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介護現場に潜む「不適切ケア」に要注意

介護現場に潜む虐待の卵を「不適切ケア」と呼びます

高齢者介護において虐待はいけないものだということは常識として知られています。

しかし日々の介護の現場においては虐待まではいかなくとも、高齢者に不快な思いや不安な気持ちにさせる対応になってしまう介護シーンというものが起こり得ます。

そうした正しくない対応の仕方は「不適切ケア」と呼ばれ、介護の現場でとても問題視されています。

それは日ごろの不適切ケアが慢性的に続くことによって虐待へと発展してしまう可能性がとても高いからなのです。

とはいえ不適切ケアは介護者の未熟さや無意識によるものも結構あります。「えっ、こんなことも該当しちゃうの?」とびっくりされる方もおられるようですので、実際の例を通して不適切ケアがどんなものか、改めて確認しましょう。

例えばこんなことが不適切ケアにあたります

①トイレに頻回に行きたがる高齢者に「さっきも行ったでしょ」と言って対応しない。
②トイレのドアを開けたまま排泄介助する。
③排泄に失敗した人に対して「ああ、漏らしちゃった」等という。
④ご飯とおかずをひとまとめにして食べさせる。
⑤黙ったまま声掛けをすることなく食事介助する。
⑥食事が進まないときに「食べないと点滴になっちゃうよ」等と言っておどす。
⑦ドアやカーテン、間仕切りのないところで入浴や着替えをさせる。
⑧入浴時、手指や陰部などの細かいところを洗わずに放置する。
⑨食べかすなどで汚れた衣類をそのまま着せている。
⑩転びやすい人に「座っていて」などの言葉で制止し、立ち上がることをさせない。
⑪車椅子を早く押したり急に方向を変えたりする。
⑫ナースコールが頻回な人を無視したり器具を取り外してしまう(線を抜いてしまう)。

いかがでしょうか。
介護現場のあるあるかもしれません。

しかし介護側の忙しかったり余裕がないなどの一方的事情で、相手を不安や不快にさせる行為はどれも不適切ケアにあたります。

これらをなくすには、介護者一人一人の倫理観を高める一方で、一人で大変な状況を抱え込まない(仲間と課題を共有する)ことがとても大切になります。

虐待の典型例「身体拘束」に近い不適切ケア、ありませんか

介護保険施設で禁止されている「身体拘束」は虐待だということもよく知られています。

しかし身体拘束というものが紐をつかったり拘束服を着せるなどだけではないということも私たちは認識しておかなければなりません。

例えば認知症があってベッドから転落の危険が高い高齢者に対して、転落を防ぐために低床マットで休んでもらうように工夫するのは良いアイディアですが、立ち上がって歩き回らないためにわざと立ち上がりにくい低床ベッドに座っていてもらうというのは、紐こそ使っていませんが、目的としては身体拘束に近い状態です。

紐を使うかどうかではなく、高齢者の行動を介護者側の都合で制限するかどうかというところがポイントになります。

不適切ケアにしないためには介護側の意図で制限するのではなく、どうしたら急に立ち上がらなくなるのか根本原因を解決したり、あるいは安定して立ち上がることができるようにリハビリテーションの視点からアプローチするなど、多角的に解決方法を探ることが大切になります。

介護を行う上でどうしても発生しやすいグレーゾーン、「不適切ケア」がなくなるように、普段の高齢者への接し方ひとつひとつを丁寧に行っていきたいものです。


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