないこともわかります。
 例えば、おうし座は他と比べて中上位に寄っている印象があります。おとめ座やみずがめ座には大きい余白を見ることができます。てんびん座の8月は何があったのでしょうか……。

 ここでひとつ気をつけるべきは、順位の上昇下降の流れが必ずしも運の総量の増減と一致しないということです。例えばうお座は、全体として少し順位が下降しているように見えますが、これはあくまでも相対的な順位が下がっているだけで、もしかすると運の総量は上向いているものの他の星座の上昇ペースに抜かされているだけかもしれません。
 ただ、今回の分析では順位の裏に隠れている運の総量的なものをずばり推定するようなことはしません。今回の分析の主眼は「相対的な強さ」です。全体の運気が上がり下がりしている中でそれを推定するのは流石に今回のデータからでは難しい問題で、今回のカジュアル分析の方針から外れるとして手をつけませんでした。


 順位の観察に戻りましょう。
 全期間での順位の獲得回数についてもまとめてみました。

各グラフ上部はランキング形式の獲得順位回数(上が1位)
各グラフ下部はピックアップ形式の結果(o: 選ばれた、x: 選ばれなかった)
正直ここまで結果の形が違うとは思ってなかった

 こうして見ると強い星座がありそうな気がしてきます。
 例えば、1位2位を取っている回数は、おうし座・うお座とふたご座・かに座を比べれば大きな差があることが見てとれます。また、それぞれの星座ごとに上位に寄っている下位に寄っているというのがあり、星座ごとの特徴が見えるような気がします。

 しかし、この分析の方法は適切なのでしょうか?
 先にも挙げた通り、これは順位の情報です。もしかするとふたご座・かに座は僅差で上位を逃した回が積み重なっているだけで、トータルで見るとそこまで差をつけられていないかもしれません。
 確かに、順位の裏にある運の量を評価するという観点では、順序尺度である順位をこのように分析することは適切ではありません。(順位を数え上げること自体は問題ありません。その結果から順位の裏にある数量の大小を単に比較するのが不適切です)
 ただ、これが順序尺度ではなく間隔尺度として捉えられるならこの分析は適切です。今回のこの順位を眺める分析では、順位は「観てる人が持つ印象を表すもの」とし、「各順位で等間隔に印象の差が与えられる」という仮定をおきます。順位が一つ上がれば、どの順位でもいつのランキングでも観ている人が「1つ分ラッキーになった!」と思っているものとしました。本当はあまり適切ではない操作ですが、カジュアル分析なので目を瞑って下さい。
 この仮定をおくと、各星座ごとの取っている順位の印象として獲得順位回数のグラフを見ることができます。印象としては、やはりおうし座・うお座が強いですね。


 ここまでの分析を簡単にまとめるとこうなります

  • 『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』では、星座によって順位が寄る時期があったりする

  • 視聴者的には、星座ごとに順位が寄っている印象があるものもある


▶︎ Eloレーティング編 : 星占いを1vs1対戦に置き換えてみる

 それでは今回の分析の本編である、それぞれの星座の「強さ」をみていきましょう。

 順位のような比較結果から、対象の(相対的な)強さを測る手法といえばレーティングだ!というわけで、まずは有名かつシンプルな手法であるEloレーティングを試すことにしました。
 Eloレーティングは、1vs1対戦において、それぞれの相対的な強さを数値(レーティング)で表すシステムで、ざっくり言うと勝敗に応じてレーティングが増減する際に自分と相手の強さの差に応じてその増減幅が自動的に調整されるシステムです。このレーティングのやりとりを繰り返していくと、その時の(相対的な)実力に見合った値に落ち着いていきます。


 これを『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』の結果に使うと、星座ごとの実力に見合った値(=運勢のレーティング)が見えてくるんじゃないかと思いました。もちろんEloレーティングは収束にある程度の対戦回数を要するという特徴もあるので、実力の変動が激しいと適正なレーティングに落ち着くのが追い付かなくなることも考えられます。ですのであまり適さない手法かもしれませんが、とりあえずやってみてどうなるか見てみましょう。カジュアル分析なので。

 Eloレーティングにかける前に、データの変換を行いました。Eloレーティングは1vs1対戦のための手法なので、『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』のランキング形式もピックアップ形式もそのままでは適用できません。ですのでそれぞれの結果を以下のように変換しました

・ランキング形式
1~12位を1位vs2位、1位vs3位、…、11位vs12位の総当たり対戦としてみて上位者が勝ったとする66対戦のセットにする
・ピックアップ形式
選ばれたものvs選ばれなかったもの、の形になる全ての組み合わせの対戦で選ばれたものが勝ったとする対戦のセットにする


 ここまで準備できたら、あとはEloレーティングにかけるだけです。
 Eloレーティングはその「差」に意味があり、「200の差が開くと上位者が76%で勝つ」と予測されます。これに注目して結果を見てみましょう。

初期レーティング=1500、K=32、レーティング更新は1動画ごとという設定での結果
1500(中央)が平均的な強さで数値が大きいほど強い

 お!?集団から上や下に抜ける山や谷がありますね。例えば、5月頭ごろをみて見ると、うお座・さそり座のレーティングが1900超えで、その次に高いやぎ座・おうし座の1600付近とおよそ300もの差を叩き出しています。Eloレーティングは、300離れると上位者が85%勝つという意味になります。すなわち、「5月頭では、うお座・さそり座が他の星座と運勢の勝負をすれば85%以上勝てる」ということが言えます。これは強い。うお座・さそり座の皆さん、ゴールデンウィークに何かいいことありませんでしたか?


