新卒で入社した会社の話⑨
2年目に突入した。
私の営業所には、空元気な男の子が配属された。
相変わらず忙しかった。
ストレスも鬼のように湧いていたが、ずっとこうなるだろうと予想していたことだったので、案外耐えれもした。
新入社員の男の子はもちろん営業配属。
あれだけ憎たらしい営業社員たちから可愛がられていた。
彼を見て思った。
あぁ、これが理想の新入社員の姿なのかもしれないな。
そんなに頭は良くないし、全然しっかりしてないけど、とりあえずバカできて。
私のように暗くて、しっかり者に見られがちで、ちょっと学歴つけたようなのは一番嫌われるんだろうな。
転職活動も全くうまくいかなかった。
書類を出しては判をついたようにお祈りメール。
学生時代に経験した就職活動から2年も経ってないけど、依然自分の置かれている立場は変わらないんだな。
書類を書いていても痛感していた。
これといって学生時代に輝かしい成果を挙げられもしなかった。
新卒で勤めた会社を1年ちょっとで辞めようとしている。
そんな人に強みなんてあるわけないし、アピールすることなんて何もなかった。
たまに面接に行けたとしても、普段仕事でも喋り慣れていないからか全く言葉が出てこない。
そんな状態の上、アピールできる材料もない。
内定なんて出るわけがなかった。
午後休暇をもらって新幹線に乗って、家族に内緒で面接に行ったこともある。家族には夜に友達と遊んで帰ると嘘をついて、ひっそり遠方へ。
夜にしれっと帰ってくる。そんな暮らしが半年以上続いた。
当時は実家暮らしだったし、そんなに出て行くお金もなかったから、ある意味転職活動に使えたのだけはラッキーだった。
ちょうどその頃、大学4年生だった弟に内定が出た。
東京へ勤務するとのこと。
あれだけ地元に残って、家族を支えると言っていたのに、一瞬にして裏切ってく。私の行きたかった東京へのうのうと行く。
家族なので悪く言いたくないが、弟を信用したことは一切なかったのでまぁ想定内だよなと開き直った。
何より、人の喜びを一切喜んでやれない自分自身が最も嫌だった。
いつまでこんな暮らしを続けるんだろう。
私何か悪いことしたのかな。
どうあがいても変わらないこの状況に、隠れて泣くことしかできなかった。
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