「16球団構想」であまり語られない障壁⑤番外 サッカースタジアム他も見てみよう

今回は番外編としてサッカー場などにも焦点を当ててみたい。
Jリーグサポーターなどに限ったことじゃないが、
彼らのサッカースタジアムに関する意見を見ていると
ヨーロッパ式と言えばいいのかはわからないが、
イギリスかドイツあたりのサッカー専用、
それも超大型スタジアムに
何かと固執する人が後を絶たない。
主に新国立競技場を叩くとき。
そんな中であまり見向きをされないアメリカのMLSだが、
こちらは収容人数20,000人程度のスタジアムも多く、
Jリーグでも参考にできる点は少なくないと思う。

アメリカMLS

まずは日系企業のネーミング・ライツがついたところから。
テキサス州フリスコにあるトヨタ・スタジアム。
この航空写真だとわからないがトヨタのロゴが入っている。
収容人数20,500人だが座席がわりとなだらかなようで、
全体の縦幅は240m近くある。でかい。

次は街中にあるサッカー専用の中では収容人数が最も多いと思われる
オーランド・シティ・スタジアム。
鉄道の駅からは徒歩10分程度で、
道中にはNBAマジックのアムウェイ・センターもある。
道路に合わせやや押しこめて作った感があり、
建物全体は180mの正方形に近い形をしている。

逆にMLSで最も収容人数が少ないのが
サンノゼにあるアバイア・スタジアム。
西にはサンタクララ大学と隣接した駅もある。
すぐ北に見えているのはサンノゼ国際空港。
収容人数もあって結構こじんまりとした作りだが、
それでも170×150mはある。

変り種もいくつか紹介。

まずはボストン郊外のフォックスボロにある
ニューイングランド・レボリューションのホーム
ジレット・スタジアム。
NFLでここ20年ほど王朝を築いている
ニューイングランド・ペイトリオッツのホームでもある。
NFL用なので非常に大きく、収容人数は70,000人弱に達する。
郊外なのもあって広大な駐車場が備えられているほか、
隣に通勤鉄道の臨時駅があり
公共交通の便も悪くない…はず。
というのもこの場所だけは他の駅と距離がかなり離れていて、
前の駅から20~30分近くかかる。
距離はともかく中心部からの合計時間を日本でたとえるなら、
わざわざ目黒から乗って赤羽岩淵経由で浦和美園ぐらいか。
野球だと池袋から急行で西所沢まで着いた後
西所沢から西武球場前までに2~30分。
それぐらいの長さになっている。

NFL兼用をもう一つ。
NFLシアトル・シーホークスと共有になっている
センチュリーリンク・フィールド。
MLBと共有していたキング・ドームの跡地に建てられており、
すぐ南には日本でもおなじみT-モバイル・パークが見える。
普段は67,000人収容の巨大スタジアムで
サッカーの時は41,000人におさえているが、
それぐらいの人数は埋まるぐらいの人気を誇っているそうだ。
あと大規模競技場のことを考える場合にも、
ヨーロッパだけじゃなく
アメリカのNFLや大学フットボール場は大いに参考にできると思う。
大学のアメフトはすごいところだとNFLすら上回る規模だ。

次はポートランドにあるプロヴィデンス・パーク。
大都市ポートランドの
これまた空いた敷地に押しこめたような作りのスタジアムだが、
ここは以前アメフト兼野球場で、
2001~10年までAAAのチームもあったところだ。
それでも180×150m以上ある。
現在は球技専用に改修されており、
芝は野球場時代から人工芝。

最後はニューヨーク・シティFCのホーム、
ヤンキースタジアム。
ホームスタジアムが野球場なのだ。
ニューヨークにはもう一つレッドブルズがあり
近郊のハリソンに専用のサッカー場を持っているが、
こちらは専用スタジアムを作るまでのつなぎとして
この球場を使っている。
しかし事実上の間借りとはいえ、
札幌ドームとも違う野球専用のはずの球場を
正式なホームとして兼用するのは
後にも先にもここぐらいじゃないだろうか。
たださすがに野球用なので
サッカーのスペースはいびつな形で設置されるため、
バックネットからの距離が明らかに遠くなっている。

