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世界一周36〜43日目log ニュージーランド南島

ニュージーランド、南島についての記録。
今回は写真が多めです。データ通信量にご注意を。

クイーンズタウン


ニュージーランドには、3週間ほど滞在する予定だった。

南島で2週間過ごすつもりでいたのだが、気づけば北島で2週間が過ぎていた。
帰る日も決めず、あても無く出た世界一周の旅だが、今回ばかりはバンコクで2回目のA/B型肝炎混合ワクチンを打つ予定がある。タイ行きの航空券もすでに予約済みだ。

結果として、南島滞在はわずか7日間となってしまった。惜しむべきは悔やむところがないところ。北島は全てが必要な時間だった、短すぎるくらいに。

発展を続ける多国籍街オークランド、穏やかな海街パイヒア、鏡張りの99マイルビーチ、壮大な海が広がるレインガ岬、青い星々のワイトモ洞窟、メルヘンな世界の住人になれるホビット村……。
どこも素晴らしい場所だった。詳細はこちらで。

ウェリントンの港で一瞬だけ見えた虹


話を南島に戻そう。今回の滞在でテカポは外せないと思っていた。

実現すれば世界初となる「星空世界遺産」の登録を目指しているテカポ。ぜひとも晴れた日に行って、その星空を堪能したい。

そんなことを考えながら、私は首都ウェリントンを徒歩でのんびりと観光していた。
マウントヴィクトリアにのぼり、一息ついた私はコーヒーショップでフラットホワイトを注文する。
たっぷり入ったミルクとエスプレッソが奇跡的な調和をしているフラットホワイト。
ニュージーランドの国民的ドリンクともいわれているそうだ。一口飲んでみて以来、私はこのコーヒーの虜になった。
そんな素晴らしい飲み物片手に、これからの予定を天気で決めようと思い立ち、スマホを開いた。そしてカップを落としそうになった。

テカポで星空を眺められそうな日が、残りの滞在期間の7日中、最初の3日間しかなかったのだ。
テカポの晴天率は80%と聞いていたから、油断していた。
しかもその最初の3日もほとんど雲り。「運が良ければ時折晴れ間が見られるでしょう」といったところ。

私は慌てて立ち上がった。現在地のウェリントンからテカポへ急に行くのは無理な話である。
まずはクック海峡を渡って経由地となるクライストチャーチを目指す。ここで1泊。そこからテカポへ行き、2泊して星空を鑑賞。日中にレンタカーを借りて、アオラキ・マウントクック国立公園を観光しよう。

私は宿泊先のゲストハウスに戻り、荷造りを始めた。
翌日は早朝発の船に乗る。相部屋の人たちの迷惑にならないよう、スムーズに出なければ。

はやる気持ちはあるが、焦ってもどうしようもない。ベッドでまぶたを閉じながら、クック海峡の景色を想像した。ピクトンからクライストチャーチへは絶景列車と名高いCoastal  Pacific Journeyだ。こうなったら、道中を楽しもうと思った。

明朝、バックパックを背負い、ウェリントンの船着場へと歩いて向かった。今回、私が乗る船はブルーブリッジ海峡フェリー。船内は乗客でいっぱいだった。

ちなみに、海峡を渡る船は2つしかない。なぜこちらを選んだかというと、それはもちろん安いから。

奥に見えるのがブルーブリッジフェリー

クック海峡は揺れが激しい箇所があるというが、特に感じない穏やかな船旅だった。

クック海峡


ピクトンへ付き、駅舎へ向かったところ、何やら受付でスタッフと乗客が揉めていた。
「本当に乗れないの?…」
「すみません…私たちは…を提案します…」
「ああ、それは無理…私たちは予定を変更できない…」
「……」
何の話だろう?そういえば鉄道会社からメールが来ていた、予約確定の連絡と思い読み飛ばしていたけれど、メールアプリを開くと何通も来ている。
確認するとマシントラブルにより欠便とのこと。そんなことって。

鉄道会社は、3つの選択肢を用意してくれていた。

1つ目は、影響を受けた旅程のキャンセル費用を全額立替。2つ目は、半額を返金してバスに振替、3つ目は無料で別日に変更、だ。

別日に変更して、絶景列車に乗りたい気持ちもあったが、テカポの天候には変えられない。私はとにかく星空を見たいのだ。
半額の振替バスより、バックパッカー御用達のInterCityバスの方が若干安かった。しかし、現在のニュージーランドは学生たちのホリデー期間。
こちらのバスの方が人が少なくて快適であろうことを考慮し、振替バスを選んだ。

結論からいうと、これはイマイチだった。確かに私は座席を1人で占有できたが、あまり良い気分にはなれなかった。なぜかというと、私がたまたま座った席には、前の客が残したゴミがあったのである。しかもクッキーなど食べ物類のゴミ。
おいおい、しっかりしてよ。
最初は気にしないようにしていたが、視界の端に常にあるのでどうにも気になる。バスは走り出してしまったし、他に空いている座席も見つからない。
意を決して、巡回しているスタッフを呼び止め、
「私のゴミではないので、片付けてもらえませんか?」と伝えた。
するとスタッフはすました顔で、「カイコウラで捨てられますよ」と言った。
思わず「カイコウラ?」と聞き返す。カイコウラとは1時間後に到着する次の停車地だ。伝わっていないのだろうか。
「It’s not mine.」
私のものではありません、と繰り返す。スタッフはため息をつき、
「私たちはゴミ箱を持っていない」と言って、手でぐしゃっとゴミを握りしめて取り、後ろの席にいたもう1人のスタッフに何やら言って、キーッと言い、と笑った。

