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大切なものもの。

「大切なものを教えてください」
そんな募集企画をnoteで知って、ソファに座りながら辺りを見回してみた。

買ったばかりの黒のスウェット、
愛用している超細口のコーヒーポッド、
夜、やわらかい光で癒してくれる、無印良品のシェードランプ。

今使っているものばかりに目がいく。そりゃそうか、よく使うから目の届く範囲に置いてるんだよな。

これらが大切かどうかと聞かれれば、もちろん大切だと答える。でもなんだろう、「大切なものを教えてください」の答えとして、核心はつけてないような気がする。瞬間的には大切にしてるんだけど、もっとこう、不思議と何年経っても思い出す、心のどこかにずっと居場所がある、そんな大切なものが他にある気がする。

少し考えていると、ポツリポツリ、細い雨が時々顔に当たるみたいに大切なものが浮かんできた。なんの脈絡もないけれど、思い出したいくつかを書いてみる。

孫悟空のフィギュア

小さい頃はなんだって想像して楽しめたと思う。強く願えば好きな夢だって見れた。今もできれば幸せだろうな。

小学生の頃、買ってもらった孫悟空のフィギュアをお風呂に持ち込んで、浴槽のヘリの部分で遊ぶのが大好きだった。たくさんの敵を想像して、フィギュアを動かして悪者をやっつける。孫悟空のフィギュアは上半身と下半身が分かれて動くようになっていて、少し捻ってキックのポーズにしたり、空中に飛び立って必殺技を繰り出したり。今でもその形や手触りは覚えている。

実家のどこに置いてあるんだろう。
今度帰ったら探してみよう。


文庫本「ねじまきどりクロニクル第2部 予言する鳥編」

村上春樹の小説が好きでよく読む。同じ小説を2度は読まない性格なのに、村上春樹の小説だけはどうしてか読み返したくなる。

その中でも特に心に残っているのがねじまきどりクロニクル第2部。内容が印象的でというより、なんてことない、母親とのやりとりとセットで記憶に残っている。

高校生だったと思う。ぼくは車の後部座席にいて、斜め前の運転席には母親がいる。車は古本屋さんの駐車場に停まっていて、ぼくは母親に「ねじまきどりクロニクル第2部 予言する鳥編」を買ってきてほしいと頼んでいた。

どうして自分で行かなかったのかよく覚えていない。ミニストップのフライドポテトを手に持っていた気がする。塾前の腹ごしらえだったんだろうか。それにしては外が明るかった気がするけど。
とにかく、本のタイトルと巻数を母親に覚えてもらうよう、熱心に説明した気がする。ねじまき鳥だし、クロニクルだし、第2巻予言する鳥編だし、母親にとっては聞きなれない言葉の連続だ。

間違えることなく買ってきてくれた母親に改めて感謝したい。

アーバンリサーチの緑のネクタイ

緑のパーカーが似合う女の子にもらった、アーバンリサーチの緑のネクタイ。誕生日のお祝いだったかな。別れてからも仲良しで、披露宴にも内緒で呼んでくれた。

光沢のある深い緑で、金色のストライプがさりげなく入ったネクタイ 。お気に入りで未だに使ってるよとこの前話したら、予想以上に喜んでくれた。彼女と話していると何かが始まりそうな気もするし、反対に、もう取りに戻れない場所に忘れ物をしてきてしまったような、複雑で不思議な気持ちになる。

もちろんそんな話しは口に出さない。でも時々、何かの拍子でふたりきりになった瞬間に、そこにお酒の力も加わっている時なんか特に、名前もつけられないこんな気持ちを語ってしまいそうになる。


ガジュマルちゃん

もう10年近く共に暮らしている。親友の次くらいにぼくの恋愛事情に詳しい。「花に声があるなら何を叫ぶんだろう」なんて歌詞の曲があったけど、ガジュマルちゃんに声があれば「私は全部見てきてるんだからねっ」とか言われそう。

ターコイズブルーの植木鉢に入ったガジュマルちゃんは、ほとんど手がかからない。2週間に1回、思い出したように水をあげる。それだけ。日光の具合とか、枝のこととか、難しいことは考えない。悪く言えばほったらかしにしている。それなのにすくすくと育ってくれていて、その生命力には驚かされる。

部屋の中に別の生き物の存在を感じると、なんだか安心できる。自室で一人よりも図書館の方が勉強に集中できるみたいに、ほどよく何かの気配がある方が、どうしてだか居心地が良い。ほったらかしにしているくせに愛着はあって、我ながら勝手だなぁと思いつつ、愛情を込めてガジュマルちゃんと呼んでいる。


大切なものを語る魅力

ぼくはけっこう、なんでも最初だけ大切にしがちだ。買ったばかりのノートは最初の数ページだけ丁寧に書く。秋に向けて買ったニットをエマールで洗っているのは、きっとこの時期だけだと思う。

挙げてきた大切なものから紐解くと、ぼくはとびきりこれ!と大切にしているものがあるより、なんだか忘れられない、なぜだか気に入っている、そんな小さな大切なものをいくつも抱えている傾向にあるみたいだ。

それは瞬間的なものも多く、新しいものにすぐ代わってしまう。その中で生き延びた、どうしてか最後のページまで丁寧に書き続けられたノートが、ごくたまに見つかる。

そういう大切なものには、大切に感じる理由だったり、何かしらのストーリーがあると思う。ドラマチックな話しじゃなくても、自分にとって印象深いストーリー。

そんな話をぜひ、こちらの企画に寄せて書いてみてはどうだろう。

#私の大切なもの


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