Jリーグのほうは

一方の日本はどんな感じだろうか。

まずは日本最大のサッカー専用である
埼玉スタジアム。
ざっと測ったところ247×224m。
さすがにでかい。

一応陸上競技場も見ておこう。

現在長居球技場が改修中のため
セレッソが再び使っているヤンマースタジアム長居。
2007年には世界陸上も開催された。
とあるサイトでは、
傾斜が急なため高さのないサッカー専用よりは見易い
と書かれていたのでここを取り上げた。
傾斜がないと陸上も見づらいはずだし
長居も結果的にこういう作りになっただけだと思うが、
見る側のことが考えられずに建てられるあたりが
公営競技場の情けなさというか限界なんだろうな。
262×220mと球技専用に比べればかなりの大きさだ。
50,000人収容と陸上競技場の中でも大きい方だから当然だが。

続いて小さめの球技場を。

ざっと見る限りJリーグホームで
かなり評判のいいと思われる駅前不動産スタジアム。
駅から近く客席も近い。たしかに見やすい条件はそろっている。
25,000人弱収容にしてはずいぶん小ぢんまりした作りになっていて、
170×130m程度しかない。
Jリーグホームの各球技場と比べても小さい部類だと思うが、
アメリカの例を見た後だけに余計に小さく感じる。

鳥栖よりもさらに小さいスタジアムになるとすれば、
パターンとしては
元々J1規格を満たさないほどのスタジアムを少し拡張した場合だろう。
その一例として三協フロンテア柏スタジアムを見よう。
とにかく小さく、150×127しかなかった。
座席は一応背もたれのほぼないセパレート式なんだが、
これで15,000人も入るのか…。

あの場所はどうだったのか

このnoteのメインになっている野球が絡んだ話でもあるので、
激怒される可能性も承知のうえで
あの場所についても見ておこう。

ただ球場跡地のほうを見ると非常に狭い。
サンフレッチェもこれよく建てようとしたなと思うぐらい狭い。
球場跡地そのものもやや円形状に広がっているから
サッカー場を建てるにはめんどくさい形。
調べてみたら左に見える
商工会議所、青少年センター、PL教団の教会が老朽化しており、
全て移転させればスペースをとれるそうなんだが
それで何とか横幅190m(ほぼ歩道なし)。
さらに上にあるハノーバー庭園と神社も地味に邪魔で、
縦幅は140mもとれるかどうか程度になっている。
かなり小さい規模なら何とかなりそうだが
30,000人となると正直微妙以下に見える。
観客席はかなり詰めに詰めて作るつもりだったのでは…。
もしそうなら、常時立っているサポーターはともかく、
それ以外の観客はリピーターにならない気がするんだが。

一方、実際に決まった北のエリア。
縦幅は敷地内の南北それぞれに川が通っている影響で
市民球場跡よりもずっと狭い120m程度になるが、
横幅は噴水や加藤友三郎像などを移さなくても
200m近くを充分確保することができる。
北側の川を暗渠化できれば縦も130mちょっとにはなりそうだが
これは無理があるか。
サッカー場は正方形ではなく長方形のものであり、
サポーターは基本ゴール裏に陣取るわけだから、
縦長になっても特に問題はないように見える。
正直なところどっちも狭いなというのが私の本音だが、
この点は公園のつくりがややこしいみなと公園も大差ない。
てか旧広島市民球場はほんと狭かったんだな。
前回挙げた東京スタジアムとそこまで変わらんぞ。

というわけで、
サッカースタジアムも大型野球場ほどではないにせよ
なかなかのスペースが必要だとはおわかりいただけたかと思う。
このサッカースタジアムにせよ野球場にせよ
バスケットボール等のアリーナにせよ他のスポーツにせよ
スポーツ以外の施設にせよ、
新しく建てないといけないのに建てる場所がない問題は
本当に深刻である。
なぜかサッカーは
やたらと他のスポーツを馬鹿にして
サッカー専用スタジアムを優遇しろと主張する輩
(サッカーファンではないただの煽り屋の可能性もあるが)が目立つが、
本来は各競技や業界の垣根をこえて
共通で考えなければいけない問題なのだ。

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