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【司法/予備・選択科目の選び方⑥】国際関係法(私法系)編〜「趣旨」と「学説」が得点への道〜

司法試験・予備試験の選択科目を何にするかは決めましたか?

倒産法、経済法、知的財産法、労働法、国際関係法(私法系)(以下「国際私法」)、国際関係法(公法系)租税法、環境法…たくさんあって悩みますよね。

「興味があるのは国際私法だけど、自分に合わなかったらどうしよう…」「基本7科目がまだ不安だからできるだけ楽な科目がいいな…」「国際私法に決めて法科大学院でも履修はしているけどイマイチ勉強法がわからない…」など、様々な悩みがあると思います。

本記事は、司法試験や予備試験の選択科目を何にするか決めかねている受験生と、選択科目を国際私法に決めたものの勉強法がわからない受験生に向けて、様々な不安点・疑問点を解消していただこうと執筆したものです。是非、選択科目を決める際の参考にしてください!(ライター:浦山/The Law School Times ライター)



国際私法とは

国際私法という法律はない

国際私法とは、国際裁判管轄・国際関係法・国際取引法の総称をいいます。選択科目の国際私法では、主に国際裁判管轄と国際関係法から出題されます。司法試験では第1問で家事事件に関する問題が、第2問では財産に関する問題が問われる傾向にあります。稀に、国際取引法について第2問で問われることがあります。予備試験では、家族関係が多く、たまに財産関係が問われる傾向にあります。

国際私法を選択した場合には、家族関係と財産関係についての裁判管轄と通則法(法の適用に関する通則法)の2つをマスターする必要があります。

国際裁判管轄のイメージ

皆さんは、民事訴訟法を勉強する過程で、管轄について学んだ記憶はあるでしょうか。訴訟どこの裁判所に提起できるかは民事訴訟法、人事訴訟法、家事事件手続法に規定されています。国際裁判管轄は、いわば日本全国の管轄を世界に広げたものです。例えば、国際離婚や外国人の不法行為に対しての損害賠償請求についてどこの国の裁判所に提起することができるか、どこの裁判所に提起するのが適切かを決めます。

通則法のイメージ

管轄の次に問題となるのは、どこの国の法律で判断すべきかという点です。文化や宗教の違いによって法律の規定が異なります。そのため、日本で訴訟提起がなされると決まった後には、どのような法律関係が問題となっているかを考えて、通則法に従い、適用すべき法律(以下「準拠法」)を選択し、適用結果まで考えます。つまり、通則法は、この訴訟においてどこの国の法律に従って判断するかを決め、適用までしていいのかを示すものです。

民法に似ている

国際私法は、ズバリ民法・民事訴訟法の知識の延長であると言えます!

なぜなら、国際裁判管轄では民事訴訟法の管轄知識が不可欠で、民法では親族・相続・債権・物権・総則・担保物権の趣旨や概論のような知識が必要になるからです。

例えば、国際私法においての裁判管轄は、主に、相手方に酷なものではないか、つまり、そこの裁判所に通いやすいか、証拠収集が容易かを考えるポイントとなります。

民法では、国際私法で準拠法が日本法となった場合に、日本民法の適用結果まで記載しなければならない場合が多いので、婚姻するとなると、婚姻年齢、届出がなされているかまでの要件事実的な知識が必要になります。これは、他国の法律の適用も同様に行うので、法律の適用を条文から考えるという勉強も可能です。


どんな受験生に向いているか

国際私法では、民事訴訟法の管轄、民法の知識が必要になります。しかし、民法の論点や規範を記憶するというよりも、民法の条文をきちんと読んで成立要件をきちんと処理することが必要です。そのため、民法が得意な人は、民法のイメージとは違うと思うかもしれせん。

他方で、画一的な処理や決まった型を運用するのが得意な人にはすごくいい科目です。国際私法は、大まかな流れが同じで、通則法独自の趣旨や学説を覚えておけば大丈夫なので、そのような方には大変おすすめです!全く知らない法律を見るのが好きという人にもおすすめです!(筆者はこの理由で選択しました)。

また、家族法に関連する問題が頻出なので、家族法に手が回っていない、短答知識の補助的な勉強に使いたいという理由で選んでもいいと思います。そして、国際私法では法律をきちんと適用するので、知らない法律の条文を読んで、きちんと適用するという実務に出てから必須となる考え方を学ぶのにも少し役立つと思います。

なお、国際私法の裁判管轄と通則法の両方を勉強して、なおかつ民法全体が絡む上、取引法や条約まで問題となると聞くと、範囲が広すぎて無理だろうと感じます。しかし!!!民法の深い理解は必要とならず、通則法や管轄の趣旨は似ているものが多いので覚えやすいと思います。条約も使うものは少なく、適用条文もほとんど決まっておりきちんと条文を読めば解けるので、意外と負担は少ないと感じると思います!


学習方法

まず、オススメの書籍等を紹介します。

松岡博『国際関係私法入門』(有斐閣、第4版補訂、2021)
中西康ほか『国際私法』(有斐閣、第3版、2022)
櫻田嘉章『演習国際私法CASE30』(有斐閣、第1版、2016)
・『論文対策国際私法』(辰巳法律研究所、第3版、2021)

「松岡博『国際関係私法入門』」は、そこまで分厚くはないので、国際私法の概要をとらえるのにいいでしょう。そのあとは「櫻田嘉章『演習国際私法』」や『論文対策国際私法』を使用して演習を重ねて「中西康ほか『国際私法』」は辞書的な使い方をするとよいと思います。より理解を深めたい部分については『国際私法判例百選』も学習教材としてオススメです。

試験対策には演習がマストですが、中心に据えてほしいのは過去問です。毎年非常に良質な出題がなされており、最良の演習教材です。法務省のホームページにて問題・出題趣旨・採点実感が公表されていますから、必ず入手して取り組んでください


おわりに

いかがだったでしょうか?国際私法がどんな選択科目なのか、どのように学習すればいいのか、視界がクリアになったでしょうか。「もう少し国際私法がどんな法律なのか知りたい」という方、「自分に合うかまだ不安…」という方は、上記に列挙した書籍を書店等で手にとって眺めてみてください。よりイメージが膨らむはずです。


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