新卒で入社した会社の話⑥

7月に差し掛かるころ、私の歓迎会をすることになったと聞いた。

私の予定は一切聞かれず、予定も勝手に組み込まれていた。

歓迎会に行ったところで特に楽しい時間を過ごせるとは思えなかったし、本当に行ってほしくなかった。

当日、所長より簡単な挨拶があって、ビール瓶もって一人ずつ回れと指示される。

自分の歓迎会なのに、自分がへこへこしにいかなきゃいけないんだ・・

社会人ってくそだな・・と思った。

仕方なしに、一人ずつ挨拶をしにいく。

これといって話すこともないし、きっと向こうもないのだろう。

「頑張ってね」

の一言でたいてい終わる。

普段元気な元甲子園球児だという先輩に、野球の話をしてみても、あっけなく、話が続かない。

私ってこんなにコミュ力なかったっけ??

全く持って歓迎されている感じはしなかった。

いわゆる空気状態。形だけとりあえず「新入社員の歓迎会しておかなくては」という感じだったんだろうなと思う。

2次会に誘われることもなく、普通にバスに乗って帰っていった。

学生時代、飲み会というものは比較的好きだったが、それは自分という人間を受け入れてもらえているから、きっと楽しいと思えていたんだな。

空気状態のやつが飲み会に参加しても、ただのサクラ状態だ。

会社の飲み会なんて一生参加したくない、心から思った。


その3週間後、所長が無駄な気遣いを見せて、近くのホテルの食事券をいただいたので、パートさんも含めた女性陣だけで行ってきなと食事券を渡してきた。

歓迎会の時よりは小規模だし、比較的立場も近い人が多かったので、ここではまだ少し楽しめた。

パートの一人が、
「ファーファさん(私のこと)、仕事どうなの?」
と、専門職の松井に尋ねた。

すると、「すごく頑張っているよ」と笑顔で答えていた。

個人的に、私にとって松井は、一番仕事のことを聞きやすい雰囲気があり、そういってもらえて、涙が出そうだった。

その流れで、松井と話すきっかけができ、仕事で不安なこととかを全て話した。

「新入社員だし、だれでもそうだよ。心配なんかしなくていいし、私もいろいろやらかしてきたから」

心が壊れそうなこの時期に、このように親しく話をしてくれ、とてもほっとしたのを覚えている。

この営業所にきて、初めて人として話してもらえた感があった。

私は、松井の為に頑張ろう、松井に迷惑をかけないように頑張ろう、この人についていこうと思った。

そんな松井は、10月に本社へ異動することになる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?