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プロ野球はなぜ16球団にならないのか~「16球団構想」を阻む「既得権益」の「壁」

2020年1月に
ホークスの王会長が表明してから
たびたび話題に上る「16球団構想」。
しかしあれから2年が経過したものの
実現に向けての動きはあまり見えてこない。
なぜ今もって
「16球団構想」は実現しないのだろうか。

プロ野球新規参入の高い壁

とはいっても
2022年2月の時点で実現できない理由は
山ほどある。
誰もが想像できるだろう理由は
既に2年にわたって続くパンデミック。
以前のような形での観客を入れての試合はなかなかできず
新規参入するにしても各企業の経済状況は苦しい。
ただでさえ厚い壁が
さらに厚くなった現状では
新規参入はおろか12球団の維持も重要なテーマになり、
これまでのプロ野球の興行形態も
大きく変化する可能性だってある。
この「ただでさえ厚い壁」については、
巷ではあまり主張されない内容ではあるが
今までのnoteにも書いてきたので
そちらも読んでほしいところだ。

さて今回は
そうしたパンデミックなどに関わる内容とは別な壁の話。
早い段階から
16球団を阻む壁として批判されていた
読売新聞の渡邉主筆や既存12球団といった
「既得権益」について考えてみよう。

「既得権益」と小学校一年生の足し算

さてこう書くと
「いや本当にその通り。
あの既得権益どもが反対するから
いまだに16球団構想が実現しないんだ。
球界の発展のためには
どれだけの負担を負ってでも
奴らは俺たちに従わなければならないし、
それでも反対する連中は排除しなければならない」と
言う人がいるだろう。
実際、そうした声は巷でよく目にするものだ。
だがちょっと待ってほしい。
今の主張はどこかおかしくないだろうか。

何がおかしいか。
「16球団」とは
「新しく作られた4球団と既存の12球団の合計」
すなわち4+12=16で成立する。
どちらが欠けても成り立つものではなく、
新規4球団と既存の12球団の両方が
共存することで初めて16球団は実現するはず
である。
ところが先ほどの主張は
「16球団」を構成するはずの既存12球団を
「既得権益」と決めつけ、
非常に大きな不利益を被らせるか
排除しようとすらしている。
「既得権益」の経営が行き詰まり
12球団の数が減ってしまえば
4球団を加えても絶対に16球団にはならないのに、
12球団特に巨人やセリーグ、関東・関西の各球団を
異常なほど敵視し
わざわざ財政を悪化させようとしているのである。
昔から
ヤクルト、横浜、ロッテなどを地方へ移転させようとする
主張をしばしば見かけるが、
これもその亜種と言っていいだろう。

「既得権益」から想定される「球界のあるべき未来像」

さて
既存の12球団に対して
「収益が上げられなくても受け入れろ」と言うのなら
新規の4球団に対してはどうなのだろう。
他の12球団が
ろくに収益をあげられないように仕向けているのに
新しい4球団がしっかりとした利益を出せると考えづらい。
そうすると、
彼らは「プロ野球へどんどん新規参入させろ」とは言うが
せっかくチームを作り参入した球団に対しては
これといった収益をあげさせるつもりはない
ことになる。
「野球はあくまで文化なのだから
それで金を得ようとするなんて卑しいことだ。
大赤字だろうと続けるのは当たり前」
ということなのかもしれないが、
参入する球団からすればたまったものではない。

さらにこれでもう一つ
明らかに不利益を被る人たちがいる。
彼らが「門戸を広げろ」と主張している
現在、未来のプロ野球選手
だ。
利益をあげることが許されないこの「16球団」で
少しでも赤字を軽減するには、
選手の給料を大幅に下げざるを得なくなる。
また
「プロ野球の選手は金をもらいすぎだ」
と言う野球ファンは結構多く、
「野球をやるのなら
アメリカならマイナーリーグや独立リーグに
中米、台湾、ヨーロッパなどの海外にも行くべきだ」
「新球団は独立リーグから参入させればいい」
と言う人もかなりいる。
これらを総合すると
現在、未来のプロ野球選手に対して
「プロは名乗らせるが
金銭面はアマチュアレベルであるべきだ」
「年俸はせいぜい中米や独立リーグ程度、
良くても台湾程度で充分」
が本音
ということになる。
特にこのてのスポーツライターなどは
「プロたる者が金のために野球をするなど卑しい」
と考えているのかもしれないが、
こんなプロ野球で
子供の野球人口が多少増えたとしても
プロ野球選手という名のワーキングプアになりたい
というアマチュア選手がそんなに出てくるだろうか。
そのわりに
こういう主張をするライターほど
「自分こそが真のスポーツライター」を名乗る人物が
やけに多いが。

「16球団構想」が実現しない最大の理由

最後にもう一つだけ考えてみよう。
「16球団構想」を推進している
王会長や古田敦也氏などは
果たしてこんな「16球団」を目指しているのだろうか?
元一流選手であり監督なども務め
球団経営にも携わっている彼らが
将来の全球団も野球選手も
ただ路頭に迷わせるようなプロ野球界を?
どう見てもありえない
実際に球団数が増えないのは
既存球団と新球団の両方が
共存し栄えなければ16球団にはならないとわかっている
から、
そのために
今そびえている高い障壁を乗り越える道を
模索し続けているからと
解釈すべきだろう。

一方、
既存球団などを「既得権益」と非難する人たちにとっての
「16球団構想」は
参入させるだけなら壁はさほど厚くなく
現在の状況でも実現は難しくないように、
少なくとも彼らの目には見えるのだろう。
だがこの「16球団構想」が実現するわけなどなかったのだ。
ここで言われる「16球団構想」は
そもそもが「16球団」にするつもりなどなければ
水面下で動いている「現実の16球団構想」でもない、
全てがまがい物の「16球団構想」
なのだから。

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