見出し画像

職場のマネキン

勤務最終日が来た。

「最後だし写真撮ろうよ」

事務の村井が寂しそうに声をかけてくれた。

母親のような存在で、わからないことがあったらすぐ電話していた。彼女だったからこそ色々聞けた、おっちょこちょいだが、なかなか憎めない人だった。

社内業務をしているときに、たわいも無い話をするのが、会社にいた時間の中で好きな瞬間だった。

一番若い原とは、何かにつけて自分のペースで、業務中に愚痴のラインや電話をくれた。彼女の行動力は間違いなく営業向きだと思う。頑張りすぎずに頑張ってほしいな。

土佐はカメレオンのような子だった。印象としては、すごく落ち着いた大人のような感じだが、一方で印象とはだいぶかけ離れたルーズさのある子で。

とはいえ、よく金曜日とか一緒にご飯行ったな。独身の私にとっては一人で食べなくて良い嬉しい時間だった。

店長の永川は、未経験の私に対して個別に商品の勉強会の時間を取ってくれたり、現場について来てもらったり。

一度だけ一緒に同行したことがあったな、昼ごはんを食べに行こうとしたが、コロナだったため店が閉まっていて、コンビニ飯を食べたっけ。

たった1週間しかいなかったが、後任の森本の適当さにもだいぶ救われた。

最終日なんて、やることないから、営業していた地域に自宅があるという矢田亜希子のマンション見に行った。

短い時間だったけど、そこそこ楽しかった思い出が一人一人にある。


正直、職場を離れることには慣れている。

どこの職場でも悲しく終わりたく無いので、基本的には明日も会えるよね・・みたいなノリでお別れする。

「またすぐ連絡するね」とだいたい言ってくれるが、不思議なもので職場関係の方は、新卒で入社した会社の同期以外、連絡をくれたこともしたこともないし、もちろん会った事もない。

それだけ職場の人間関係って良くも悪くも特殊だと思うし、同期というものはとても貴重なものだと思う。

送別会もコロナ禍にも関わらず、行ってくれた。まさか、前回の飲み会で、異動で誰かが新しく加わると盛り上がったのに、次の飲み会で私の送別会になるなんて思いもしなかった。

人生とは本当に何が起こるかわからない。

楽しい時ほど怖い。永遠という時間は絶対にあり得ないから。


恐らくこの南武線を乗ることは当分ないと思うし、武蔵新城駅で降りることは90%以上の確率でもうないだろう。

そしてこのメンバーに会う事も。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?