 星座個別にもみてみましょう。

てんびん座など周期的な変化が存在するものもあって面白い

 概ね傾向があったり周期的な変化があったりして面白いです。獲得回数で見るとどちらも上位が多かったおうし座とうお座ですが、レーティング的には8月に下位をたくさんとったうお座の評価は低いようで、8月は大きな差が開いています。またあまり獲得回数の集計では目立たなかったおとめ座は、8月半ばからの好調がとても評価されて最終日には1900あたりにいます。
 順位の変動などと照らし合わせると、短期的な「流れ」のようなものが反映されているようにも見えます。ただ、星座それぞれ変動は激しいので、やはり収束が追いついていないように見えます。


 Eloレーティングでの分析をまとめると簡単にまとめるとこうなります

  • 『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』の星座ごとのEloレーティングにはある程度の差があった

  • レーティングにはそれぞれ波があり強さの「流れ」のようなものがあるようにも見える


▶︎ TrueSkill編 : 別のレーティング手法も試してみる

 さて、これで終わりでもよかったのですが、せっかくなのでランキングに対応したレーティング手法でも分析を行ってみました。

 今回はTureSkillで分析を行います。細かい解説は下記の記事に任せるとして、TrueSkillはざっくり言うと、Microsoftが開発した複数人対戦にも対応したレーティング手法です。Haloシリーズでも使われているらしいです。

 なぜこの手法を選定したかと言うと、手っ取り早く実験する方法が用意されていたからです。下記記事を参考に分析のための実装を行いました。
 加えて、Eloレーティングと比べて収束が早いと言う特徴があるので、その違いを比較する上でも面白い相手という理由もあります。


 あとは、Eloレーティング同様分析にかけるだけです。TrueSkillはランキングをそのまま入れられるので、ランキング形式はそのまま、ピックアップ形式は選ばれたものが上位、選ばれなかったものが下位の2グループに分ける形で入力しました。TrueSkillはどのようになったのか結果を見てみましょう。
 今回のTrueSkillの分析では「25の差があると上位者が76%勝つ」と予測されるような設定で行いました。

今回の設定では25の差がEloの200差相当
TrueSkillの挙動の特徴として最初は0からスタートする

 こちらは変動が緩やかですね。4月ごろにはある程度値が落ち着いていて、変動はEloレーティングほど激しくはありません。Eloレーティングより長期的な変動、短期的な「流れ」ではなく「実力」の変動を見ているかのようです。
 Eloレーティングの例と同じく5月頭ごろを見てみましょう。うお座が高いのは同じですが、TrueSkillではさそり座とおうし座を同程度としてうお座との差を10つけています。また、その次の4位集団とうお座の差も20~25程度(勝率76% = Eloでは200差相当)と、Eloレーティングと比較して控え目な勝率を見せる差となっています。それでもやはりうお座は強いですね。うお座の皆さん、5月ごろやっぱり何かいいことありませんでしたか??


 こちらも星座個別にみていきましょう。

長期的な上昇下降の傾向が見えたのは面白い

 やはり長期的なゆったりとした変化が見えるのが面白いですね。これまでの分析では見辛かった、しし座・いて座・みずがめ座などの緩やかな(相対的な)強さの上昇がはっきりと観察できるのは、この分析ならではの結果と言えるでしょう。ただ、この長期的な緩やかな変動を汲み取るTrueSkillでさえ、うお座の夏は大きく下降していることが見えるのは不気味ではあります。ここまで下がっているのは他に無いのですから。


 TrueSkillでの分析を簡単にまとめるとこうなります。

  • 『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』の星座ごとのTrueSkillにもある程度の差が見て取れた

  • TrueSkillの変動は緩やかで長期的な「強さ」の変動のようなものがあるようにも見える


まとめ

 ふとした気づきと直感から行ってみた『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』の結果から星座の強さを表すレーティングを算出する試み。夏の自由研究がてらやってみたら、案外面白い結果が出てきました。
 EloレーティングでもTrueSkillでもそれぞれ面白い傾向が見てとることができ、それぞれの違いも見ることができました。星占いの結果がランダムではなく何か星座の強さが背景にあるかもしれないことを示唆するものが可視化できて満足です。さらにここから踏み込んで、各星座それぞれの細かい分析や、順位の偏りの妥当性の分析を行うことについては、皆さんにお任せしたいと思います。これは「ちょっとだけ真面目なカジュアル分析」なので。




おまけ

 ここまでやっておいてなんですが、『日刊・リンゴと悪魔の未来予測』は公式が全体ランキングを発表しています。

1位: おうし座、うお座
3位: さそり座
4位: しし座
5位: おとめ座、おひつじ座、てんびん座
8位: いて座
9位: やぎ座
10位: みずがめ座
11位: ふたご座
12位: かに座

『ソウルハッカーズ2』公式の8/23のツイート

 (……これはどうやって出したのだろうか?)


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