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世界一周14日目(2)log アリススプリングス到着

この記事はオーストラリアのアリススプリングスで書いている。

前回の記事の通り、パースからアリススプリングスまで就航したばかりの航路でやって来たわけだが、ここで私はイースターというものの洗礼を受ける。

存在自体は知っていた。なぜなら海外渡航者に向けて外務省が注意情報を出していたから。

「毎年イースターの時期はテロの危険性が高くなります。特に今年はガザ地区の侵攻を受けてますます危険度が高くなっているので、注意するように」
(!ガザ地区の即時停戦を求めます)

幸いテロの脅威には今のところ立ち会っていないが、イースターの時期に観光客が陥るという非常事態には立ち会うことになった。

日本ではほとんど馴染みがないが、感覚としては年末年始が近いだろうか。
そう、全てのサービスが止まるのだ。デパート、飲食店、日用品店、スーパー、そして……バス。

飛行機からの光景。茶色いのは砂漠?



アリススプリングス空港はシャトルバスがあると聞いていた。空港に止まっているので、乗り込んでお金を払えばいいと観光情報サイトで見たのだ。

到着直後は乗客もたくさんいたわけだから、おそらく来ていたと思う。
しかし何も知らない私はのんきに、予約したゲストハウスのチェックインの時間までは、と空港のロビーで時間をつぶしていた。

昼ごろだっただろうか。人の気配がないことに気づいた。
2、3人の警備要員らしきスタッフが暇そうに談笑しているのは見えた。しかし、あたりを見渡しても、出発待ちの乗客の姿も、誰かの到着を待つ人の姿も見えないのだ。
さすがに様子がおかしいと思った私は空港のロビーを出て、シャトルバス乗り場の前で待機することにした。

しかし、待てども待てどもバスが来ない。そういえば空港内にいたとき、後続の便についてのアナウンスは聞こえなかった。飛行機がないならシャトルバスも来ないだろう。
1時間近く待って、ついに覚悟を決めた。

タクシーを呼ぼう。

海外では乗ったことすらないけれど、この際仕方がない。
しかしどう呼べばいいものか。国際電話は避けたい。
悩んだ末に、空港内のカウンターにいた優しそうな人に、

「Excuse me,Can I get a taxi?」と聞いてみた。断っておくが、私は小学生レベルの英語話者です。

彼は「Taxi?」と聞き返した後、穏やかな声で、
「あっちの方に行けばいいよ。道の真ん中にある」
と指をさしながら言った。

ん?呼んでくれないのか……。レンタカー会社の人だからかな。

でも、サンキューソーマッチ!とりあえず向こうに行けばいいのね。外に出て、言われたとおりに向かってみると、道の真ん中にはタクシー乗り場。もちろん来る気配はない。

しかし、タクシー乗り場の前には公衆電話があった。

そうか!タクシー会社直通の電話だな?これで電話をかけろということだ!と、かすかな希望を見出して受話器を取るが、繋がらない。

落胆しながら案内をよく読むと、電話をかけるにはプリペイドカードか現金がいるらしい。短い滞在とたかを括っていたので、私は現金を持っていない。

詰んだ。

どうしよう。もう歩いていこうか?検索してみるとホステルまでは徒歩3時間半。
私は泣きそうになりながらベンチに座った。国際電話の掛け方を調べながら。

幸い、空港から飛んでいるWi-Fiは人がいないこともあって快速だった。Rakuten Viberをインストールし、さてどこのタクシー会社にかけたものかと英語でサイトを調べていると、先ほどのレンタカー会社の人が心配そうにやってきた。

「大丈夫?」というようなことを言ったので、
「現金がなくて、クレジットカードしか持っていないので、電話をかけられなくて」と公衆電話を指さすと、彼はショックを受けたような表情で、
「ああ!タクシーを呼んで欲しかったんだね」と言った。

そのとき気がついた。確かに「Can I get a taxi?」だと語弊がある。「Can you call a Taxi?」と聞くべきだった。1つ賢くなりました。

彼は私に名前を尋ねつつ、自分の携帯でどこかに電話をかけてくれた。
「この辺りで一番安いタクシーの13Cabsを予約したよ。15分くらいで来るから、空港の中で待ってて」
彼はそう言って去って行った。退勤後だったのだろう。ありがとう、ありがとう!感謝の涙がこぼれそうになった。


しばらく待っていると、静かな空港ロビーに自動ドアの開く音が響いた。

サングラスをかけた大きなBroが、白い歯を見せながら私の名前を呼ぶ。ビッグなBroは乗ってきたタクシーもビッグだった。軽く10人くらい乗れそうだ。

支払った金額は4700円。痛い出費に涙が出た。バスなら2000円だったのに。けれども無事にホステルに着くことができた。
ありがとう。全ての人よ。ご慈悲に感謝します。

ホステルでチェックインを済ませた後、軽く買い物をすることにした。

空いているスーパーを見つけるのも一苦労だった。どこもかしこもClosed。
Googleで執念深く検索すると、川を渡った先にあるスーパーが営業しているようだったので、向かう。

赤い橋

川沿いをしばらく歩いていると、歩行者用の赤い橋を見つけた。Google Mapで示されている橋だろう。
赤信号の前で止まってぼんやり眺める。

橋と並行に、車用の道路が敷かれていた。車が通るたびに水飛沫をあげている。
川の水が道路に溢れているらしい。オーストラリアらしい豪快な光景だと思った。

川の色は茶色く濁っていたが、流れはゆるやかで、木々が生い茂り、美しかった。


3月下旬は秋に差し掛かる頃だというが、日差しが非常に強かった。
信号を待ちながらダラダラと汗をかく。オーストラリアではサングラスが必要とガイドブックに書いてあった理由を実感した。

ふと、オーストラリアは白人の国というイメージが強いのはなぜだろうと思った。
日差しが強い国にいる人は肌が日に焼けて黒い方が自然ではないか。赤道が近い国の人は黒い肌なのに。

信号が変わった。橋は思っていたよりも長く、川は大きかった。

川に木が生えている


景色に見惚れて、時々立ち止まりながら長い橋を渡っていると、どこかから子どもたちの楽しそうな声が聞こえた。見ると、アボリジニの子どもたちが川で遊んでいる。

そうだ、彼らがいた。
パースの街ではほとんど見なかったが、アリススプリングスではよくアボリジニの人々を見かけた。

彼らは一目見ただけで異なる文化を持つ人だとわかる。黒い肌と素足。
街角に座りこむ彼らの前を通るたびに、どこか見定められているような気がする。

川で無邪気に遊ぶアボリジニの子どもたちは眩しかった。日に焼けることなんてまるで気にしていない。

サングラスをかけた白人の乗ったバンが、水飛沫を上げながら彼らの横を通り過ぎる。

目を防御しなければ暮らしていけない人々が、どうしてこの国の今日のマジョリティになったのだろう。移民ということは何となく知っているけれど。
答えがわかった時の記事はまた後日。


シャワールームにシャンプーとボディーソープがあるかどうかを確認し忘れたことに気づいたのは、スーパーの前に着いた時だった。

とりあえずの飲み水とミックスナッツを買い、アメニティ類については「ある」方に賭けた。
その夜。私は再び、小さな石鹸で髪をキシキシさせながら全身を洗うことになった。

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