いやいやいや、ちょっと待ってくれ。私だって、ここが公園なら文句は言わない。
しかしここは料金を払って乗っているバスだ。しかもこれはあなた方の運行会社のトラブルによる代替サービスではないか。
衛生観念が違うのか?いや、旅行中そんな風に感じたことはなかったし。
せっかくの旅が憂鬱な気持ちになってきた。一つ嫌なことがあると何だかそれに関わる全てのことが嫌なものに塗り替えられるようだ。

道中不快なことはあったが、バスは無事にクライストチャーチ駅についた。
ちなみに、しっかりと鉄道駅に降ろされたので、市街地からは遠く離れていた。距離を勘違いしていた私が悪いが、予約したホステルまでは遠かったので路線バスに乗ることに。こんなことなら市街地すぐ側に停車するInterCItyにすれば良かった、と後悔するも後の祭り。

善き羊飼いの教会(テカポ)

2日目は安心と安定のInter CItyのバスに乗り、テカポへと向かった。
天気はあいにくの曇り空。しかしテカポは綺麗だった。トルコブルーの湖、メルヘンな光景。

テカポ広域
山脈
テカポ湖歩道橋


星空は、翌日に期待することにした。

調べていると、テカポは想像以上に田舎で、付近にはレンタカー会社すらなかった。
ブログや本で、クライストチャーチからレンタカーでテカポへ向かうことを薦められた理由がここに来てようやくわかった。まさか足がないとは。

私は仕方なくマウントクックのフッカーバレーツアーを予約した。(マウントクックでの体験はこちら。)

アオラキ/マウントクック国立公園


夕暮れのテカポと半月


宿に戻ると夕暮れだった。

美しい景色を眺めていると、気に入っていたレターセットを思い出した。私が小学生の頃、メモ帳の交換が流行っていた。メモ帳の1枚だけを交換し合うという文化。当然、可愛いメモ帳は人気があったし、みんな自分だけの可愛いメモ帳を探し求めていた。
そんな意味のわからない時代に、近所の文房具屋さんで何かないかと探していた私が見つけたは空がデザインされたレターセットだった。レターセットなので、交換には使えない。しかし、その美しさに私は惹き込まれた。
薄いブルーの空と湖と、夕暮れのピンク色が混ざった空。
高い山に囲まれた、田んぼだけしかない小さな田舎町では見たことのない景色だった。
青い空と緑の草原、水色の海、月を反射した濃紺の海。
3ヶ月分のお小遣いでようやく買える金額だった。何度も何度も通って、まだ売れていないことを確かめた。他のレターセットに隠れるように、見えにくいところに置くこともしていたような。
とても人見知りだったから、店長のおばあちゃんに取り置きを頼むことなんて思い付きもしなかった。そんな私を追い払いもせず、放っておいてくれたおばあちゃんよ、ありがとう。
思えばあのレターセットが私の原点だったかもしれない。あの景色を見たくて。ここじゃないどこかに行きたくて。そんなことを思い出した空だった。

食事を済ませた私は湖のほとりから星空を見上げた。
空はしっかりと晴れてくれた。湖の端の宿なので、月を背にして鑑賞することができた。時刻は22時だった。
湖そばの散策路には小さな街灯が並んでいる。そのせいで星が少し見辛かったが、確かに美しかった。

テカポの星空

この日は半月だった。
深夜2時ごろに月が隠れるとマウントクックのガイドの人に言われたが、ドミトリーだったので、アラームをかける事ははばかられた。
途中で目が覚めたら見にいこうと思ったが、歩き回った後の体が器用に目覚めるはずもなく、朝を迎えた。

元気のある人は深夜に教会まで歩いて写真を撮ったり、あるいは山に登ったりするのだろう。

何年先かわからないが、南島にはまた来るつもりだし、その時に見よう。

その後訪れたクイーンズタウンもまた素晴らしかった。

クイーンズタウンの船小屋
クッキータイム・バー
紅葉と湖
手持ちのボディバッグでは不便だったので買い足したリュック
クイーンズタウン・ヒル
船とワカティプ湖
野生の羊(ヤギかも)
市街地のすぐそばにある公園から見える山
リマーカブルズ山脈。ずっと見ていられた


晴れたら奇跡と言われるミルフォードサウンドのツアーにも参加した。
曇り空など知らないような、突き抜けた晴天だった。思い返せば今回の旅は天気に恵まれていた。ありがたいことだ。天に感謝。

Eglinton Flats & Eglinton Vallley
Mirror Lake
The Chasm(崖はLOTRの撮影地)
The Chasmの滝
Monkey Creek
Monkey Creekそばの山。猿というかゴリラに見える。撮影していたのは私だけだったので特に名前の由来とは関係ないのかも
天井が見えるバスだったので迫力があってよかった
クルーズ。晴れているのに霧が濃い。
ミルフォードサウンド名物の滝


正直にいうとマウントクックでの吊り橋効果のせいで、後半の私の情緒はグラグラだ。

しかし浮かれた思考回路でもニュージーランドは美しかった。
私は名残惜しく彼の国を去った。

端正な街並み、豊かで雄大な自然、温かな人々(一部例外はあったが)、それと興味深いマオリ文化。
私が旅に求めていた全てがここにはあった。またいつか。

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