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北の大地を旅して②~モントリオール留学記

運転免許証事件

ハリファックスという街で起きた衝撃の事件について。

 旅行も後半の夜、せっかく街らしい街に来たからとみんなでバーへ。

 入るなりIDを確認される。
 基本的に年齢確認なのだが、けっこう厳しい。数ヶ月前に初めて友達と大学近くのバーに行ったとき、学生証では絶対に入れてくれなくて、「政府が発行したもの」の一点張り。泣く泣く運転免許証を家に取りに帰った。
 それ以降は免許証は持ち歩き、学生証とセットで見せるようにしている。というのも日本の免許証は英語が1ミリもないし生年月日が平成うんちゃらなので肝心の年確部分ができない。学生証の西暦にお世話になる。(まあほんとはパスポートを持ち歩けば確実なんだけれど、バーとかは軽装だし不安なので必ずしも持っていない。この日もお宿に保管していた。)

 今回もセットで通った・・・と思いきや席に落ち着いて注文が決まるかくらいの時にさっきのおねえさんが来た。「外国の免許証に不慣れなのでもう一度確認させてもらっていいですか?」いいっすよ。そこで友達が以前してくれた助言を思い出す。「もしあれだったらグーグル翻訳にかけてもらうといいかもしれないです~。」これで和暦が西暦に変換されるらしい。

 でもなんかものすごい帰ってこない。「私の免許証料理されとるんかな笑」とかふざけてたらマネージャーみたいな人が来た。
 「確認したけど受け付けられないです。」う~ん、まあ全部日本語やしそんなこともあるか?パスポート持ってきてないのが悪かったかあ。

 まって、この人なんか本持ってる。世界の免許証たちが掲載された辞典みたいなやつ。日本のページが開かれていて、日本の免許証が載っている。え、これを見てだめって言うことある?????

「え・・・これとこれ一緒ですよね?」
「確認したんですが、いくつか違う点があって」
「違う点・・・例えばどこですか?」さすがにここは食い下がるよ。
「例えばここの色」色???????

 よく見ると例に出ているそれはゴールド免許。学生の身で取れるものではない。頑張って説明します。

「あの、ここの色は運転経験によって変わるようになっているんです。事故無く一定年数運転できていればこの色になるんですが、私は学生で運転歴が浅いから青なんです。」

「あと、ここのマーク」なんか優良って書いて囲みがあるマークを指している。

「これも同じで、訳すといいドライバーみたいな意味なんですが、経験が必要なんです。」

「いや、でもそんなの私はあなたの言語しゃべらないからわからないんですけど」え???????????

「いや、ですからグーグル翻訳とかしてもらえばわかりますよ・・・」

「とにかく、うちでは受け付けられないです。」・・・・・・。

 ものすごく張り詰めた空気の中で私が何も言えなくなってしまったところでルームメイトが口を開いた。「君はその運転免許証でカナダで運転できるのにバーには入れない。馬鹿げすぎている。行こう。」他のみんなも「こんなところで飲めるか」みたいなかっこいい感じのことを言ってぞろぞろと出てくれる。

「あいつら暇すぎてなんかおもしろいことを探してたんだよ」
「さっさと店閉めて帰りたかったんやね」
「意味わからんすぎる。レイシスト?」
「私はこのメンバーの中で一番ルールに厳しい自信があるけど、これはさすがにおかしいよ。色が違う???」
「色がこの例と違います~ここの名前も違います~顔も違います~困ります~~~」

 店を出るなり各々の性格をもろ出しにしながら文句を噴出させるルームメイトたち。私はなんかちょっと耐えられなくてちょっと泣いてたんだけれど、あんまり見ないようにしてくれてたし、みんながこうやって怒ってくれたこと、せっかくのバーを私のせいで出ないといけなくなってしまい申し訳ない・・・とちらつく思いをかき消すように当たり前のように店を出てくれたこと、その全部が嬉しくて、もうちょっと泣いた。

 ものすごく不快な思い出であったと同時に、みんなに受け入れられてもらえているんだって一番思えた思い出だった。


つづきます。


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