自傷をはじめた話

成人したばかりの私は、お気に入りの半袖のワンピースを着て友達と出かけた。

じとじとべたべた、まだ梅雨の湿気が残る嫌な暑さの中で安息を求めて向かったカラオケの広いルームはまさに天国。

クーラーの設定温度を極限まで下げる半袖の私に、長袖の暑苦しそうな服しか着れない友人は寒いと言った。この人感覚バグってるんじゃないか? と思ったが、しぶしぶ設定温度を上げた。

私と友人しかいない部屋では、公共の場ではとてもできないような話も大声でできるので気楽。たとえばAmazonの某咳止めの値段がどうだ〜とかそういうの。

そんな話をしながら、私は友人に、かの貝印のカミソリをもらった。自傷行為をするための。

写真では見たことのあったかわいい花のマークがついたピンク色のカミソリを実際に手にし、まるで画面越しに見ていた芸能人にはじめて遭遇したような高揚感を覚えて、空中で手首を切る動作を繰り返すなどしていたら、「今すぐにでも切りそうで怖いから早くカバンにしまえ」と咎められた。
絶対に刃物を振り回してはいけない。

私は咳止めの過剰摂取はするが、自傷行為はしたことがない。厳密に言えばオーバードーズだって自傷行為だろうが、私は痛みを伴う行為はしたくなかった。幼少期、大したことのないかすり傷で泣きわめくような子どもだったし、成人した今でさえも痛みには人一番敏感。

リストカットに興味を持ったのは、ODの代替としてだった。気になるけど多分私はやらないだろうなー、と思いながら友達の傷だらけの左腕を見ていた。

カミソリだって、貰ったけどすぐには使わないかな、と思った。一応貰っとこ☆みたいな。だって、腕切るのなんか怖いし。

✨️そしてその日の深夜、腕を切った✨️
完璧な即落ち二コマである。

家族に見つかることを恐れて手首ではなく、半袖で隠れる二の腕の部分を切った。しかし、自傷をはじめて一週間、既に気づいたら手首を切ってしまっていた。はじめて切った時の話は、また別の記事で書きたいと思う。

手首につけてしまった傷はひとつだけなので、上手いこと隠しているが、既に二の腕は何本も線が入っていて、そのうち切る場所がなくなりそうだ。そうすれば、手首を切るしかない。
いずれあの半袖のワンピースも着れなくなるのだろうか? ならば、今のうちにたくさん着ておきたい。


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